「虞美人草」、久しぶりに読んだー。やっぱり漱石は面白いなあ。
蔵書なので一度は読んだはずだが、はるか昔でもあり内容はほぼ覚えていなかった。
女主人公が美しく、毒があって、めんどくさい女だった気が……程度しか。
虞美人草はヒナゲシ。ヒナゲシという花に藤尾のイメージは重ならないが、
これはやはり「虞美人草」という字面と由来の助けを借りてでしょうね。
こういう話でしたか。記憶にあるよりシンプルなストーリーだったなあ。
なるほどなるほど。こういう風にめんどくさかったわけですね。
複雑な話だった気がしていたけれどもわりとシンプルですね。
当時大学生くらいで、そんなに理解力がなかったわけではない気がするのだが……
ただキャラクターの人間関係は、見方によるけど浅いかね。
この小説は(わりと)絢爛たる描写と哲学的な思索がメインで、そこを愉しむもんだと思う。
逆に言えばその部分が愉しめないと全然面白くないだろう。
藤尾はいい人では全然ないし、実生活では友達になりたくない人だが印象的だよね。
小野さんはぼんやりしている。藤尾との関係性でもぼんやりしているし、
恩師の娘との付き合い方はさらにぼんやりしている。
甲野も韜晦しながら哲学しているし、宗近はまあまあはっきりしているけど、
立ち位置的にはかがいかない。
継母は上手く立ち回ろうとして韜晦しているのでぼんやりしている。
でも途中で宗近が急にしっかりしますよね。おやおや、突然いいこと言い始めたよと思った。
それだけではなく、お父さんを上手く使って立ち回らせ、前半はぼんやりしていた妹も
突然ピントが合い始めて。はっきり意見を言い始める。
宗近家は最後になってみればみんな気持ちいい人々でしたよ。
こういう人たちなら付き合ってもいい。
甲野はいやだね。まだるっこしい。
小野さんも嫌だね。最終的には義理を選ぶとはいえ、最初は計算ずくで選ぶつもりでしょ。
しかも藤尾を選ぼうとしていた人が、目が覚めて恩師の娘を選んだところで、
そちらを幸せにしてあげられるのかは甚だ心もとない。
結局何年か経てば、今度は上司のお嬢さんとかに目が眩んで、
恩師の娘と結婚したことを後悔する人生を送りそうな気がする。
今回で小野の目は開かれたのでしょうか。ほんとに?
甲野家もそれ以上に前途多難だよねえ。こっちのうちは、とにかく糸さんの気働きが
どう出るかにかかっている。甲野さん自体は悠々としてそんなに現実にまで
食い込んでいかないでしょう。全てを糸さんが回すようになっちゃう。
義母があれでは苦労だろうなあ。
あまりめでたしめでたしにはならない結末。
「坑夫」の方は、暗いというか地味というか。書きぶりはほのかにユーモラスなんだけど。
坑夫の生活を書いてみようというその挑戦はいいが、
おそらく漱石からはほとんど真反対の世界のことでしょう。
そこを青書生というか、坊ちゃんに視点を与えてうまく乗り越えているが、
だからといってプロレタリア文学になるわけではないから。
坑の中の描写は詳細で驚いたくらいだから、実際に取材には行ったんだろう。
だが完全に頭脳労働者の漱石には、やはり遠い世界の出来事だったはずだ。
わたしにとっても知らない世界のことで、そこを読めたのはいいんだけれど、
群盲象を撫でるという傾向があるのは否めない。
まあ本人が範囲を広げようという意欲を買うべき作品といっていいんじゃないかな。
結局最後もどうなるってわけじゃないしね。
坑の中に入った後は、20ページくらいか?もう少しあるか?で終わってしまうし。
まあでも。漱石は好きですよ。
蔵書なので一度は読んだはずだが、はるか昔でもあり内容はほぼ覚えていなかった。
女主人公が美しく、毒があって、めんどくさい女だった気が……程度しか。
虞美人草はヒナゲシ。ヒナゲシという花に藤尾のイメージは重ならないが、
これはやはり「虞美人草」という字面と由来の助けを借りてでしょうね。
こういう話でしたか。記憶にあるよりシンプルなストーリーだったなあ。
なるほどなるほど。こういう風にめんどくさかったわけですね。
複雑な話だった気がしていたけれどもわりとシンプルですね。
当時大学生くらいで、そんなに理解力がなかったわけではない気がするのだが……
ただキャラクターの人間関係は、見方によるけど浅いかね。
この小説は(わりと)絢爛たる描写と哲学的な思索がメインで、そこを愉しむもんだと思う。
逆に言えばその部分が愉しめないと全然面白くないだろう。
藤尾はいい人では全然ないし、実生活では友達になりたくない人だが印象的だよね。
小野さんはぼんやりしている。藤尾との関係性でもぼんやりしているし、
恩師の娘との付き合い方はさらにぼんやりしている。
甲野も韜晦しながら哲学しているし、宗近はまあまあはっきりしているけど、
立ち位置的にはかがいかない。
継母は上手く立ち回ろうとして韜晦しているのでぼんやりしている。
でも途中で宗近が急にしっかりしますよね。おやおや、突然いいこと言い始めたよと思った。
それだけではなく、お父さんを上手く使って立ち回らせ、前半はぼんやりしていた妹も
突然ピントが合い始めて。はっきり意見を言い始める。
宗近家は最後になってみればみんな気持ちいい人々でしたよ。
こういう人たちなら付き合ってもいい。
甲野はいやだね。まだるっこしい。
小野さんも嫌だね。最終的には義理を選ぶとはいえ、最初は計算ずくで選ぶつもりでしょ。
しかも藤尾を選ぼうとしていた人が、目が覚めて恩師の娘を選んだところで、
そちらを幸せにしてあげられるのかは甚だ心もとない。
結局何年か経てば、今度は上司のお嬢さんとかに目が眩んで、
恩師の娘と結婚したことを後悔する人生を送りそうな気がする。
今回で小野の目は開かれたのでしょうか。ほんとに?
甲野家もそれ以上に前途多難だよねえ。こっちのうちは、とにかく糸さんの気働きが
どう出るかにかかっている。甲野さん自体は悠々としてそんなに現実にまで
食い込んでいかないでしょう。全てを糸さんが回すようになっちゃう。
義母があれでは苦労だろうなあ。
あまりめでたしめでたしにはならない結末。
「坑夫」の方は、暗いというか地味というか。書きぶりはほのかにユーモラスなんだけど。
坑夫の生活を書いてみようというその挑戦はいいが、
おそらく漱石からはほとんど真反対の世界のことでしょう。
そこを青書生というか、坊ちゃんに視点を与えてうまく乗り越えているが、
だからといってプロレタリア文学になるわけではないから。
坑の中の描写は詳細で驚いたくらいだから、実際に取材には行ったんだろう。
だが完全に頭脳労働者の漱石には、やはり遠い世界の出来事だったはずだ。
わたしにとっても知らない世界のことで、そこを読めたのはいいんだけれど、
群盲象を撫でるという傾向があるのは否めない。
まあ本人が範囲を広げようという意欲を買うべき作品といっていいんじゃないかな。
結局最後もどうなるってわけじゃないしね。
坑の中に入った後は、20ページくらいか?もう少しあるか?で終わってしまうし。
まあでも。漱石は好きですよ。