ワーグナーの聖地バイロイトを訪ねて、早速「ワーグナーの妻コジマ」ジョージ・R・マレック著、中央公論社刊を読んだ。コジマは如何にしてワーグナーと強く結ばれていたか?深い愛は勿論、鋭い感受性、そして聞き上手だったと言うこと。若き国王ルードヴィヒからの援助も彼女の策謀が大きく働いたらしい。幼少時に培われた困難を克服する強靭な意志と屈折した処世術がワーグナー王国の女王にしたのです。バイロイトの彼等の家、バックヤードのお墓にロマンティックなものを感じて帰って来たが、コジマの阿諛追従を厭わぬ手練手管の外交術などを知り、”嫌”になった。でも彼女がいてこそ数々のオペラが今に残ったと思えば…。ワーグナーの埋葬の描写は「一段と寒さが厳しくなり、ワーグナーがずっと以前に設計しておいた庭園の所定場所に棺が運ばれるとき、雪がちらほら舞いはじめた。…暗闇が訪れたころ、…コジマの見ている前で、棺は墓の中に下ろされた」と書かれています。私たちが本年2月墓地を訪ねた夕暮れどき、全く同じ雰囲気であった。それは1883年2月の事だったのです。