プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 中野美代子「カスティリオーネの庭」

2023年08月22日 | ◇読んだ本の感想。
前に中野美代子を何冊か読んだと思うから、これも多分2度目。再読は珍しいですよ。
でも前のことはほとんど忘れているので、今回も楽しく読みました。

カスティリオーネは乾隆帝の世に活動した西洋画家。
中国(当時は清)に宣教師として赴任して、長く滞在し、中国で客死した人。
この頃について書いた本を読んでるとたまに図版として作品が出て来る。

中野美代子は中国歴史専門の人。
歴史自体というよりはフィクションから読み解く歴史中国なのか。
中国文学といってもいいんだろうけど、文学文学もしてないんだよなー。

しかし意外なことに本作はなんと小説です。図書分類だと913。
おやおや?と思ったが、「あり得た歴史」を書くための小説でした。
なので人物造型や心理描写などはかなりあっさりしているが、
わたしは乾隆帝のことを読みたいと思っていたので、時代背景を書きこんでくれて、
しかも人となりを書いてくれるこの作品は大変ありがたかった。

学者の小説としてはなかなかだと思いますー。最後の方は多少ミステリ風だし。
しかしミステリ的に結末を明示してくれるかというと、くれません。
結末はちょっとドタバタしちゃったかな。これは完全に創作した人物だと思うけど、
そのせいかちょっと無理を感じた。
まあ小説とはいってもね。そこは求めるべきところではないと思われる。

ただ皇三子については少し物足りない。ネットで調べた程度だが史実は別のようだから、わざわざ創作するのならもう少し上手いこと話をまとめて欲しかった。

専門分野で、しかも資料が多く、役者も揃ったところで書けたものだと思うので、
中野美代子がまた小説を書くことがあるかというと可能性は低いだろうと思う。
面白く読みました。めでたい。

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