プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ キアラン・カーソン「シャムロック・ティー」

2019年07月15日 | ◇読んだ本の感想。
あ、この人はやっぱり好きだなと思った。冒頭部分を読んだ段階で。

こないだ「琥珀捕り」を読んだんだよね。それがなかなか良かった。
まあ文学的ではない読み手が、現代文学を面白がれる程度においては、という意味ですが。
それがたまたまなのかどうなのか、我ながらちょっと楽しみに
キアラン・カーソンの2冊目である「シャムロック・ティー」を読んでみたら
やっぱり好きだったので嬉しかった。

あ、でも前半が好きだった。後半「青の本」「黄色の本」「緑の本」と出てくる辺りからは
ちょっとだれて飛ばし読み。前半の、内容や登場人物が繋がっているのかどうなのか、
というあたりのぽつりぽつりといった雰囲気が好きだった。
後半になると前半にうっすらと蒔いてた伏線がちゃんと成長してきちゃうから、
若干幻想性が薄れるんだよね。わけわからずに読んでいた前半が良かった。

小道具も好き。今回は「アルノルフィーニ夫妻の肖像」。そこに焦点を当てる文学作品は
いくつもあっただろうが、高い幻想性と現実の蘊蓄の交錯が面白い。

こういう3、4ページの短い挿話の集成だと読みやすくてありがたいですよ。
現代文学は基本的に苦手だからね。特に翻訳物は時間がかかるから。
わたしは最近、年のせいか根気がなくなり、途中で読むのを止める海外現代文学が
すごく多くなったけど、この人の作品は残りも読む。といっても残り4作。
これが10作もあったら読まなくなるかもしれない。

そしたら、この本の解説者は桜庭一樹でした。ついこないだ「私の男」を読んで
けちょんけちょんに貶した直後なんで、いたずらを見つかった様な気分になった。
書物の好みが合う人が、わたしの嫌いな作品を書くこの皮肉。


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