「健さん」や「文太兄ぃ」の訃報を聞いて恐れることは、ひょっとして、残る「映画スタア」が次々に向こうから呼ばれて逝ってしまうのではないかということ。
真っ先に思い浮かんだのがマイトガイ「小林旭」。
それから「渡哲也」と「宍戸錠」。
ありゃゃ・・・、今度は東映ではなく日活のアクションスタアかよぉ
そうなってほしくはないが、こればかりは避けて通ることはできない神様のお約束。
そんなことを想いつつ昨年末、本屋で手に取ったのが「矢作俊彦」著の「フィルムノワール/黒色影片」だった。
カバー装画とタイトルロゴは「江口寿史」で、右の銀髪でコルトを持っているグラサンは「エースのジョー」ではないか
探偵「二村永爾」物の10年ぶりの新作、帯には「霧降る香港に、幻の映画フィルムと連続殺人事件の謎を追う」とあり、ご丁寧に「日活スコープ・白黒ポーションカラー・上映時間1001枚」なんて書かれている。
そしてさらに日活映画100年記念で「宍戸錠」が特別出演しているというのだから、そりゃ買うでしょう。
かつて「探偵」ごっこをした横浜の古の悪魔も、当然この本を手に入れていることとメールしたら、「重いし、高いから買ってない」などと宣った。
フン、やせ我慢は探偵の美徳なのに、お労しやおぢいちゃん。
大晦日までに読み終える予定だったのに、なんだかんだで年を越してしまったが、読み終えたのでちくっと感想を書いてみるのだ。
ひと言、映画と銃とウイスキーが好きでない者は読まなくて結構。
そう言うと身も蓋もないが、映画を知らない人が読んでもチンプンカンプンなセリフや伏線が満載で、事実このオヤジも何だったっけーと調べながら読み進んでいたものだから時間がかかったということもある。
しかし逆に言えば、映画やその背景がわかる人が読んだら、ニヤッとしながらハードボイルドな展開を楽しめるだろう。
映画愛、とくに日活アクション愛に満ち満ちた、遊び心たっぷりの探偵小説だ。
だけどちょっと「宍戸錠」格好良すぎで、持ち上げすぎって感じもあるんだけど、「矢作俊彦」と「宍戸錠」がタックを組んだのはこれが初めてではない。
30年前、にっかつ創立70周年記念のアンソロジー名場面映画「AGAIN アゲイン」で、構成・脚本・監督を手がけたのが「矢作俊彦」、主演は年老いた殺し屋の「宍戸錠」。
彼が狂言回しで、かつて共演したライバルを捜し求めて彷徨するという構成の粋な美学で全日活アクション映画を総括したアンソロジーだったが、もうけっこう忘れてしまったよぉ・・・
まあでもそんな下地があるから、本作で「二村永爾」とからむ「宍戸錠」もじつに生き生きとして殺し屋「エースのジョー」のままだ。
思わずメモしちゃった「宍戸錠」のセリフが、P280~281にある。
香港の片隅のバーで飲んでいる「錠」は、金を払って別れを告げようとする「二村永爾」に人差し指でチッチッチッとやってカウンターの端に積まれた札に目をやらせる。
「酔っぱらいはキャッシュ・オン・デリバリーに限る。
クレジットカードなんか使いだしたら酒場から一生出られなくなる。
監獄と同じだ」
シビレるぜ「エースのジョー」。
それから、最近の若者に言いたいセリフはこうだ。
「帽子ぐらい脱げよ。
天井の下でも被ってるのは、映画のギャングスターかスター気取りのテレビ芸人だけだぜ」
う~ん、言いたい。
このセリフに賛同できない人は、この小説を読まなくてよろしい。
以上。
最新の画像もっと見る
最近の「読んでナイト」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事