第41回大宅荘一ノンフィクション賞受賞作「逝かない身体」川口有美子著(医学書院刊)を読んだ。筋萎縮性側索硬化症の母親を12年間も看護した記録です。徐々に筋肉が衰え最後は眼球も動かなくなるが意識と聴力だけは、はっきりしていると言う難病です。夫の転勤に伴いロンドンに住む著者一家、耀ける生活があるのに、夫を残して子供を連れて帰国する。凄まじいまでの気力と強い意志を迫力のある文章でぐいぐいと引っ張り、あっと言う間に中程まで読み進んだ。わが身に置き換え考えてみると、娘一家の将来を閉ざしてまで看護させるか、また自分が娘の立場だったらどうするかなど考える事の多い前半であった。後半は自己満足の境地になりつつある著者、しかし人間の生と死、その哲学…「蘭の花を育てるように」介護すると言う思いに到達する、美しいようだが何と悲しい事なのか…。私はどんな病になろうが、人工呼吸器はつけない、胃ろうはしない、使える臓器は提供すると言う三つの事を改めて娘達に伝えたい。