プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ テオフィル・ゴーチエ「魔眼」

2025年02月22日 | ◇読んだ本の感想。
ゴーティエというかゴーチエというかが悩みどころ。

折にふれて目にする名前ながら、全然作品を読んだことがなかったので
今回重い腰をあげて読んでみた。
どんなに小難しい話を読まされるんだろうと戦々恐々としていたが、
喜んでください!とても平易なお話でした。

いや、こんなに平易な語り口でいいの?と思ったくらい。
文庫本1冊に「魔眼」が多分中編で半分くらい、「金の鎖またはもやいの恋人」と
「クレオパトラの一夜」が短編。

「魔眼」はとても素直な小説。舞台設定は19世紀くらいですか。
本を返してしまったので、記憶はとてもあやふや。

スペインに来ているフランス人の男とイギリス人の父と娘。
男と娘は婚約中。
が、迷信深い土地柄で、男がなぜか「魔眼」認定されてしまう。
魔眼とは、本人の意思に関係なく、見られた人を不幸にしてしまう能力。

男は自分でもそうと信じ、病弱な恋人を死に追いやってしまうのではないかと恐れ、
最終的に恋敵のスペイン貴族を決闘で殺した上に、自分で自分の目を抉り出し、
しかし恋人は死んでしまうという救いのない物語。

もっと漢語の多い、きらびやかな、読むのに時間がかかる文章だろうと思っていたが、
語りの系譜と感じたくらい平仮名が多めの文体。
これは本人の文章からしてそうなのかね?翻訳のテガラなのかね?
とはいえ、凝った文章を平易に訳すのは違うだろうしなあ……。不実な美人になってしまう。

話としても正直、安易とも感じたほどおとぎ話的だった。
小説として、なぜ魔眼認定されたのかとか、男がなんで自分を魔眼だと信じ込んだのか、
納得できないところも少々あった。
まあ小難しい話を読むよりは楽だったのでいいんですけども。

2番目の「金の鎖~」は古代ギリシアの遊女の話。これは元ネタがあるんだろうね。
高級遊女がいろいろあって恋人をもう一人の遊女と共有し、
最終的には仲良く3人で暮らすという、これもまことにファンタジー。

3番目はクレオパトラが気まぐれに美少年を愛する話。……だったか?
うん。まあ何しろ短編だから印象に残らない。記憶力の問題だが。

結論として、読みやすかったのはいいんだけど、正直言って毒にも薬にもならぬというか。
これは本人が意識してお伽話として書いたのかなあ。
そうであればまた見方が変わるが、こういうのばっかり書いているのだったら、
なんか今までのゴーチエの高名が……。別に悪い作品ではないけれども、
良くも悪くも普通なのよ。

評論系で小難しいことを書いている(のではないかとわたしは決めつけている)のであれば、
もう少し高踏的な作品でもいいんだけどね。
もう2、3冊読んでみる。

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