プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 清水義範「夫婦で行くイスラムの国々」

2023年09月28日 | ◇読んだ本の感想。
正直にいって、読むのが苦痛なエッセイだった。

根本的に設定に無理がある。
一般の団体ツアーに参加した旅行記を書いて、それを面白い読み物にするには
高い技量が必要なのだ。そしてこの人にその技量はない。

行ったことのある人はご承知だろうが、一般の団体ツアーの目指すところは
「広く、浅く」であって、日程の間にいかに目的地を詰め込めるかにかかっている。
目的地を多くしてコスパ感を高めて売るのだから、1ヶ所あたりの時間は限りなく短い。

その短い時間で見るべきものを見て、考え、感じ、
後日それを出版レベルにまで文章化するなんて……不可能だ。

最初はまだ良かった。本人が初めて海外旅行をした体験記だから。
それなりに「体験」はある。
次もまだ良かった。次のトルコは日本航空の機内誌の取材で、
ちゃんとガイドもついてよく見ているから、独自の体験もあってまあ普通の旅行記。

でもその後からの、二度目のトルコ以降の内容はねえ……
内容が薄すぎるんだよ。どんどん薄くなっていく。ガイド付きツアーで回っているから
独自の体験もなくなり、ガイドブックを読めば書いてある程度の薄い歴史説明、
「良かった」「美しかった」程度の感想。薄い。

その状態にも関わらず、旅行に行く前に予習はまったくしないと言ってるのも呆れる。
たしかに予習をしないで旅行をするという選択肢もある。
わたしもそれに憧れないことはない。出会いを大切にしたい、先入観なしに
出会ってどう感じるのかを知りたいと思わないこともない。

だが予備知識が現地の体験をわずかでも深くするのも事実なのだ。
予備知識という助っ人に頼らず旅をするのであれば、
鋭敏な感受性と洞察力と恵まれた才気と大量の雑学が必要。
「予習をせずに行く」と公言してこの程度の内容しか書けないことを
文筆家として反省すべきではないのか。

後半へ行くに従って、どんどんツアー日程表を読んでる気分になったものね。
1ヶ所あたり3行くらいのありきたりの説明。それがだらだらと際限なく続く。
苦行。

そして旅行後「後日調べると~」という部分がちょくちょく出て来るのだが、
その調べた内容というのがまた薄くて……ガイドブックを1冊読んだことを
「調べた」といっているんじゃないだろうな?と言いたくなる。



それに加えて、この人の文章は雑だ。忌憚なくいえば下手。
読むのが苦痛で何度も読むのを中断した。
ふと気づくと「なんでこんな文章を書くんだろう」という疑問に囚われて、
ページをめくる手が止まっている。
読み終わるのに想定の倍くらいかかった。世の中には内容がなくても
文章の芸で読ませる作品もあるが、これにはそれもない。



この人はもう二度と読むことはないですね。
幸せになってください。わたしからは遠いところで。

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