これまた大作ですねえ、池上永一。
タイトルからして、ラノベ風近未来終末戦争みたいな話だと思っていた。
前は書いてましたからね、そういう話も。
が、読んでみると王朝琉球の話。舞に命を賭ける踊り手たちの話。
蘇了泉と雲胡が2人の主役。
蘇了泉は賤民の出で、あらゆる手段を使ってのし上がる。天性の踊り手。
雲胡(くもこ。なぜこの名前……)は貧乏士族出身。努力の天才。
この2人が技を尽くし、命を尽くして競い合う。……その競い方は決して美しくなく、
場合によってはかなりエグイんだけど、池上の作風はそういうドタバタも込み。
わたしは彼らは実在の人物かと思ったが、雲胡のお師匠さんである
玉城朝薫は実在したけれども(この人も大概ドタバタなんだよなあ……)、
了泉と雲胡はいないようだ。
他に尚敬王とか宰相の蔡温とか、歴史上の人物を織り交ぜた上での時代物。
江戸への使節はともかく、冊封使の方まで書くとは思わなかった。
まあ冊封使は行った方ではなく来た方だから、そこまで下調べの量は
なかったかもしれないけど。
冊封副使の徐葆光(じょ ほこう)に心惹かれる。
彼が書いたという琉球滞在記「中山伝信録」を読んでみたい。
……が、図書館にないようだ。残念。
池上永一は琉舞の経験があるのかなあ。
踊り手の心を深く掘り下げて書いていたよね。
自分が経験していないことを真実のように書くのは小説家の任だが、
心から絞り出したような描写が多く、(若干しつこかったけれども)
よくここまで書けるなと感心した。かなりの分量でしたしね。
文字通りの文化立国だもんなあ、琉球は。
「守礼之門」あの真っ赤な姿。日本の城郭建築で門といえば防御を主たる機能と
するものなのに、あの門はなんと軽やかなのか。
結界を作ることで国を守ろうとする。無謀な企て。
その無謀を何百年も続けて、曲がりなりにも国を存続させた。
池上永一の話は琉球の雑学を増やしてくれるところもありがたいですよ。
琉球側から見た琉球使節の立場。役割。江戸へと上る使節の日々。
他の誰が書いてくれるか。……まあ専門の学者は書いているかもしれないけど、
わたしは読んでないから、こういうことを教えてくれる池上永一には感謝しかない。
物語の後半は羽目を外しすぎて、了泉がかなり非道な人になってしまうのがヤだし、
さすがにあそこまでやったら復帰も無理だろうと思うのだが……
あそこまではやらせないで欲しかったな。池上の可笑しみでだいぶ緩和されるが、
人でなしを応援する気にはならん。
とはいえ、すごく面白かったよ。力作。
こういう、力と魂がこもっている作品を読ませてもらえるとありがたいねえ。
沖縄の人である池上永一じゃないと書けない、紅型のような極彩色の世界。
今後もがんばって書いてくれ。たくさん。
トロイメライの続編もぜひお願いしますね。
タイトルからして、ラノベ風近未来終末戦争みたいな話だと思っていた。
前は書いてましたからね、そういう話も。
が、読んでみると王朝琉球の話。舞に命を賭ける踊り手たちの話。
蘇了泉と雲胡が2人の主役。
蘇了泉は賤民の出で、あらゆる手段を使ってのし上がる。天性の踊り手。
雲胡(くもこ。なぜこの名前……)は貧乏士族出身。努力の天才。
この2人が技を尽くし、命を尽くして競い合う。……その競い方は決して美しくなく、
場合によってはかなりエグイんだけど、池上の作風はそういうドタバタも込み。
わたしは彼らは実在の人物かと思ったが、雲胡のお師匠さんである
玉城朝薫は実在したけれども(この人も大概ドタバタなんだよなあ……)、
了泉と雲胡はいないようだ。
他に尚敬王とか宰相の蔡温とか、歴史上の人物を織り交ぜた上での時代物。
江戸への使節はともかく、冊封使の方まで書くとは思わなかった。
まあ冊封使は行った方ではなく来た方だから、そこまで下調べの量は
なかったかもしれないけど。
冊封副使の徐葆光(じょ ほこう)に心惹かれる。
彼が書いたという琉球滞在記「中山伝信録」を読んでみたい。
……が、図書館にないようだ。残念。
池上永一は琉舞の経験があるのかなあ。
踊り手の心を深く掘り下げて書いていたよね。
自分が経験していないことを真実のように書くのは小説家の任だが、
心から絞り出したような描写が多く、(若干しつこかったけれども)
よくここまで書けるなと感心した。かなりの分量でしたしね。
文字通りの文化立国だもんなあ、琉球は。
「守礼之門」あの真っ赤な姿。日本の城郭建築で門といえば防御を主たる機能と
するものなのに、あの門はなんと軽やかなのか。
結界を作ることで国を守ろうとする。無謀な企て。
その無謀を何百年も続けて、曲がりなりにも国を存続させた。
池上永一の話は琉球の雑学を増やしてくれるところもありがたいですよ。
琉球側から見た琉球使節の立場。役割。江戸へと上る使節の日々。
他の誰が書いてくれるか。……まあ専門の学者は書いているかもしれないけど、
わたしは読んでないから、こういうことを教えてくれる池上永一には感謝しかない。
物語の後半は羽目を外しすぎて、了泉がかなり非道な人になってしまうのがヤだし、
さすがにあそこまでやったら復帰も無理だろうと思うのだが……
あそこまではやらせないで欲しかったな。池上の可笑しみでだいぶ緩和されるが、
人でなしを応援する気にはならん。
とはいえ、すごく面白かったよ。力作。
こういう、力と魂がこもっている作品を読ませてもらえるとありがたいねえ。
沖縄の人である池上永一じゃないと書けない、紅型のような極彩色の世界。
今後もがんばって書いてくれ。たくさん。
トロイメライの続編もぜひお願いしますね。
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