子供達が巣立ち、母親業を離れると女性は自分のためのお雛様を持ちたくなるらしい。たくさんの友達が言っています。私もしかり…。当地の人形作家の”みちこ人形”、素朴ですが品が良く愛らしい。気に入って毎年紹介しています。手前の大内人形はもう骨董に近く我が家に来て40年。夫の山口の出張土産です。伝統工芸品の大内塗りは男雛の冠と家紋大内菱に18金が使われているので40年たってもピカピカ。大事にしています。
森 於莵著「耄碌寸前」みすず書房発行を読んだ。ドッキとするようなタイトルです。森 鷗外の長男のエッセイ。於莵は父と同じように医学の道に進み解剖学者になった。しかしそのDNAは潜んでいて於莵にも極上のエッセイを書かせた事を知りました。「人生を茫漠たる一場の夢と観じて、それを模糊たる霞の中にぼかし去るには耄碌状態が一番よい」と言っていますが、耄碌状態で生活がうまくまわるならそれに越した事はない。鷗外ゆかりの”観潮楼始末記”など多くの文人が出入りし華やかなりし時代もあったがその終わりは余りにも惨ましく、於莵の魂の故郷であるにもかかわらず胸が痛むと言っています。みすず書房はこうした貴重なものを掘り起こし、出版している奇特な出版社でこれも”大人の本棚”シリーズの一冊です。
簡単参鶏湯、この寒い冬作ろうと思いながら今日になってしまった。やはり私独自の優しい味で美味しかった。1ℓの水に生姜のスライスとねぎのぶつ切り2,3本、骨付き鶏のぶつ切り7~8個をいれ、強火でアクを取り、弱火にして20分。もち米大匙3を洗って10分ぐらいおき、そのもち米とクコ、なつめを入れ弱火で20分。最後に塩、胡椒で味付けします。あれば高麗人参を入れると風味が出てより美味しい。今回はなつめと人参は手に入らなかったがゆり根があったので入れて見ました。スプーン(韓国のスッカラです)で崩せるほど軟らかい鶏肉、身体に良いスープです。お塩は韓国土産のもの。この塩もいいのですね。満足、満足。薬味にねぎの小口切りを乗せたが、優しい味のスープには合わない。
三代に渡り日本語を追求し続けた”金田一京介一家のトライ・エイジ”をテレビで見た。京助はアイヌ原語学研究や辞書編纂に関わった事で知られている。学者生活は苦しく、長男春彦には「何を勉強しなさい」「何になって欲しい」とか全く言わなかったそうです。春彦は父親の貧乏な生活を見ていたので、学者にはなりたくなかった。音楽に興味があったが才能がない事を知り、その後平安時代の京都のアクセントに出会い、研究の道へ入って行った。春彦の長男、真澄は国語が苦手で大学は理工学部、半導体を勉強した。しかしロシア語の面白さに引き込まれ、今は大学でロシア語を教えている。次男秀穂は心理学を学んだが数年は本を読んだり、パチンコの生活を送っていた。父春彦は何も言わなかった。秀穂は知識がどんどん蓄積されて行き、発信したくなった。そして海外へ。資金を得るため日本語を教えながら歩いた。今は大学で日本語の豊かさを教えている。DNAと言うものは人間の奥深くに潜んでいて、周囲が何も言わなくてもある時突然顔を出す、不思議なものです。子育て中の若い方達に何かを示唆している良い番組だと思う。写真は京介が貧しいながら薬やお米を買って助けた石川啄木と京介です。
熱海”モンブラン”はかつてはフランス料理のレストランでした。世界的に有名な報道写真家ロバート・キャパは1954年4月15日モデル女性と来店し、ビール、ベーコン・エッグを注文した。その時の一こまが左の写真です。食事後お化粧を直す女性と背後で仕事に打ち込むコック(オーナー新田道雄さん)のコントラストにキャパは引かれたとの事。その後キャパは激化するベトナム戦争の真っ只中に立ち、1954年5月25日ハノイ郊外で地雷に触れ死亡。ですから、この写真は日本での最後の遺作となったのです。文人墨客の多くが訪れた熱海、隣の写真は”谷崎潤一郎”です。彼もモンブランでよく食事をしていたそうです。谷崎潤一郎の秘書にならないかとモンブランとご親戚のOさんに声がかかったのは、こうした経緯があったのですね。貴重な文化が残る熱海、それが廃れていく様は見るに忍びません。
熱海、”モンブラン”のショソン・オ・ポム、アップルパイ、焼きたてを”お持ち帰り”しました。Oさんの88歳になる従姉妹、新田君恵さんが紅玉のあるこの時季だけは、娘さんたちに任せられないと焼いているそうです。目の前で売り切れ寸前。適度のこくのあるさくさくの皮、紅玉そのままの自然の味、りんごの酸っぱさが良くて病みつきになりそう。ご高齢でもこうした気概と拘りを持って、素敵だと思います。
製本教室のOさんがご親戚がやっているカフェでコーヒーをご馳走してくださった。熱海の糸川の近く、60年の歴史がある拘りのお店です。この時季はアップルパイが売り物なのです。フランス語ではアップルパイを”ショソン・オ・ポム”と言うのですね。初めて知りました。