2012年に発表された論文によると、特に女性は肥満という症状に対し病原体に対する嫌悪感と同等のものを感じるのだそう。
下手に扱えばあらぬことを引き起こす「太っている」ことへの議題。
上手に扇動すれば富をも築けてしまう「太っている」ことへの議題。
人間はなかなかの度合いで、「太っている」ことに特異な視点を当てている。盲目的にそれから脱却しようと身を削る人がいるほどに、「太っている」ことに嫌悪感を抱いている。
そこまでして注目すべきことなのか?
なぜそこまでして注目すべきであると判断したのだ?
「太っている」ことは非常に認知しやすい。一般的な身体特徴からどれだけ逸脱しているかが、物理的に、一瞥しただけでわかってしまう。身体の相対的な異常を計るためのサインとしては、非常にわかりやすいものだ。
そして人間はわずかな肌色の違いから健康状態を探るような、相対的な異常を毛嫌う性質がある。これらは感染症を探るために発達した能力なのだという。
「太っている」という相対的な逸脱そのものが病である、と学んだか。
「太っている」ことはとある感染症にかかった印である、と学んだか。
「太っている」ことはとある感染症にかかりやすくなる印である、と学んだか。
或いは複数が相互に絡んだか、それはわからない。
がひとまず、私たちは「太っている」という相対的な異常を感染症のような結果を伴う異常として学習したことにより、「太っている」ことへ病原的な嫌悪感を抱けるようになった、という仮説を1つ。
いちおう、肥満体質の人は疾患や感染症の発症率が高くなることと、性的事象に嫌悪感を示す人は「太っている」ことに寛容であることを伝えておく。
「……それだけ?」
「ぼくには明らかに、「太っている」ではないことを社会に求められているような強い欲求や、嫌悪感によって作られたルールを守れという強い規制を感じるんだけど?」
いい発言だ。君が問うたそれは、今まさに議題として挙がっている事柄だ。
参考文献
Debra L. Lieberman, Josh M. Tybur et al (2012) Disgust Sensitivity, Obesity Stigma, and Gender: Contamination Psychology Predicts Weight Bias for Women, Not Men.