「厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課」の資料を見た。
平成30年中の自殺者数。
平成30年の自殺者数は20,840人、対前年比481人(約2.3%)減。
平成22年以降9年連続の減少となり、昭和56年以来37 年ぶりに21,000人を下回った。
男女別にみると、男性は9年連続の減少。一方、前年過去最少だった女性の自殺者数は55人の増加となった。自殺者数は男性が圧倒的に多く、女性の約2.2倍となっている(男性68.6%、女性31.4%)。
過去をさかのぼると、平成15年にピークを迎え、総数34,427人となってその後減少傾向をたどっている。
年齢別にみる。10歳から19歳までが 平成21年に565人、平成30年には599人。全体の自殺者数の減少傾向とは違い、わずかな増減を繰り返しながら徐々に増加している。この年齢層での自殺の原因・動機は学校問題が188人でトップ。健康問題119人、家庭問題116人、男女問題52人と続く。
20代、30代、40代と見ていくと、原因・動機が圧倒的に健康問題、経済生活問題、勤務問題となつてくる。
世界保健機関(WHO)によると、日本は2015年には世界で最も自殺率が高い国の1つになっている。
厚生労働省の平成26年中の年齢別、原因・動機別自殺者数では、19才までのいじめによる自殺は3人、その他学友との不和が22人となっていた。
では、文部科学省のデータを見てみよう。
小中高の生徒の自殺者は214人でいじめによる自殺は9人となっている。
内訳・・・小学生4人・いじめ1人、中学生56人・いじめ5人、高校生154人・いじめ3人。不明が圧倒的に多い!!!
日別では9月1日がずばぬけて多い。2学期の初日だからでしょう。
では、把握されたいじめの発生件数を見てみよう。文部科学省のデータを見た。
小中高合わせて昭和60年度から平成17年度まで、155,066件・52,610件・35,067件・29,786件・29,088件・24,308件・22,062件・23,258件・21,598件・56,601件・60,096件・51,544件・42,790件・36,396件・31,359件・30,918件・25,037件・22,205件・23,351件・21,671件・20143件。平成13年度から2万件から2万5千件の範囲にある。平成6年度からは調査方法を改めたため、それ以前との単純な比較はできないとしている。
小中高の自殺者数。
昭和60年から昭和6年まで215人・268人・170人。昭和63年度から平成17年度まで175人・155人・141人・121人・159人・131人・166人・139人・143人・133人・192人・163人・147人・134人・123人・137人・126人・105人。
平成18年度()内はいじめ。171人(6)。
小学生2人(0)・中学生41人(5)・高校生128人(1)
平成25年度 都道府県別 いじめの認知件数(国公私立) を文部科学省が調査した。「いじめ防止対策推進法に基づく組織的な対応及び児童生徒の自殺予防について」という文書により緊急点検を依頼した結果、集計した数字です。 認知件数は合計で185,803件。1000人当たりの認知件数では、京都府が99.8件に対し、福島県が1.2件となっている。各都道府県で大きな差がある。
調査をした文部科学省も結果について、各都道府県の学校や教育委員会への文書の中で次のように語っている。・・・児童生徒1,000人当たりのいじめの認知件数については、都道府県間の差が極めて大きい状況でありますが(別添1のとおり、平成25年度分調査では最大で約83倍の差となっている。)、実態を正確に反映しているとは考え難く、問題行動等調査が国の施策を考える上で極めて重要な指標であることを踏まえると、看過し得ない課題となっています。・・・と言っている。
さらに新しいデータを見た。
平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(速報値)について
小・中・高等学校及び特別支援学校における,いじめの認知件数は323,808 件,児童生徒1,000 人当たりの認知件数は23.9 件。25年度のデータからとんでもなく増加している。上記の文部科学省の緊急点検以降、隠れていた数字が明らかになったとしか言いようがない。
内訳
小学校237,921 件(前年度151,692 件),中学校71,309 件(前年度59,502 件),高等学校12,874 件(前年度12,664 件),特別支援学校1,704 件(前年度1,274 件)。全体 では,323,808 件(前年度225,132 件)。高等学校がかなり少ない。小学校の増加ぶりが不自然だ。
暴力についても同じ平成28年度のデータで見てみよう。
暴力行為の発生件数は59,457 件。児童生徒1,000 人当たりの発生件 数は4.4 件。
内訳
小学校22,847 件(前年度17,078 件)・中学校30,148 件(前年度33,073 件)・高等学校6,462 件(前年度6,655 件)。全体では59,457 件(前年度56,806 件)。
対教師暴力は 8,022 件(前年度 8,212 件)・生徒間暴力は 39,490 件(前年度 36,105 件)・対人暴力は 1,352 件(前年度 1,401 件)・器物損壊は 10,593 件(前年度 11,088 件)
暴力行為が発生した学校数について
暴力行為が学校の管理下で発生した学校数は11,002 校(前年度10,300 校),全学校数に占める割合は30.7%(前年度28.4%)。
暴力問題も相変わらず続いているようだ。
警察庁、厚生労働省、文部科学省それぞれのデータの違いも問題だが、いじめが起きている事実を把握することについて、こんなにいい加減なのにびっくりする。
先生方と校長、教育委員会、それぞれの立場で事実の把握さえままならないということが許されるのだろうか?学校は教育の現場なのに。教育の現場が霧に包まれた真実の見えない世界だとしたら、生徒たちは何を学んでいるのだろうか?将来の日本はどうなるのだろうか?事実や真実が見えない世界が当たり前の社会になるのか?
本当にいじめによる自殺者は調べたような数しかいないのか?
私がデータを調べていた頃、NHKスペシャルが放映された。シリーズ 子供の”声なき声”(1)いじめと探偵 (2)”不登校”44万人の衝撃 です。2回の放送とも視聴しました。
1回目は、東京の探偵事務所にいじめの実態調査の依頼が全国から殺到しているという話です。もともと浮気や企業の内偵調査を行っていたが、15年ほど前から、いじめの調査依頼が増え始めた。最初は普通に料金を取っていたが、この調査には料金は取れないと感じて寄付を募って本格的に取り組み始めた。今では専門のNPO法人を立ち上げている。学校や教育委員会に相談しても「証拠がないと話にならない。」とそっけなく退けられたり、調査をしても「事件性はない。」と片付けられ、行き場を失った子どもや親たちから、これまでに6000件以上の相談が集まっているという。ここの探偵は親身になって調査を行い、SNSの監視から、尾行・張り込み、情報公開請求など、あらゆる手段を駆使していじめの実態を探り、ケースごとに解決策を模索している姿が映像に映し出されていた。
自殺した娘の死に疑問をいだいて、いじめが原因ではないかと調査を依頼した父親が調査を早く終わらせようとする学校や教育委員会に口を閉ざそうとしたとき、この探偵が新聞社やテレビ局を集め、事件の内容を公開し、世論に訴えたり個人情報開示請求によって、学校と教育委員会がどのような調査でいじめではないという結論を出したのかを知ろうとした。
驚くことに、教育委員会は「議事録がない。」と答えていた。
2回目の放送は、14,120人の中高生へのLINEアンケートに基づいて、いじめを掘り下げて考えていた。番組中にもLINEに中高生からの参加があり意見が寄せられていた。いい番組を制作したなぁ!と感心した。
アンケートの中で「いじめがあったと訴えても問題を解決してくれない。」と答えたのは51%。その中で「解決をあきらめ自分が我慢して耐えた。」と答えたのは83%。
私はこの放送を見て、日本の報道機関にNHKが存在することに安堵し、心の中で感謝しました。
教師も過労死を危惧されるほど仕事量が増えているという。戦後の詰め込み主義からようやくゆとり教育が始まったのに、それが失敗だとして再び学力至上主義の嵐が吹き荒れ、先生の仕事量が限界に達している。一方で、学校内のルールが細かく決められ生徒に自由がなくなっているという。その中でSNSによる陰湿ないじめが増えていて顕在化しにくくなっているようです。つらい!!!何とかできないか!?