1971年に発表された論文は、ダブルバインド(相反する複数の命令を投げかけること)は投げかける側の不規則かつあいまいな定義の評価によって発生するものであり、また投げかける側の葛藤や不安によって引き起こされるものでもあるとした。
論文内で述べられている具体例を1つ引用する。
ある人は周囲にポジティブな志向を持っているが、自身にはネガティブな志向を持っている。彼は自己嫌悪などの癖の強い行動により周囲を引き付けるが、彼は自身に対するネガティブなイメージを保ちたいため、周囲を拒絶する。がしかし、彼は自己嫌悪するほどに周囲からの関りを欲しているため、離れていく周囲をまた引き寄せようとし、時に離れていく周囲に怒り散らす。彼の主観は「周囲の反応に逐一対応している」という受け身なものであり、彼は動く周囲に合わせて投げかける要求を変えているというのだ。
「私から離れてほしい、けど離れていかないで」という主張は、彼が対人におけるかかわり方や人が発するメッセージの処理の仕様が曖昧で一貫性がなく、なおかつ仕様を考えるときに脳を占拠していたネガティブ志向と競合がおきた結果である。
また、対人におけるかかわり方や人が発するメッセージの処理の仕様が曖昧なのは、彼もまた「私から離れてほしい、けど離れていかないで」というような受け答えをされてきた可能性が高いのだ。
そして彼のこの主張を受け取った人も、一貫性のない要求に混乱してしまう。一夜の付き合いならまだしも、長期間の暴露であれば彼の受け答えに順応してしまう。そう、受け取った人も彼になる可能性があるのだ。
ーーー対策は評価や仕様の具体的な言語化なのだが、
こうも過敏に反応されると、こちらも頭がおかしくなりそうだな。
参考文献
CARLOS E. SLUZKI M. D,ELISEO VERÓN Ph.D. (1971) The Double Bind as a Universal Pathogenic Situation.