東京都庭園美術館「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム」を観たのでございます。
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/220115-0410_ModeSurreal.html
(新館の展示室のみ写真撮影可)
20世紀最大の芸術運動シュルレアリスムは、モードの世界にも影響を与え続けておりまする。
そんなシュルレアリスムとモードの関係を、「奇想」をテーマに紹介する本展。
17世紀のファッションプレートからコンテンポラリーアートに至るまで、約190点の展示。
構成は以下の通り。主なお気に入りや気になった作品もリスト順に。
まずは旧朝香宮邸の本館からじゃ。
・サルヴァドール・ダリ《炎の女》
大広間でお出迎えしてくれる女性のブロンズ像。
腰痛になりそうなほど反り返った上体、胸元から左足首にかけて9つの抽斗。
【Chapter 1:有機物への偏愛】
・《ブローチ》19世紀
何と美しい玉虫色じゃ♪ とよく見たら、本物の玉虫じゃった!
玉虫を、糸の如く細~い銀(に見えたが10金らしい)の緻密な線細工で装飾し、目にはルビー。
・WBS(Ward Brothers)工房《ライチョウの足のブローチ》1953年
本物のライチョウの白い足。スコットランド男性の狩りの際のお守りだとか。
が、鳥好きのわたくしは身につける気にはなりませぬのぅ。
【Chapter 2:歴史にみる奇想のモード】
・《コルセット》1880年頃
ブルーのシルクサテンのコルセット。ウエストほっそ~。
余談じゃが、わたくしのウエストは18㎝じゃよ。(ビスうさ界ではけっこう太い)
お供のEは20代の頃、ウエスト53㎝じゃった。
・《纏足靴》19世紀末-20世紀初頭
1中国の纏足靴3点、いずれもたいそう小さな布靴で、綺麗な刺繍が施されておりまする。
纏足の理想の足サイズは、長さ10㎝、幅5センチだったそうで、まことに痛ましい風習じゃ。
・《紙製着せ替え人形》1839-41年
紙の着せ替え人形、数種類のドレスもゴージャス可愛い♪ とよく見たら、ツッコミ所も色々。
ドレスを着てない状態の恥じらいポーズの女性の髪が坊主チックだったり、カツラを含めた顔ごと取り替えるものもあったり(ホラーじゃ)
【Chapter 3:髪へと向かう、狂気の愛】
・小谷元彦《ダブル・エッジド・オヴ・ソウト(ドレス02)》1997年
遠目でシックなウールのドレスかと思いきや、何と人間の髪の毛を細かい三つ編みにして造ったドレスじゃった。
【Chapter 4:エルザ・スキャパレッリ】
・エルザ・スキャパレッリ《香水瓶「Shocking」》1937年
ガラスドームで覆われた香水瓶は、仮縫い用のトルソの形で、ちっちゃな巻き尺や花も付いており、ヘッドキャップは金色。お持ち帰りしたい・・・
・エルザ・スキャパレッリ《イヴニング・ケープ》1938年
黒いシルクベルベット地に、馬車で天を翔るアポロンの姿が金糸やシークインやビーズで刺繍され、黄金の眩しい光を放っておりまする。
【Chapter 5:鳥と帽子】
・《帽子飾り》1900年頃
ちっちゃなカラスのような、深いブルーブラックの鳥の剥製。
この時代、剥製の鳥が帽子飾りとしてよく使われたそうな(涙)
・《帽子》1950年代
シルクシフォンの小さな帽子に、ナメクジめいた物体や謎の物体がみっしり貼り付き、あまりの気味悪・・・いえ奇想ぶりに「ヒェ~!」と仰け反ったのじゃった。(ごめんなさい~・逃)
【Chapter 6:シュルレアリスムとモード】
・サルヴァドール・ダリ《象徴的機能をもつシュルレアリスム的オブジェ》1932-75年
書庫に1点だけ展示された、赤い靴のオブジェ。
●6-1 分断化された身体
・メレット・オッペンハイム《『パルケット』4月号 デラックス版 メレット・オッペンハイム:手袋》1985年
羊毛の青い手袋の甲に、ピンクの静脈が浮き上がっておりまする。
●6-2 裁縫とシュルレアリスム
・マン・レイ《贈り物》1921/72年
アイロンのかけ面に、14本の釘が縦1列に貼り付けられておる。
●6-3 物言わぬマネキンたち
・ジョルジョ・デ・キリコ《ヘクトールとアンドロマケー》1930年頃
そういえばキリコの描く人物は、まさにマネキンじゃ。
・インジフ・シュティルスキー《この頃の針の上で》1934-35年
初めて知った作家。小さな3点の写真作品、何やら惹かれたのでございます。
【Chapter 7:表と裏-発想は覆す】
・ルネ・マグリット《マザー・グース(『マグリットの落とし子たち』より)》1968年
森の木々と3人の男性の、騙し絵チックな作品。
・マルタン・マルジェラ《ネックレス(2006年秋冬)》2006年
2つのトルソーの首にかけられた2点のネックレスは、四角と楕円の金色の額縁!
わたくしもミニ額でやってみようかのぅ(こらこら)
【Chapter 8:和の奇想-帯留と花魁の装い】
本館1階の小食堂に、帯留と、参考展示として着物姿のマネキンも2体並び、和装好きゆえテンション上がるのじゃった。
帯留や着物は全て池田重子コレクション。
・《帯留》
大正期~昭和期の帯留が13点ほど並んでおりまする。
「蝙蝠」や「三味線」は使ってみたい。
「百足(むかで)」にはゾワゾワ。
「煮干し」のリアルさは、帯が煮干し臭くなりそうなほどじゃ。
ここから新館のGallery 1。新館は写真撮影OKじゃよ。
最初のコーナーは、Chapter 8の続きから。
錦絵8点のうち7点が、この後の章に登場する作家、舘鼻則孝のコレクション。
江戸東京博物館所蔵の1点は、会期中展示替えあり。
・渓斎英泉《浮世風俗美女競-双玉手千人枕》1823-24年
髪飾りの数が凄い~。
・歌川国貞《江戸新吉原八朔白無垢の図》1804-45年
こちらは2月13日までの展示。15日からは別の作品に替わりまする。
【Chapter 9:ハイブリッドとモード-インスピレーションの奇想】
・ユアサエボシ
カンヴァスにアクリルの絵画3点の展示。
左から《着衣のトルソーと八つの砲弾》《着衣のトルソーと二匹の魚》《着衣のトルソーと燃えている本》2021年
中央の《着衣のトルソーと二匹の魚》2021年
・舘鼻則孝
21点の展示で、個展の如き空間。
この作家は、人形作家の母上から「好きなものや欲しいものがあるなら自分で作りなされ。」と教えられて育ったお方じゃ。
《太陽へのオマージュ:ヘアピン 太陽》2016年
台に並んだ7足の靴は《ヒールレスシューズ》《ベビーヒールレスシューズ》2021年
《ヒールレスシューズ/アリスの青い靴》2018年
《ヒールレスシューズ/レディーポワント》2014年
ささ、奥の空間へまいるぞよ。
・永澤陽一
《ジョッパーズパンツ(恐れと狂気)》2008年
馬やシマウマの革が使われ、蹄も付いたパンツ3点。後ろ姿も載せまする。
・串野真也
16点の動物モチーフの靴(確かに靴じゃが殆ど履けぬ靴じゃ)は、動物の革や毛皮、鳥、昆虫など使われ、いずれもインパクトありあり。
この作家の作品たぶん初めて観たが、たいそうツボじゃ。
《Soukei》2020年
若冲チックで凄い。西陣織に鰐革に羽根。
《Hakuo》2016年
写真が不鮮明過ぎじゃが、こちらも若冲感ありありゆえ載せまする。
若冲大好きじゃからの。
《Aries》2007年
羊な靴には羊毛も使われておりまする。
《Chimera short boots BL》2009年
これも見づらい写真じゃが、やはりキメラは載せねばの。尻尾は狐の毛皮。
《Guardian deity Crocodile》2017年
こっこれも靴とな?
《sphinx of the forest》2017年
本物の玉虫の羽根がみっしりみっしり。凄い・・・
・ザハ・ハディド/ユナイテッドヌード《靴「NOVA Shoe」》2013年
本館「姫宮寝室・居間」に展示されておるゆえ、写真は撮れませぬ。
銀色に輝く靴の造形は、ザハ・ハディドの建築物のようじゃった。
最後はGallery2
真っ暗なGallery2は、丸ごとANOTHIER FARMのインスタレーション。
ANOTHER FARMは、串野真也と尾崎ヒロミ(スプツニ子!)のアートユニットじゃよ。
・ANOTHIER FARM《Modified Paradice》2018年
遺伝子組み換え蚕の発光体シルクを、西陣織でドレスに仕立て、ブラックライトを当てて展示。
入口に置いてある、黄色いレンズの紙製メガネをお借りして見ると、見え方が変わるのじゃ。
1枚目はメガネなし、2枚目はメガネありで見たところ。
たいそう興味深く観応えある企画展でありました。
特に旧朝香宮邸の本館は、作品と空間の相乗効果も素敵じゃった。
本館が写真撮影不可なのがまことに残念よのぅ。
会期は4月10日まで。日時指定制。
観終わってスイーツは、アトレ目黒2のトゥ・ザ・ハーブズへ。
シルクスイートの焼き芋ブリュレパフェをお願いいたしまする~。
季節限定のこのパフェ、前にも食べて美味しかったのじゃ。
焼き芋カスタードブリュレ、安納芋アイス、紫芋アイス、栗のムース、さつまいもムース、リンゴのコンポートなど。
酸味がなく、最後まできちんと甘いのが嬉しゅうござります。
おかわりを持ってまいれ~!
ちなみにここ、庭園美術館のチケット半券を注文時に提示すると、ワンドリンクサービスじゃよ。