昔、伯楽(はくらく)といわれる馬の鑑定(かんてい)が上手な人がいた。よい馬と悪い馬を一目で見分けることができた。彼は年を取ってから、自分が身に付けた馬の鑑定法を『相馬経(そうまきょう)』という本にまとめた。
伯楽の息子は父の鑑定術を引き継ぎたいと思って、朝から晩まで、『相馬経』を何度も読み、数日後には、要領(ようりょう)を会得(えとく)したと思い込んだ。
そこで、『相馬経』を手に、駿馬(しゅんめ)を探しに出かけ、偶然一匹のヒキガエルを見つけた。そして、そのヒキガエルの額が、『相馬経』に書いてある駿馬の特徴とほとんど差がないと思った息子は、そのヒキガエルを捕まえ、急いで家へ帰ってきた。門を入ると、喜び勇んで言った。
「お父さん、ぼく駿馬を見つけたよ。ちょっと蹄(ひづめ)が小さいけどね。」
伯楽は、ヒキガエルを一目見て、冗談半分に言った。
「いい馬はいい馬だけどね、これはただ跳んだり跳ねたりするだけだ。きっと手綱(たづな)は引けないよ。」
《中国故事「按图索骥」》
※中国に「按図索驥an4 tu2 suo3 ji4」という成語がある。「按」は「~の通りに」、「~に基づいて」などの意味。「索」は「探し求める、探し出す」という意味で、「驥」は「いい馬、駿馬」の意味だ。つまり、「按图索骥」は「図を頼りに駿馬を探す」という意味だ。教条にこだわって物事を行い、現実には即さないこと、仕事振りが杓子定規であることを比喩している。現代では、手掛かりをもとに事物を探すこと、根拠があって探しやすいことなども意味しているという。
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