プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< 鬼滅の刃 刀鍛冶の里編 >

2023年07月13日 | ドラマ。
面白く見ました。

特に最初の無限城の部分は表現に感心した。ここは力入っていた。
わたしはアニメしか見てないので設定とかキャラクターとかよくわからないが、
鬼たちが勢ぞろいしていて迫力があったね。
顔がわかるのは無限列車篇のあの人だけ。あの人、鬼にしては気持ちのいい人だね。

……が、全体的な話運びはうっすらと納得出来なかったなあ。

まあ「刀鍛冶の里篇」は若干中休みの傾向もあったと思うの。
しかしそれにしても説明台詞が多すぎて……。
炭治郎の独白がほぼ全て説明で、いや、そんなに説明ばかりでは困ると思うのよね。


今どきのアニメだなあ、と思う。「鬼滅の刃」だけの話じゃないけれども。
今のアニメの大いなる弱点は、説明しなきゃならない設定が多すぎること。
マンガやアニメが大量に作られ――過剰供給された結果、
基本的なアイディアだけでは違いが出せないものだから、
話を無限に細かくすることで独自性を出さざるを得なくなり、
その設定を説明するだけで話が終わってしまう。

しかし設定=ストーリーではない。
これはそういう作品ばかりを見て来た世代にはなかなかわかりづらいものかと思うが、
(そしておそらく作り手たちの年代もストーリーと設定を混同してしまっている
世代になりつつあると思うが)
設定が土台にあり、そこで繰り広げられる「物語」をこそ描くべきだと思うの。

たとえば今回の「鬼滅の刃」でいえば刀鍛冶の里は場所が隠されていて、
そこに行くためには運ばれる人が目隠しをされ(炭治郎の場合は鼻栓もされ)、
何人もの隠がリレー方式で送っていく……
これは設定だよね。面白いし、こういうことを描いて楽しいのはよくわかる。

でもここに尺を取るのなら、病後の炭治郎をコメディパートでざーっと
流すんじゃなく何か出来事が欲しいし、伊之助や他の人に対しての
炭治郎の感情の動きや周りの人との関わりを描いて欲しいの。

喜怒哀楽は記号、あるいはスイッチに近いものになっていて、
受け手が「ここは喜ですよ」「ここは怒ですよ」という作り手の信号さえ受け取れれば
それで納得してしまう。
ストーリーというのは出来事を積み重ねて、それを見た受け手に醸成される感情、
もしくは思考であって欲しいのだが、「喜」「怒」のカードを見せただけで
作中人物の感情を表現だと思うシンプルさ。

「情報」を盛り込まなければ済まない構造になっているんだろうね。
情報量の勝負になっているというか。忙しいんだよ。

そのわりには戦いの場面は延々と続く。
まあ「鬼滅の刃」の売りは戦闘シーンということはあるだろうが、
尺をここまで戦闘シーンに割くのなら、戦闘以前の甘露寺さんを描くべきではと思うし、
もっと無一郎と炭治郎の関わり、鋼塚さんや小鉄を描くべきだった。

「鬼滅の刃」の感情部分はほぼ回想部分で行われているんだよね。
それはそれでありだが、現在時点での関係性を描く尺はもっと取るべきだったと思う。


※※※※※※※※※※※※


とはいえ面白さはあって、2、3話続けて見たこともあった。
面白くなければ続けて見る気にはなりませんからね。

とにかくちっちゃい禰豆子がかわいいのよ!
ちっちゃい禰豆子をもっと見たかった!
甘露寺さんに甘えてるところなんかもう。子猫の動画を見ているようだ。
……なので、禰豆子が甘露寺さんに懐くエピソードもやってくれればいいと思ったよ。
そういうところが足りない。

ところで禰豆子が日光を浴びても消えないのはどうして?
しかも途中まで崩れかけていたのにね。あの女医さんがあとからとってつけたように
「日光を克服するでしょう」といっただけで解決したと思うなよ!
次の「柱稽古編」でちゃんと説明してくれるんだろうな?

村瀬歩が出て来たのはびっくりしたー。
小鉄ももっとエピソードを盛って欲しかったよね。ほぼ設定だけで終わってしまって。
しかも後半は戦闘ロボットの話なんか覚えてないくらい関係ないもんね。
薄かったなー。もっとエピソードが欲しかった。

鋼塚さんはやっぱりイケメンだったか……。
鋼塚さんもエピソード足りないよねー。炭治郎と刀をめぐっていろいろと
エピソードがあるべきではないのか。刀鍛冶の里っていうから、そこらへんも
たっぷり描くだろうと思ったのに全然じゃん。

そしてそれだけ里の位置を隠していたというのに、鬼がさくっと乗り込んでくるのが
納得出来ないのよねー。
突然現れてパニックになる里、という状況は魅力的だが、
そんなにさくっと乗り込んで来られるなら、今まで鬼たちに長年バレてないのは
どうしてだといいたくなる。
下手に「厳重に隠していた」設定を描くから、矛盾が生じる。

まあ無一郎はそれなりの分量を描けていたから何とか……
でも回想シーンはいいとして、現在時点の描き方が足りないと思った。
こういうのはみんなマンガを読んでるの前提なのかなー。
読んでないわたしは無一郎がどんな人ってのが納得出来ないんだよ。
前に御前の屋敷で柱がそれぞれ出てたけど、そのくらいしか情報がない。

「どういう人か」と思わせようとしているのは理解できる。
が、十分描けているとはいえない。そこが記号というゆえん。
理解出来たからいいというもんではないんだよ。

甘露寺さんも初めの方でお風呂シーンがあったこと以外は特筆すべきこともなく……
いつになったら出て来るんだろうと思ったら、10話じゃなかったですか?9話?
いや、全然出て来ない。

最初と最後は長尺だったとはいえ、11話で前シリーズの繋ぎを描いて、
刀鍛冶の里の概要を描いて、戦闘訓練ロボットの話をぶっこんで、
鬼が攻めて来て、無一郎の戦闘、回想、甘露寺さんの(ちょっとした)戦闘と回想、
クライマックスとエンディング……

正味13話としたら、戦闘ロボットの話が余計だったな。
あとしょうがないけど、泣き虫鬼のマトリョーシカぶりがさすがにやりすぎ……
泣き虫鬼→喜怒哀楽鬼→山寺鬼→小鬼→巨大化鬼……ですか?
小鬼にバージョンがいくつかあった気がするな。

プロローグ→刀鍛冶の里の概要→無一郎の概要→甘露寺さんの概要→
鋼塚さんとのエピソード前編後編→鬼登場・戦闘開始→無一郎戦闘前編後編
→甘露寺さん戦闘前編後編→クライマックスの戦闘→エピローグ
で13話。このくらいがなだらかだし、話としても多少は深掘れたろうし、
適当だったんじゃないだろうか。

まあ原作があるなら仕方ないけど。
盛り込みすぎ。それはアニメ化の制約のゆえだったのだろうか。

あっ!すっかり忘れていたけど、不死川ゲンヤパートもありましたね?
お兄さんの方もほとんど知らないせいで、ゲンヤの回想が効果的じゃないと感じたが
どうだろう。ゲンヤも試験を同時に受けたってことだけを描かれても、
あんまりピンと来ないよね。突然鬼化していてわけがわからなかった。
鬼を食らうなんて、もうその時点で人間じゃないだろう……。

あー、あと、山寺宏一が少年の声を出してたねえ。
七色の声のおじさんだからどんな役をやっても驚くことはないかもしれないが、
ちゃんと少年に聞こえたのがすごい。
しかしキャスティングは一体どんな意図を持っていたのだろうか。

山寺宏一といえば銭形警部を引き継ぎましたが、ユルさがなくて不満。
もっとダルッとした抜けた部分があるべきだと思うのよ、銭形は。
昨今の銭形は四角四面の真面目でかっこいい造型ばかりで不満だわー。
まあそういう風に造型している製作側の責かもしれんが。


次の「柱稽古編」も楽しみにしてるよー。
でも題材的にこれも繋のシリーズになりそうかな。
今回のように詰め込み過ぎて炭治郎が説明台詞ばかりを延々と喋るはめに
ならないことを祈る。

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