Mrs.Uponwaterのブログ

日記です♪

葉室 麟著 おもかげ橋(幻冬舎)  蛍草(双葉社)

2013-04-21 23:05:45 | 日記

葉室 麟の”蜩の記”に出会ってから何冊か読んだが、いつも人間的に暖かな登場人物がおり、また日本の自然の描写が端正な筆で美しく描かれ読後はとても癒される。「おもかげ橋」は藩を追われた二人の男が初恋の武家の娘の用心棒を務める。剣は一流だが人付き合いが不器用な弥市は著者の作品に必ず登場する人間的に魅力のある人物。神田川にかかる橋、”姿見橋”とか”俤の橋”とか呼ばれ、伊勢物語の在原業平が川の水面に姿を映したことから名づけられたなど美しい伝え。しかし通してみると軽い恋愛小説、江戸時代の風情が補ってあまりある。

「蛍草」は理不尽な切腹をさせられた父親の無念を晴らそうとする武家の娘が、出会った個性豊かな人々に助けられ志を全うする。藩で一番の臆病者が刺客になり底辺に生きる人々に助けられる既刊の「川あかり」と似ていて”フルアップ”と言う感じだった。しかし”露草”は俳諧では”蛍草”と呼び万葉集には”月草”と記され「月草の仮なる命のある人をいかに知りてか後も逢わんと言う」(詠み人知らず)と言うはかなさを詠った美しい情景が描かれ、著者の自然に対する優しい思い…これが心に残った。”蜩の記”のように深く心に沁みる作品を又読みたい。