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青空ーすべてはバランス

がん細胞とウイルスー5 テロメラーゼの新たな機能の発見

2021.6.11(金)晴れ。今日は入梅。太陽の黄経が80度に達する日とされている。

家の近くの神社の塀の上に伸びている梅の木から梅の実が落ちてきて、歩道にいっぱいころがっている。

赤じそを使って梅干を作り始めた方も多くいることでしょう。

もう一度確認しておこう。
テロメラーゼ(Telomerase)は,RNA構成要素(hTERC)と逆転写酵素活性を持つ触媒成分(hTERT)から成る酵素で,細胞分裂の際に失われたテロメアを伸長させる。

テロメラーゼの新たな機能の発見

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所と金沢大・東北大などの共同研究グループが2020年3月25日に英国科学誌『Nature Communications』に発表した。テロメラーゼの新たな機能を明らかにしました。

ちょっと過去の経緯を見てみます。

昔から多くの研究者によって、がん細胞はどのようにして死なない細胞になるのかという研究が行われてきた。 そしてついにテロメラーゼが1997年に発見(ノーベル賞は2009年)された。

そこで、
世界中のがん研究者らは、細胞不死化能ががん細胞だけに見られることから、テロメラーゼを阻害する薬剤を開発すればいいのではないか?と考えて研究してきましたが、うまくいかなかった。


その間に、がん細胞の全ゲノム解析も行われ、
テロメアの長さを維持することで細胞に不死化能を付与する役割だけがテロメラーゼの機能ではないかもしれないぞ!と考える研究者が増えてくる。

今回のこの研究グループの研究内容をとんでもなく簡単にしてみた。

〇肝臓がんと膵臓がん患者からの手術検体等を用いた解析 
肝臓がんや膵臓がんのうちでも悪性度が高いものほどテロメラーゼが活発であり、活発であるほど病状の経過が悪化していくことがわかった。

どういうことか?


テロメラーゼは細胞が死なないようにテロメアの長さを維持しているだけではない。がん化させる運命のスイッチを押して、そしてさらに、がん化した細胞を増殖させているということか


さらに

〇がん化スイッチの制御分子を解明ーCDK1
CDK1という分子がテロメラーゼをリン酸化することでスイッチを入れていることがわかった。

証明
CDK1の機能を阻害してみると、細胞不死化酵素としての機能には何の影響も及ぼさない一方、テロメラーゼが細胞をがん化させる機能は完全に阻害されている。

こりゃすごいことがわかったね!

最近では、遺伝子編集技術を用いて、テロメラーゼのこの新たな機能のみが働かなくなった細胞を作製したところ、正常な細胞と同じようにマウスで腫瘍を作らなくなったことを確認している。

私たちはこうして結果だけを知って驚いているけど、とんでもなく細かい作業を一つひとつ時間をかけてこなしていき、結果を出している研究者のみなさんのご苦労はいかばかりかと敬意を表します。

ここまで分かってくると、がんの多くの種類に対応できる治療法が確立できるのではないかと思う。期待したい。


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