上昇が続くビットコインは「バブル」といえるのか 暗号資産推進派のトランプ勝利で高騰続く
2024/12/18 07:20様記事抜粋<
暗号資産のビットコインが、1BTC=10万ドルの大台を突破して、年初から価格が2倍以上に高騰している。その背景にあるのは、言うまでもなく暗号資産の推進派であるトランプ次期アメリカ大統領の存在だ。
トランプ氏は、選挙戦の最中から、暗号資産に対して寛容な姿勢を示しており、アメリカをビットコイン超大国にするとして、「ビットコインの戦略的準備金を創設する」と約束。そのおかげで大量の選挙資金を暗号資産関連企業などから集めることに成功したとされている。
しかも、これまで暗号資産の規制強化派だった「SEC(アメリカ証券委員会)」のゲーリー・ゲンスラー氏を大統領就任初日に解任すると宣言し、実際にゲンスラー氏はすでに辞任に追い込まれている。トランプ氏は、その後任に金融緩和論者であり暗号資産推進派のポール・アトキンス氏を指名している。
ビットコインの存在感が増す事情
暗号資産に対する評価の方向性は、この1年余りで大きく転換してきた。まず、2024年1月にはアメリカでビットコインを組み込んだ「ETF (上場投資信託)」が解禁され、大量の暗号資産がETFの資金として買われることとなった。最近の運用資産合計は、1000億ドル(約15兆円)に達している。さらに、9月末時点のビットコイン現物ETFを保有している機関投資家は1224社に達しているそうだ。(日本経済新聞「ビットコイン、ETF拡大」2024年12月1日付)
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、ミシガン州退職年金制度といったヘッジファンド以外の機関投資家の名前も上がっている。それだけビットコインETFが投資商品として市民権を獲得しつつあると言っていいだろう。いまや、ビットコインの時価総額は300兆円に達しており、その存在感は以前より大きなものになっている。
しかも、トランプ新政権では財務省が中央銀行にビットコインの保有を義務付ける法案を共和党が提出する予定であることがわかり、注目を集めている。アメリカの中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長も、ビットコインを「デジタルゴールド」と位置づけて話題に
1年前612万円だったビットコインがなぜ急騰?
そもそも1年前のビットコインは1BTCあたり日本円で約612万円(2023年12月14日)だった、それが1年後の現在は約1567万円(2024年12月14日)になっている。ざっと2.5倍になったわけだ。推進派のトランプ氏が選挙で勝利したことも大きな要因の1つだが、それでも暗号資産を17世紀にチューリップの球根がバブルとなって、短期間で弾けた「チューリップバブル」に重ねる見方をする専門家も、まだまだ少なくない。
なぜビットコインは、ここまで急騰しているのか。暗号資産急騰の背景には、いったい何があるのか。簡単に紹介すると、次のようなものがあると考えられる。
①マイニング半減期の期間であったこと
マイニングと言うのは、ビットコインのルールで4年に1度、ビットコインを創生(採掘)するマイニング報酬が半分に減少するイベントのことだが、それがたまたま2024年の4月20日に実施されている。これまでの半減期にはビットコインは急騰してきた。そのタイミングでトランプ氏がビットコインをアメリカの戦略的準備金に組み入れると約束したことから、その価格が大きく急騰したと考えられている。
②オプション市場での異変
ビットコインにもオプション市場が存在するが、今回の急騰に拍車をかけたひとつが、このオプション市場での「コール(買う権利取引)」だと言われている。2020年から始まっているビットコインのオプション取引は、大量の資金が「買う権利=コール」に集中し、11月22日には460億ドル相当にまでコール・ポジションが積み上がり、コールの売り手であるマーケットメーカーが損失回避のためにビットコインの現物を買わざるをえない状況になった、と考えればいいかもしれない。
③ビットコインETF市場の急激な拡大
前述のように、ビットコインETFはいまや15兆円もの市場に成長している。ビットコイン全体の時価総額は今や300兆円に達し、ビットコインを含む暗号資産全体の時価総額も約3.3兆ドル(約500兆円)にも成長しており、マイクロソフトなどアメリカの巨大テック企業に匹敵する規模となっている。その推進役となっているのがETFと言うわけだ。
④インフレ懸念の再燃
ビットコインや金は、インフレに強いと言われている。インフレによって通貨が目減りしていく中で、その価値を維持し続けてくれそうな金やビットコインが注目されて、数多くの投資家に購入されているわけだ。
⑤地政学リスクの高まり
2024年はまさに第三次世界大戦の前哨戦ではないかと思われるような、地政学リスクの高まりがあった。ロシア・ウクライナ戦争をはじめとして、イスラエルや中東諸国では熾烈な戦火を交えている。中国も東アジアでの海洋進出を着々と進めている。地政学リスクの高まりで、いざと言う時に役立つ資産としてビットコインなどの暗号資産が注目されてきている。
トランプ次期大統領が準備しているかもしれないと言われているビットコインを外貨準備に組み入れるプランも、あながち笑い話では済まない状況が進んでいる
ビットコインの価格形成に影響を与える4つの要因
ところで、こんな状況でビットコインは今後どうなるのだろうか……。そもそもビットコインはどんな要因で価格が形成されるのか。ビットコインの価格が動くメカニズムを考えると、次のような要素が考えられる。
1.需給のバランス
トランプ氏が大統領選挙で優位に立つにつれてビットコインの価格は上昇し、この数カ月で価格は上昇を続け、市場から大量のビットコインが移動していると報道されている。
ビットコインは、あらかじめ供給量を2100万枚に制限されているために、投資家が将来の価格上昇を期待すれば、投資家はビットコインを抱えて離さなくなり、その価格は上昇することになる。現在のビットコインの時価総額300兆円のうち、約7割程度を個人投資家が保有している。個人投資家が一斉に利益確定で売却すれば、価格は暴落する
2.規制緩和の状況
ビットコインの取引を制限した中国のように、国によってはビットコインの売買を禁止するところもある。こうした規制緩和の状況によっても、その価格は大きく変化する。トランプ氏が大統領に就任する時点で、少なくともアメリカでは大きく規制緩和されるのではないかと期待されている。
アメリカの報道によれば、トランプ政権チームは、銀行規制を担当する主要政府機関の大幅な縮小や統廃合を検討しているそうだ。たとえば、「連邦預金保険公社(FDIC)」の廃止の可能性まで検討しているそうだから、実現すればビットコインなどの暗号資産も大きな規制緩和の波がおこるかもしれない(ウォールストリートジャーナル「トランプ氏の側近ら、銀行規制当局の縮小・廃止を模索」2024年12月13日)。
銀行の預金保険制度が万一崩壊するようなことになれば、マネーは銀行から流出し、株や債券、暗号資産や金などに流出することは避けられない。
また、税制の変化もビットコインの価格形成に大きな影響を与える。日本では、現在ETFの創設でさえ検討されていない段階だが、やがてETFに解禁されて20%の申告分離課税の対象になる日が来るかもしれない。現在は最高税率55%の一時所得扱いされているが、特定口座の対象になれば最高で20%の税金で売買取引ができる
ビットコインが買われる条件
3.景気動向に左右される
ビットコイン=暗号資産は、インフレに強いと考えられており、近年金同様に買われてきた。インフレが続けば法定通貨の価値が下落し、資産を守る意味で金やビットコインが買われることになる。また、インフレによって金利が上昇すれば、株価が下落するため、株式市場から暗号資産市場などに資金がシフトすることも考えられる。
4.イノベーションによる要因
暗号資産は、いまだに現物を貨幣として使うことが難しいが、何らかの技術革新によって、もっと手軽に使えるようになれば、暗号資産全体の価格が安定して投資しやすくなり、その価値も上昇する可能性が高い。また、ビットコインのように創成(マイニング)に莫大な電気を消費することが問題視されているが、その解決策が見つかれば、さらなる成長が可能になるかもしれない。また、ブロックチェーン技術の向上も期待されている。
5.競合する通貨との関係性
ブロックチェーン技術を駆使したことで誕生した「NFT(非代替性トークン)」や「DeFi(分散型金融)」といった技術の向上によって、暗号資産市場全体に資金が流れ込みやすくなる。これらの技術に使われている「イーサリアム」などが価格を上昇させれば、ビットコインの価格にも波及してくる。
ビットコインは新しい通貨になるのか、金との違いは?
パウエルFRB議長が、ビットコインを「デジタルゴールド」と位置付けたことで、市場には大きな追い風が吹いているわけだが、リスクはないのだろうか。
ビットコインの現在の時価総額は約300兆円、対して金の時価総額は世界で約2800兆円。ビットコインは、投資以外ではほとんど使われないが、金は宝飾用や工業用として幅広く使われている。「暗号資産=カジノのチップではないのか」と指摘する人もいるが、2008年からスタートしたビットコインは歴史も浅く、トランプ政権時代は良いが、その後はどうなるのか……。皆目見当もつかない。
さらに、相変わらずハッキングによる盗難も多い。最近も、暗号資産交換業のDMMビットコインが、5月末に482億円相当のビットコインを不正流出させたことで廃業することになったが、きちんとした規制が行われないと、こうしたケースは今後も数多く発生する可能性が高い。
文字通りビットコインは、ハイリスク・ハイリターンの投資商品だが、余剰資金でゼロになってもかまわない、という覚悟でやらないとひどい目に合うかもしれない。ビットコインは金と違って、有事の際に本当に強いのかどうかは、実はいまだによくわかっていない。韓国大統領が戒厳宣言をした瞬間にも、ビットコインは一瞬大きく下げた。
あくまでも、自己責任で楽しむ姿勢が、個人投資家には必要
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