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本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 木々康子「林忠正 浮世絵を越えて日本美術のすべてを」

2025年02月28日 | ◇読んだ本の感想。
この著者の作品は2冊目。1冊目もなかなか面白かった。
今回のこれはさらにちゃんとした評伝。

実はこの人は、旦那さんのお祖父さんが林忠正らしいのね。
なので、家族内で言い伝えられた話もあるし、残した絵画も(わずかながら)あるらしい。
とはいえ、「我が家の話」ではなくしっかり調べられている。
大学に属する学者だった経歴はないようだが、冷静な書きぶりで最初は学者か?と思っていた。

この本は林忠正の出自(加賀藩支藩の高岡……いや、支藩じゃないのか?
まあ加賀藩に追従する高岡という地域で、蘭方外科医の息子として生まれた)から詳述する。
そこから書いているので、林忠正が自分の利益も大事にしたけれども、
広い視野を持って行動した人物であることが納得できるようになっている。
1冊目を読んだ時は、もう少し身内びいきが入ってもいいくらいだなあと思ったが、
2冊目は多少身内感が増していた。

この人が林忠正の身内として一番いいたいことは、多分以下のこと。
「浮世絵を山のように売りさばいて貴重な美術品を流出させた売国奴」という声に対して、
彼は浮世絵にはそこまでの価値を感じていなかったこと、
浮世絵が怒涛のように海外流出した際には、まだあまり浮世絵には手を染めてなかったこと、
願っていたのは(商売と並行してではあっても)
日本美術の最良の部分を世界に紹介したいということ。

商売だけを考えて節操なく売りさばいただけではないし、
良い工芸品も多く扱ったが、良い物は人を見て売っていたそうだ。
そして日本美術の最上のものは手元に残し、日本へ持って帰って来たもの、
あるいはヨーロッパで非常に深く付き合った人に譲ったものが多いと。

こう書くと身内びいきと感じるかもしれないが、実際に読むと抑えた筆致で書いてあるので
その部分は気にならなかったです。
……だが、この冷静な書きぶりを全面的に信頼したくなるので、その辺は自重せねばと思う。

ここのところ、本を読んでも「この本に書いてあることは妥当なのか?」と
考えすぎてしまって……
昔からそう思いながら読書をしてきたつもりだけれど、特に近年、
悪意をもって嘘を書く人もいるから、ついつい疑心暗鬼になってしまう。
こういう読書は疲れますよ。もっと気軽に読めてた時代に戻りたい。


それはともかく、林忠正について3、4冊読んだらいいだろうと思っていたが、
興味深い人なので、図書館にある本はツブしてみる。といっても6、7冊だけど。
木々康子以外の書き手がどう書いているのかも見たいしね。

林忠正の同時代の日本美術愛好家についても広く書いているので面白い。
ゴンクール兄弟とか、ピングとか、そこら辺の人の話も読んでみたくなる。
……しかし「ゴンクール」を図書館のサイトで検索すると、
「コンクール」も拾われてしまって、検索結果が何百冊にもなってしまうんですが、
これはどうしたらいいですか。



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