プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」

2016年03月04日 | ◇読んだ本の感想。
いやはや、もうエライことで……。


それはもちろん名前は知っていた。しかしあまり知識がなかったので、全く無警戒で読み始めた。
……なんじゃいな、コレは。いかにも本格推理っぽいタイトルですが、これミステリと言えませんやん。

それはそれは読むのが面倒くさく。
普通に読むつもりでいたから、最初の方は字面がグルグル回る感じだったね。
そしたら日本探偵小説史上の三大奇書の一つだそうなんですね。さもありなん。

しばらく読んで、ちょっと気合いを入れないと読めないなと感じて、最初からまた読んだ。
これから読もうと思っている人に言いたいが、普通のミステリを読もうと思ってはいかん。
予想の3倍から5倍くらいめんどくさいものを読むことを覚悟するように。


まあとにかくそれはそれは衒学的……
というか、衒学的というのもそうなんだけど、センテンスからセンテンスへの繋がりってほぼ無いよね?
はっきり言って論理がない。Aという内容を受けてB、Bという内容を受けてC、と話が展開していくのが
普通の小説というものであるならば、この話はA→イ→θ→Д→K→は→(以下略)と、延々とランダムに
センテンスが並べられていくだけで、ストーリーの展開というものはほぼナイと言っていい。

最後はようやく、それでも何とかもしかしたらミステリになるかもしれない、という話の流れには
かろうじて行くんだけれども。かろうじて。でも犯人が分かっても爽快感は全くないですからね。
下手するとそれまで散々どんでんを(衒学的に)返されて来た分、
真犯人さえ、あーそうなのかーというよりももっと薄く、下手すると真犯人なんて
書かれてましたっけ?程度の薄ーい印象。

あるのは絢爛豪華たる字面の旨味だね。そこもまあ小説の面白みといっていいだろうから、
好きな人は好きでいいんじゃないか。――と、つい他人事な言い方になるが、
はっきり言って面白い小説かというと全くそんなことはナイ。

ただし、奇書を「ああ、本当に奇書だなあ」と実感して楽しんだということは言えるので、
クダラナイ本を文句を言いたいがために読み通したという虚しさとは無縁。
時々笑っちゃうくらいの晦渋さも、どんな顔をして書いたんだと思えばユーモラス。

とにかく奇書。奇書の世界をお楽しみ下さい。



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解説の澁澤龍彦が、この小説のあらすじを書いていたのにはオドロいた。
これ、あらすじが書ける小説ですか!?というより、あらすじがあらすじとして機能する小説ですか?
澁澤龍彦がニ、三の単語を調べて何も出てこないということは、この小説の中に出てくる単語や
固有名詞で、創作物は相当に多いんだろうなあ。
わたしがわかったのは、ケルト・ルネッサンス様式の建築なんて嘘ばっかり!というくらいだが。




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