武蔵野市立吉祥寺美術館「岡田紅陽 富士望景ー武蔵野から」を観たのでございます。
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/index.html
1895年(明治28)生まれの写真家・岡田紅陽は、富士山を「富士子」と呼び、ひたすら撮り続け、撮った写真は40万枚以上あるそうな。
荒天下の山行、プロペラ機での空撮など、危険をともなうものもあり、九死に一生を得るような経験もあったとか。
1961年に吉祥寺に移り住み、自宅の屋上に取付けた展望台から富士山を眺めていたそうでございます。
写真に疎いわたくし、お名前を見ただけではぴんと来なかったのじゃが、岡田作品を元にしたブツには毎日お世話になっておった。
そう、現行千円紙幣の裏面の“逆さ富士”の装画の原画は、岡田の《湖畔の春》なのじゃ。
様々な表情の富士山の写真と資料など、合わせて54点が、ロビーと企画展示室に展示。
お気に入りや気になった作品の一部を、リスト順に挙げておきまする。
【ロビー】
写真作品の他、岡田が手がけた観光絵葉書や、参考資料なども展示。
《山頂落日》1969年1月23日 武蔵野市内 発色現像方式印画
真っ赤な空に富士山の黒いシルエット、その山頂にぴったり乗った太陽。
《月光》1968年8月10日 三ツ峠山 ゼラチン・シルバー・プリント
明るい満月と斜めに走る雲、富士山の黒いシルエットの下に雲海と森、美しい写真よのぅ。
【企画展示室】
《武蔵野周縁》撮影年不詳 世田谷区 発色現像方式印画
プリントされた状態で寄贈された写真じゃが、裏焼きになっていた事が判明したそうで、正しい画像も横に展示。
《多摩川》1968年2月28日 撮影地不明 発色現像方式印画
実際の風景と水面に映った風景、濃い紫からピンク色のグラデーションがとても綺麗。
《吉祥寺駅南口より》1967年1月31日 武蔵野市内 発色現像方式印画
今の吉祥寺駅前からは想像もつかない風景にびっくり。1967年はこんなだったのじゃな。
《湖畔の春》1935年5月2日 本栖湖 ゼラチン・シルバー・プリント
最初にも書きましたが、現行千円紙幣の裏面“逆さ富士”の装画の原画。
《朝霧》1957年 愛鷹山 ゼラチン・シルバー・プリント
富士山の頭や手前の木々や余白のような空間が、まるで水墨画のようじゃ。
《麗容[神韻霊峰]》1943年3月 七面山 ゼラチン・シルバー・プリント
岡田作品は、ニューヨーク近代美術館も複数所蔵しており、この作品は繰り返し展示されている1点とか。
《雲表に聳ゆ》1942年10月19日 金峰山山頂 ゼラチン・シルバー・プリント
金峰山の山頂に登って撮った、雲海から頭を出した富士。
《ベールの下に》1955年(空撮) ゼラチン・シルバー・プリント
空撮じゃ。下1/3は富士山の陰で真っ黒。上に波(?)と空と太陽で、不思議な雰囲気。
《虹彩》1963年9月27日 七面山 発色現像方式印画
《虹彩》1963年9月27日 七面山 発色現像方式印画
2点並んだ写真は、一見全く同じようじゃが、よくよく観ると雲の形など微妙に違い、時間の経過を感じるのじゃった。
《夢の夜》1964年11月20日 沼津市・三津浜 発色現像方式印画
夜の海、手前にぼやけた船、奥に夜景、遠くに富士、なにやら夢のようじゃ。
平日の午前中ゆえか、様々な富士山をひとり占めで堪能できたぞよ。
会期は9月22日まで。
2つの記念室も観たのでございます。
浜口陽三記念室「静謐な世界」
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2020/02/post-180.html
メゾチントとカラーメゾチント、19点の展示。
銅版画制作過程の模型もあり。
萩原英雄記念室「線の表現-木版による凹版」
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2020/02/post-181.html
「お伽の国」シリーズから8点、「影法師」シリーズから5点、「イソップ絵噺」シリーズから10点の展示。
萩原が使用した制作道具もあり。
こちらの2つの会期も9月22日まで。
さて、吉祥寺に来たからには紀の国屋に寄って、あわ大福と相国最中(栗餡)を買わねばの。
ここのあわ大福、消費期限は1日間じゃが、もちもちした生地にちょっとお塩が効いてて美味しく、お気に入りなのじゃ。
一気に食べてしもうたが、どちらも美味しゅうござりました。
★おまけ話
美奈川護「はしたかの鈴 法師陰陽師異聞」、芦屋道満が主人公の時代ミステリじゃ。
不思議な少女・鷂の今後が気になるゆえ、はよ続編を出してたもれ~。