今日は九州の宮崎のことを思い出している。その宮崎を初めて訪ねた日というのが、奇しくも20代前半の今日、つまり12月30日であるので、記憶の中にはっきりと残されている部分があるからなのだろう。
宮崎には東京からの直行便以外、いろんな入り方をしたなと思う。
一番最初に訪ねた時はたしか指宿に2泊してから大隅半島の根占までフェリーで渡り、陸路で入ったと記憶している。その翌年4月には鉄路で「高千穂」、それから寝台特急「富士」などで。そして沖縄から鹿児島空港を利用してだと思う。近年は熊本から高速道路を使って入った。
残念なのは、12ヶ月すべての月を制覇とはいかず、9月だけは今も宮崎未踏のままである。
その宮崎へ行ったら必ず立ち寄りたい所がある。
絵はがきやパンフレットや旅行雑誌などで名を馳せたあの堀切峠だ。急に黒潮の海が開ける一瞬は何ともいえない感動を与えてくれる。これぞまさしく、日南海岸屈指の景勝地と言っても決して過言ではないだろう。
宮崎の海は青くて広い。
堀切峠から最初に見た瞬間、そう思わずにはいられなかった。関東では高所から急に海が開けるような場所はあるようでわりと少ない。それだからこそよけいにこの峠が、印象深く思えたのだろう。季節が12月というのも、南国ムードに拍車をかけたのかもしれない。
あの時市内を案内してくれた男の人。助手席のバス会社の秘書嬢。もうすぐ二人は結婚するとか言っていた。
宮崎市内5日間の滞在でいろんな所を訪ねた。
でも最終の夜の堀切峠はまた格別であった。この峠を、夜にスポーツカーで飛ばせたら最高だろうなとつぶやいたら、わざわざ自宅の車を用意してくれたことを覚えている。
月の浜辺を宮崎交通のガイドさんを助手席に乗せて日南海岸をドライブしたのをつい最近のように思い出す。宮崎を訪ねるたびにそう思う。あの時の松岡ガイド嬢や他のみなさんはその後もお元気なのであろうか。
旅はいつでもよろこびと憂いを残してくれる。
そういえば、この宮崎を詠んだものがNHK短歌に掲載されたことがあった。宮崎の作品というのもうれしいが、5ヶ月連続の短歌掲載というのも、やはりありがたい。
黒潮の都井の岬の落つる日や野生の馬のその先の青
平成28年9月「NHK短歌」10月号
「心に残る旅(36)堀切峠」