朝3時起きしてお昼くらいまで働き、時どき掛け持ちで他のバイトもやりながら映画の学校へ通っていた。
学校で講義が終わると、講師ともども飲み屋へ繰り出し喧喧諤諤の映画談義で夜を明かし、そのままグダグダで市場で仕事をしてアパートへ帰り気を失うように寝た。
市場での出来事をヒントにシナリオを書き、それがシナリオの通信講座のコンテストで入賞して賞金10万円を貰ったが、その後は鳴かず飛ばずで映画とは遠ざかってしまった。
その時のシナリオで主人公にアドバイスする市場の兄ィは「梅宮辰夫」がモデルで、実際に「辰兄ィ」に似た「秀さん」という角刈りの人が職場にいて良くしてもらったのだが、じつは「前略おふくろ様」の板長役の「辰兄ィ」が役名「秀次」で演じていたのが頭にあったのだ。
そんなことは知る由もなく、市場の「秀さん」はある日したり顔でこう言った。
「今夜おまえテレビでいい映画やるぞ、観とけよ」
「えっ、なんすか?」
「だれがために鐘は鳴る、よ」
前略おふくろ様、「秀さん」の言わんとしたことはわかるわけで、しかし正しくは「誰が為に鐘は鳴る」なわけで、もちろん「アーネスト・ヘミングウェイ」の原作で「ゲイリー・クーパー」と「イングリッド・バーグマン」が主演の名作だから当然観ているわけで、しかしいなせな兄ィの「秀さん」にそんなことは指摘できるはずもなく・・・。
「梅宮辰夫」兄ィが逝ってしまった・・・、死因はオヤジの病名と同じ慢性腎不全なわけで・・・、前略おふくろ様、ショックです・・・。
「男のシンボル・・・」なんて歌えるのは「辰兄ィ」をおいて他にいないと思われ、「不良番長」よりも「仁義なき戦い」の「若杉」よりも「倉本聡」のシナリオの「村井秀次」がオヤジの中での一番の「 梅宮辰夫」なわけで・・・。
寡黙で義理人情に厚く、何事にも筋を通す男気溢れる兄ィがいたら、「サブちゃん」じゃなくたって惚れちまうよ。
市場でのバイト生活から数年経って、勤めたある会社の常務が「梅宮辰夫」の‘実弟だったのはまったくの偶然だったが、覚えめでたくご自宅にご招待され会食をした際に「辰兄ィ」のエピソードが聞けるとは思いもよらなかった。
昭和のスターがまたひとり逝ってしまった寂しさ、あと誰がいる、なんてことをつい考えてしまう年の瀬は切ない・・・。
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