「食事の戦略」は人間関係を広げる"最高の武器"だ 「交友関係」こそ人生を豊かにする"最高の財産"
2024/12/20 10:30様記事抜粋<
『「最高のビジネス人脈」が作れる食事の戦略』(古河久人 著、東洋経済新報社)というタイトルを初めて目にしたときには、「“ビジネスに役立つ料理本”ってことか?」と勘違いしてしまった。
われながら食い意地の張り具合に呆れるが、それはともかく本書は“食を通じた人間関係の構築方法”について書かれたものなのだそうだ。
食事をしながら楽しく人脈を広げていくには
年間800人近くの人に会っているという著者は、人と人とをつなぐ「KIZUNA PRODUCER」として活動しているという人物。
聞きなれない名称ではあるが、要はコミュニケーションのツールとして食事を活用しているということである。
そして、そんな活動の延長線上に生まれた本書では、「食事(会食)をしながら楽しく人脈・交友関係を広げていく方法」を紹介しているわけだ。
会食の最中に新しいアイデアが生まれたというような経験は私にもあるので、下記のような考え方には強く共感できる。
人間関係、人脈こそは無限の価値、人生を豊かにしてくれる、最高の財産だと私は思っています。
自分ひとりの力ではどうにもならないことも、人の力があれば解決できます。自分の経験したことのない世界を垣間見ることもできます。
また人脈があることで、さまざまな話を聞くことができます。自分ひとりでは得ることができなかった知見を広めることができ、加速度的に世界が広がっていきます。
さらには人との交流から新しい発想が生まれたり、新しいビジネスが生まれたりすることもあります。(「はじめに 楽しく食事をしながら人間関係を充実させよう」より)
しかしその一方、そもそもコミュニケーションにハードルの高さを感じる方もいらっしゃるかもしれない。
そこで、「食事」が大きな意味を持つというのである。食事を介在させれば場の空気が自然に和み、無理なく関係を深めることができるようになるということだ。
著者も内向的な人間だったものの、食事の力を借りることによって大きな人脈をつくることができるようになったのだという。
「KIZUNA PRODUCER」という肩書きにも、「食の場を活用し、人と人との『きずな』が生まれるように」という思いが込められているようだ
いま、日本経済は転換の局面を迎え、あらゆることでパラダイムシフトが求められています。
そういう時代だからこそ、人が出会って才能が出合い、その結果アイデアが生まれる、そのためにはワクワクする出会い(たくさんのKIZUNA)を生み出していきたいとの意味を込めて、この肩書きを使っています。(「はじめに 楽しく食事をしながら人間関係を充実させよう」より)
だが実際のところ、人との絆を生むためには「誰と」「どの店で」「なにを」食べればいいのだろうか? 具体的に、どうすればいいのだろうか?
人の輪は「食事」から広がっていく
みんなで集まっておいしいものを食べ、おいしい酒を飲んで、楽しく会話する。その結果、お互いの距離が縮まって、そこからまた輪が広がっていく――。
それこそが自身の交渉術のすべてであると著者は言い切る。そのくらい「食事」は重要だというのだ。
さらにいえば、自分が主催した会が盛り上がり、食事をともにした人たちに「また参加したい」と思ってもらうためには欠かせない要点があるという。「どんな人が参加するか」「どの店を選ぶか」ということである。
なるほど、それらを満たした環境下でものごとをうまく展開させるためには、「楽しい会話」と「おいしい料理」が決め手になるはずだ。
だからこそ、「店選び」は非常に重要だという。“いい店”は、料理がおいしければいいというわけではない
「店が醸し出す雰囲気、お酒、店のスタッフのもてなし力、コミュニケーション力」もまた重要であり、そうしたすべてを総括して「いい店」だということだ。
アメリカの心理学者のグレゴリー・ラズランの研究結果で「人はおいしい食事を共にすると相手に対して好印象を持つ」ことがわかっています。
おいしい食事を共にとると相手との距離感がグンと縮まるというのは、食事と音楽をフックにして人脈を広げてきた私は何度も経験しています。
食事は本当に大切なアイテムです。(136〜137ページより)
「会食の目的」を明確化する
当然のことながら、会食に際しては「目的」に見合った店を選ぶことが大切だ。そのため、まずはなにより「会食の目的」を明確にしなければならない。
基準のようなものがあるのなら知っておきたいところだが、著者の場合、「会食の目的」は次の4つに分かれるのだそうだ。
【会食の目的1】「飲食」がメイン
1つ目は、飲食がメインの会(食事会、グルメ会など)。食べることが好きな人や、お酒が好きな人を集めて開催する会だ。
「おいしいイタリアンを食べに行こう」「ワインを飲みに行こう」「日本酒を飲みに行こう」などの目的を明確にすれば、好みの似たような人たちが集まりやすいわけである。
【会食の目的2】「人の紹介」が目的
2つ目は、「人を紹介する、あるいは知り合いから人を紹介してもらうための場」としての会食。
たしかに「今度、〇〇さんを紹介するよ」「△△さんと3人で会おう」というような場合は、「食事をしながら」が一般的かもしれない。そうすれば必然的に、初対面の相手との壁も低くなっていくからだ。
【会食の目的3】「1対1」で人間関係を強化
3つ目、人間関係を強化するための「1対1」の食事は、内向型人間にとっては最も苦手な会食かもしれない。
とはいえ、相手との強固な関係を築くためには、1対1の食事は重要である
1対1の食事のシチュエーションは、「親交はあるが、はじめて1対1で食事をする場合」と、「何度か会っているが、より親しくなるために、あらためて1対1の食事に誘う」場合の2通りがあります。(141ページより)
【会食の目的4】「会話」がメイン
4つ目は、「会話がメイン(談義・議論の場)の食事会」です。(141ページより)
たとえば「音楽の話をしよう」とか、「〇〇の勉強会を開こう」といった目的に応じて集まるというケース。
著者がこのパターンを利用する場合には、講師役として専門家を呼んで話を聞こうとか、レクチャーをしてもらうということもあるという。
和食、フレンチ、イタリアン、中華はどう使い分ける?
では、会食の目的に応じてどのような店を選べばいいのだろう?
この問いに答えるべく、著者は「和食」「フレンチ」「イタリアン」「中華」のジャンルごとにそれぞれのメリットとデメリット、目的別の向き・不向きなどを明らかにしている。それぞれを確認してみよう。
誰にでも受け入れられる 和食
和食のメリットは、素材重視で季節感のある料理が味わえること。ヘルシーで健康志向の人にも喜ばれるだけでなく、見た目の美しさも魅力だ。
また、酌をし合うことでお互いの距離を縮めることも可能。年配者に対しては敬意を示すことができ、VIPな人を紹介いただく場合には、懐石などきちんとした和食を選べば紹介いただく人への感謝を示せるだろう。
おでんや割烹の店を利用すると、お互い好きなものを別々に食べることができます。食事量も各自コントロールできるという利点があります。
相手の出身地(自分の出身地でも可)の郷土料理、地酒の店を選ぶと、その話で大いに盛り上がることができます。(144〜145ページより)
デメリットとしては、材料費の高騰の影響を受けやすいことが挙げられるようだ。
特別感を出すなら フレンチ・イタリアン
フレンチのメリットは、特別感や豪華なイメージ。親しい人、いつも会食をするメンバーの誕生月、定年祝い、永年勤続、創業〇周年などの「記念日」に利用するにも適している
一方のイタリアンは、気軽な会食に使えるところが魅力。素材をあまり加工せず出すことが多く、アラカルトが充実した店も多い。
ただしドレスコードがあるなど格式ばったところもあるので、事前確認は必要。大声を出しづらい雰囲気の店もあるので、大人数の会食には向かないようだ。
シェフによって得意な料理が違うので、「どこどこのシェフの得意料理を堪能する会」、フランス料理も年代によって流行りのもの、調理方法が違うので、たとえば「1870年代に流行っていた料理を食べる会」など、いろいろな趣向の食事会を企画すると、みなさんに喜んでもらえるのではないでしょうか。(146〜147ページより)
気軽に楽しめてコスパがいい 中華
野菜、肉、魚、麺類、ご飯類、といろいろ食べられ、気楽で大人数でも楽しめるのが中華。値段も手ごろな店が多く、コスパもいい。比較的、短時間で料理が出されるので、ランチなど短い時間の会食にも向いている。
だが大皿で出される場合は取り分けに時間がかかり、会話も中断するかもしれない。また、油っこいため敬遠する人がいる可能性もある。
中華は、回転式の「丸テーブル」が会食に非常に使い勝手がいいです。
隣の人だけではなく、斜め前の人などみんなと話せて和やかに食事ができます。議論に使う場合、参加者全員の顔が見られるため、話し合いが活発になります。
また大皿料理から小皿に取り分けて食べるので、自分のペースで食べることができます。
「会食の難易度が高い店」とは?
このように和洋中にもそれぞれメリットやデメリットがあるわけだが、料理のジャンルはどうであれ「会食の難易度が高い店」もあると著者は指摘している。焼き肉、鍋、寿司、天ぷらなどだ。
たしかに焼き肉や鍋は初対面の人、あまり親しくない人と利用することには抵抗があるかもしれない。また寿司と天ぷらは、つくりたて、揚げたてをすぐに食べることが肝心でもある。
出されたものに手を付けずにゆっくりしゃべっていたら一番おいしいところを逃してしまうし、大将、職人にも申し訳ないです。そういう意味でこれらの店には「会話がメイン」というより「食べることをメイン」として行くのがいいように思います。
というより、以上に挙げた店はすべて「話をメインにする会食」としては少々難易度が高いというだけで、その料理を目的として食べに行ったり、親しい人と合意のうえで食べに行ったりするのはまったく問題ありません。
つまり前述のとおり、「目的」がどんなものであるかを意識することが大切なのだろう。
もしかしたら最初は、「いちいち考えるのが面倒」だと思われるかもしれない。だが慣れてしまえば、「目的に応じた店選び」もまた楽しみのひとつになるはず。
参加者のタイプや好みをイメージしながら適切な店を選ぶところから、「食事の戦略」が始まるともいえそう
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