建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

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「福祉起点型共生コミュニティ」の類型整理に基づく多様な事例の実態と課題

2023-07-20 17:13:07 | 書架(高齢者関係)

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地域施設計画研究40 20227月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022

 

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「福祉起点型共生コミュニティ」の類型整理に基づく多様な事例の実態と課題 ORGANIZING SITUATION AND PLOBLEM OF VARIOUS CASES BY CLASSFYING AND ORGANIZING WELFARE ORIGINED SYMBIOTIC COMMUNITTY Keywords: Keywords : WELFARE ORIGINED SYMBIOTIC COMMUNITTY, Wel fare facility, Local migration, Co-occurrence network 福祉起点型共生コミュニティ,福祉施設,地方移住,共起ネットワーク 金子亜里砂地域内での自助・共助の仕組 みなどを活用しつつ,高齢者が適切な支援を受けなが ら地域で生活し続けられる仕組みの構築が目指されて いる。厚生労働省は地域包括ケアシステム,国土交通 省は自治体と連携して高齢者や障碍者,子育て世帯等 の住宅確保要配慮者への住宅や住宅斡旋の整備を行っ ている。他方,都市圏への人口集中と地方の過疎化と いう人口偏在も大きな社会問題であり,その解決方法 として,内閣府は地方や郊外など比較的人口密度の低 い地域へのセミリタイヤ〜リタイヤ世代の移住を促す 動きもある。同時に,就労世代の移住や二拠点居住な ども注目される。移住者によって地域に雇用や経済の 動きなどの活性化が期待されており,地方創生の一環 としてCCRC やスマートウェルネスシティ,セカンド ハウス促進など多様な取り組み例がある。これらはそ れぞれ異なる事業であるが,その背景にある課題は共 通していることから,地域性や居住者像に合わせた選 択肢として再整理することが可能だと考える。 1.2 本研究の位置づけと既往研究について  現在までに,高齢者等の住宅整備という観点では サービス付き高齢者向け住宅の検討会等が行われてお り,西川氏はこの検討会での報告書から“ サ高住に生 活する高齢者の生活全般を考える「街」という視点が 重要であり,単体としての高齢者向け住宅の整備だ けでは高齢者の生きる力にはならない” と述べ,サー ビス付き高齢者向け住宅に住む高齢者と地域コミュ ニティの関わりについて事例を用いて課題の整理を 行っている。同時にストック活用についての課題にも 触れており,活用の在り方を地域コミュニティの形成 の観点から人的な要素を加えた手法の整備が必要だと 述べている1)。また,地方創生について経済学から医 療・福祉まで複数の視点からの論では,松田氏が米国 CCRC を元に日本でのあり方をビジネスの視点を含め て論じたものや2),園田氏による東京圏や都市部での 地域包括ケアの在り方や高齢者住宅の整備における課 題等をまとめ,今後の高齢者支援の仕組みについて言 及したものがある3)。これらは政策単体の仕組みや建 築を整理しており,これに加えて政策から建築までを 結ぶまとめ資料はより有用な知見となると考えた。 1.3 研究の目的  本研究では,これらの行政から福祉施設までの多様 な取り組みを「福祉起点型共生コミュニティ(図1注1))」 と総称する。多様な取り組みの有り様を,地域に点在 する資源の活用方法と,福祉施設の支援状況の両面か ら活用できるよう取りまとめ,後続の取り組みに資する知見として整理することを本稿の目的とする。その ため,本研究では各行政の掲げる地方創生の政策や取 り組みのうち,「生涯活躍のまち」先行モデル事業時 期において取り組まれた,地域のコミュニティの維持 や持続可能な地域づくりの施策や施設を対象として整 理・分類を行う。これら先行事例はモデルとして紹介 され,その後に続く事例のひな形となったためである。 2.調査概要  調査対象は内閣府が主導する地方創生のうち,地域 のコミュニティ維持を目的とした「生涯活躍のまち構 想に関する手引き(以下,手引き)」とその先行自治体 となっている42 地域の総合戦略の他,内閣府,厚生 労働省,国土交通省が補助金対象や先行事例として紹 介する福祉・医療施設142 のうち,実際に訪問可能で あるなどの条件で50 件を選定した(表1)注2)。まず 調査1として,手引きと各総合戦略の内容,50 施設の 運営方法や理念等を把握する。次に調査2では,調査 1で使用した対象施設のテキストを使用し,「使用資源 →支援・整備目的」となるような共起ネットワークを 作成して共起関係を明らかにし,50 施設について整理・ 類型化を行う。最後に調査1で抽出したキーワードと 調査2で行った資源と支援・整備目的による類型,対 象施設へ運営様態や地域福祉の現状,今後の課題につ いてのヒアリング調査を行った(表1)。 3. KH_coder による単語の共起分析 3.1 調査対象と共起ネットワークの作成  調査1ではKH_coder による単語の共起分析を行う。 初めに調査準備として手引き,各地域の総合戦略の内 容,50 施設の運営方法や理念等を「基本的な考え方」, 「総合計画との関係」,「施策の目標と基本方針」の3 2/10 Table.1 Summary of study 各政策の内容を把握し,類型化の基準となるキーワードを作成する。

対象とする医療福祉施設50 施設について整理・類型化を行う。 「使用資源→支援・整備目的」となるような共起ネットワークを作成する。 各調査対象の政策内容や内閣府・厚生労働省・国土交通省が補助対象や 先行事例として紹介している施設の運営内容について把握し,政策や施設 のホームページの文章から類型化のための基本となるキーワードを KH_coder にて作成する。 調査1 で使用したテキストから,「使用資源→支援・整備目的」となる 文章を抽出し共起ネットワークを作成する。さらに,中心理念とサービス, 建築種別へのつながりを整理し,類型化を行う。 調査1,2の結果とヒアリング調査をもとに,事例を介して類型化を行う。福祉起点型共生コミュニティ」の概念図

その内,1 単語の固有名詞が複数の語と して抽出されている場合は正しく抽出されるよう指定 する。また,抽出の際は組織名や地名などの共起が抽 出されないようにあらかじめ設定した。これらのデー タをもとに,頻出語句上位75 語に対して施策につい ては共起回数100,施設に対しては60 として出力した。 3,2 キーワードの抽出とその特徴  作成した共起ネットワークからそれぞれの特徴を並 べると,いずれも地域という単語が中心となり他の単 語が出現している(図2)。手引きの共起ネットワー クの特徴をみると,地域という言葉の他に生活や医療・ 介護に関係する言葉が頻出した。この他にも「市町村」 の近くに「計画」や「作成」があり,各地方自治体が 事業を主体的に推進する文脈構成が伺える。またこれ らの対象として,手引き内には子供や高齢者について も言及があるが,最も共起が多く出現したのは中高年 で,これらの年齢層を対象に社会参加や健康的な生活 の整備を進める内容であると分かる。42 地域について も同様に特徴を見ると,地域という単語を中心に子育 て,医療,産業という3 つの大枠に分かれている。子 育てでは「結婚」「出産」「子供」,これと離れた医療関 連で「健康」が抽出され,高齢者を対象にこれら施策 が記述されている。最後に産業では「雇用の創出や観 光,企業への支援」といった共起が作られており,対 策として盛り込まれていることが分かる。50 施設でも, 前の2 事例と同様に地域について強い共起関係が読み 取れる。これは地域包括ケアシステム等の推進が行政 や施設の考え方の中心にあるためと考えられる。 4.活用する資源とその目的のネットワーク 4.1 活用する資源と目的のネットワークの全貌  調査2として,内閣府,厚生労働省,国土交通省等 の各行政庁が地方創生のモデルとして先行交付金対象 とした福祉施設や住宅施策の取り組み50 件について, ホームページ上のテキストから施設理念や事業内容を 取り出し,施設の整備目的とその支援方法の共起ネッ トワークを作成した(図3)。「住み慣れた地域で暮ら せる」「誰もが安心して暮らせる」「多様な交流を促す」 がネットワークの中心となり,自立支援や混在による 活動の機会がサブ的中心をなす。それらを医療・介護 の連携や助言・相談,食関係の支援,他世代住宅,福 祉の多機能化が資源として支える構造である。 4.2 特徴的な活用資源と支援の関わり    図3から,整備の目的と資源の共起回数が10 回以 3/10 図2 KH-coder による生涯活躍のまち構想等のテキスト分析

交流を促すための食の支援は活用資源や手法が多 岐にわたり,また身近であることから様々な地域で展 開しやすいのではないかと考えられる。一方で,子育 て世帯への支援は共起する資源の数や目的が少なく, 移住支援については総合戦略等で促進され様々な活動 が行われつつあるものの,移住者は簡単に増えず,な お支援すべき課題として取り上げられている。   取組の目的を達成するために,どのような資源の活 用や施設整備と対応しているかを図6に整理し,大き く6つの手法に分類した。子育て世帯への支援として, 多機能福祉機能施設,誰もが安心して暮らせるための 団地改修とサービス拠点併設,等である。なお,1つ の取り組み例が複数の類型に合致する場合がある。

訪問看護(14) リハビリ(10) 多世代住宅(13) 食による支援(13) ボランティア活動(11) 複数の福祉施設の併設(13) デイサービス(10) 食堂・喫茶店・レストラン(12) 農園(10) 医療・介護の連携(24) 相談,助言の場(22) 活用・整備する資源 日常生活の支援(17) 健康に過ごす(23) 地域で活動し,地域で暮らす(23) 住み慣れた地域で暮らし続ける(49) 誰もが安心して暮らせる(59) 子育て世帯への支援(23) みんなで楽しめる場(10) 高齢者・障碍者の就労(10) 多様な交流を促す(48) 自立して生活する(32) あらゆる人が集まり,活動できる場(25) 活用・整備する目的 図4 整備目的と資源の共起回数 共起回数 1 ~ 2 3 ~ 5 6 ~ 10 11 ~ 凡例 () 内の数字は,文章内の出現回数を表す 線の太さは共起の回数を示す 出現回数上位10 個による 5.取組の目的- 手法の類型による特徴的事例  4.2で整理した手法6類型について,特徴を表す 典型的な例であり,かつ複数の事例集で参照されモデ ル性が高いと考えられる該当例を1事例ピックアップ し,施設概要を表2〜4に示して以下に説明する。様々 な取り組みのいずれにも必ず地域住民が利用できる場 所があり,施設やサービスの利用者と地域住民の交流 や地域との関係づくりが企図されている。なお節タイ トルとした類型名に付した()内は該当事例数を示す。 5.1 複数の福祉施設の併設(12)_ 子育て世帯へ の支援を充実させた事例  複数の施設を併設して子育て事業で地域に貢献し, 子供から高齢者,障害者も共に地域で暮らすための幅 広い居場所づくりや住宅整備を行う事例である。  駅から徒歩15 分程度の距離にある築12 年のUR 団 地と隣接した複数の福祉施設が併設した事業所であ る。2,3階建てと低層の生活棟と福祉棟に分かれてお り,二つの棟をカフェと団地の公園が繋ぐ。道路向い には保育園と幼稚園があり,団地内の広場以外にもコ ミュニティセンターと公園が併設され,子供が安心し て遊べる。小学校も徒歩10 分圏内にある。  地域の暮らしを支える生活棟の2階には多様な活動 のための地域活動スペースとして,子供カフェや地域 交流教室,料理教室や講座,子育て相談等などの活動 図4 整備目的と資源の共起関係(抜き書き) 図5 共起ネットワークから見た特徴的な活用資源と支援の関わり − 183 − 6/10 を通して幅広い支援を行う。事業の一環として一時保 育事業や,日常生活や身近でこまごました支援まで相 談できる相談事業を併設し,様々な人が利用する。1 階部分には日用品や食材等の小売店のほか,配食サー ビスを兼ねた総菜・弁当屋,福祉用具を専門に扱う福 祉用具事業や,広場に面したカフェが入っている。  二棟をつなぐ広場では年4回のマルシェ(市場)や 子供の遊び場企画,夏至のキャンドルナイトイベント 理念

community.  「サポートセンター構想」のもとに,車いす生活に対 応できるバリアフリーの住環境と,24 時間連続する看 護・介護・入浴・食事サービスなどの入居施設と同様 のサービスを住み慣れた住まいや今までの暮らしの中 で受けられるシステムと,要介護者・介護支援者であ る家族を支える仕組みをつくっている。高齢者自身の 「出来る限り現在の生活を継続したい」というニーズに 応えるため,要支援高齢者と在宅介護者の双方を支え る仕組みとしてアメリカのPACA(高齢者包括的ケア プログラム)と類似したケアシステムをサポートセン ターとして提供する。「福祉サービスはいつも使う人た ちの目の前にあり,使ってよかったと思えるサービス であるべき」という考え方から,2中学校区に1ヵ所 の小規模で多機能なサービスを分散配置している。  点在する複数の施設のうち,補助金対象になった施 設について事例として紹介する。周辺は閑静な住宅街 で,用水路と川に挟まれた車通りの少ない道に面して いる。併設施設は地域密着型老人福祉施設(定員20 名) の他,小規模多機能型居宅介護(定員25 名),認知症 対応型共同生活介護(定員9名)と,市補助事業であ る在宅支援型住宅(10 室)等の入居施設からなる。在 宅を支援する小規模多機能型居宅介護や,地域に開放 されたキッズスペースや地域交流スペース,カフェテ ラスなどが併設されている。この内,在宅支援型住宅 は住居の提供・安否確認・相談援助のみで,基本的に 自立した居住者が対象である。在宅生活が難しい場合 は,隣接した小規模多機能型居宅介護を利用して地域 継続居住を支える。外来者の訪問に制約や条件はない。 小規模多機能型居宅介護と地域密着型老人福祉施設は 同一建物内にあり,それらをつなげる地域交流スペー スではコーヒーが無料で提供され,近隣住民や利用者 が自由に出入りする。近所の小学校の子供なども放課 後にキッズスペースを利用しており,多様な世代の住 民が集まる地域交流の拠点として機能している。 5.4 就労支援(6)_ 地域に開かれた障碍者就労事 業所の事例  児童デイサービスと児童居宅介護事業(ホームヘル プサービス)から始まった事業で,2006 年に旧保育 所の建物を改修して事業所を移転して障碍児の放課後 デイサービスを開始した。障碍者のサービスを中心に 障碍者の就労支援と年齢や障碍の有無を問わず福祉 サービスを提供する。就労の目的に,地域住民とふれ あいながら自分らしく成長し,地域での自立的な生活 を支援する場所というテーマを掲げている。活動拠点 となるレストラン(コミュニティカフェ)やボラン ティアセンターが併設された共生型地域オープンサロ 8/10 表4 支援と支援拠点の類型整理ごとの事例(3) − 186 − ン「ガーデン」は障碍者の就労活動の拠点,地域住民 のサロンである。ここでは障碍を持つ人が主体となっ て喫茶店と駄菓子屋を運営し,コーヒーや手作りのお 菓子等を提供し地域住民とも関わる。駄菓子屋は障碍 者就労と高齢者のボランティア活動の場で,子供に昔 ながらの遊びを教えるなど世代間交流を担う。コミュ ニティカフェでは就労支援と交流を兼ねて障碍者と地 域住民が朝食・昼食の注文取りから調理,配膳を行う ボランティア活動を行っている。これらは,福祉活動 に対する理解や協力体制を育て,趣味や交流の幅を広 げらる地域福祉の一助となっている。  また,地域住民が福祉の一端を担う有償ボランティ ア「パーソナルアシスタントサービス」では,大学生 から団塊世代までの地域住民が1時間500 円で公的な 福祉サービスでは提供できない通勤支援や犬の散歩, 買い物支援などを提供する。このボランティアを行う 際には,ボランティアと利用者の安全のため大学教員 や福祉関係者が講師を務める,ヘルパー3級程度のオ リジナルカリキュラムを受講することとなっている。 5.5 交流場所整備(35)_ 地域内外の多様な人々が 集う施設群の事例  町が入手したが人口減少や経済の衰退によって10 年以上放置されていた駅前の土地の再生に端を発する 事業。駅を挟んだ反対側は住宅街。町民は基本的に車 での移動で,電車は2時間に1本程度であり,交通の 便が良い場所ではない。従来の公共事業のように単純 に場所をつくっても地域の活性化につながらないこと が明らかであったので,地域での生活を基本に必要な 中身を考え,そこから空間を考えるアプローチを採っ た。また,不動産的価値を考え,税収や賃料等を決め るファイナンス思考に基づく事業性が注目された。類 似の整備事業には国からの補助金で建設費は賄えられ るが,その後の持続的な経営が続かないケースが多々 ある。本事業では民間主導で,補助金を前提とせず, それぞれが利益を上げて事業の継続的運営を可能にし ている。その他にも建物ごとに株式会社として独立さ せ,1ヵ所の施設経営難が連鎖しない仕組みとした。  小児科・保育室,発達相談支援,子育て支援センター, 高校受験を支援する塾,図書館,スタジオやキッチン, アトリエ,バレーボールができるアリーナ(体育館), 研修施設があり,町内外の利用を呼びこみ多様な人々 の交流拠点となっている。地域交流拠点として活用さ れる図書館では農業などの産業支援をはじめ,地域住 民の役に立つ情報を発信しているほか,地域に根差し た多様な企画展やイベント等が開催されている。さら に町役場が併設され有事の際には防災拠点として機能 する他,宿泊施設やエコハウスの機能を体験できるモ デルハウス,それらの設備を使った住宅群,日常的に 必要な店舗や飲食店などが敷地内併設されており,地 域でのものづくりを生み出す産業ではなく,「住むこと を楽しむ」ための機能をまとめた拠点になっている。  地域住民に必要な支援や設備を中心に,自然と人が 集まり活動,交流を通して地域継続居住を支援し地域 の持続に寄与する社会資源となる施設である。 5.6 多世代住宅やシェアハウスなど住宅整備(30) _ 互いに助け合うシェアハウスの事例  4路線が乗り入れるターミナル駅の駅前で市内でも 最も活気ある場所に立地し,周辺には生活利便施設が 多く立ち並ぶ。緩和ケアを中心とした有床診療所の運 営者が大家となり,隣接して立地する。運営者は,高 齢者の孤立化や入院期間の短縮化,核家族化で介護が 困難な社会環境になりつつあること,障碍者の社会参 加の場が少ないこと等を問題だと捉え,従来の福祉施 設にある入居対象を定めた住居ではなく多様な住人が お互いに助け合える住宅づくりを行った。1階部分に 児童発達支援事業所と,美容院,ネイルサロン,クリー ニング等のテナントが入り,2階にシェアハウス,3 階から6階に賃貸マンションが配置されている。シェ アハウスの共用キッチンでは住民の交流イベントが開 催されるほか,有志ボランティアが孤食や欠食の子供 を支援する子ども食堂が定期的に開催されている。  「互いに協力し,相互に助け合う」という理念が掲 げられ,学生から夫婦世帯,一人暮らしの社会人や高 齢者など幅広い世代,ライフスタイルの住人が集まっ て暮らせるように住戸が配置されている。住宅を管理 する事務局では日常的な困りごとの相談から,介護の 相談まで幅広く対応する他,大家が運営する診療所と 連携して介護が必要になってもケアを受けながら暮ら し続けられるよう連携している。ケアマネージャーと 連携し,介護保険サービスの手続きなど医療・介護の 両面からサポートを行う。入居している学生には,高 齢者の買い物やゴミ出し等の日常生活を手伝いとバー ターでの家賃補助など,それぞれが必要とする支援に 合わせた仕組みがある。地域との連携として,1階に − 187 − 9/10 10/10 併設されているカフェではイベントのほか,児童発達 支援事業所を利用する子供と,入居者の交流,NPO 団 体を介した地域の子供と入居高齢者の交流など多様な 関わりが生まれている。また,建物内の一角を利用し てアーティストの作品展示など地域との関わりを支援 するイベント等も積極的に行われている。  福祉だけでなく,日常的な関わりからお互いに関係 を築くことで人づくり・まちづくりを支援している。 また今後の展開として,里親が子供たちを育てる社会 的養護「小規模住居型児童養育事業」を予定している。 6.まとめと課題  現在までに様々な方法で地域の資源活用が行われ, 支援が行われていることが改めて明らかになった。こ れを,図3(キーワードの共起の関係)を元に表に整 理した全体像を表5 に示す。「カフェ・レストラン」や「施 設併設の交流スペース」での「交流(①:0.32,0.38)」 を含む「交流②」は最も多様な資源の活用との組み合 わせで記述される。同時に「施設併設の交流スペース ③」は多様な支援内容(目的)との関係で記述される。 居場所やイベントとの関係も特徴的である④。「訪問/ 通所/入所型福祉サービス」での「日常生活の支援(⑤: 0.28,0.22,0.30)」を含む「自立した生活⑥」も多 数のキーワードとともに記述され,現在の国の方針で ある在宅支援や社会保障費の削減に呼応した支援内容 への言及が含まれる。今後も地域特性に合わせた拠点 等の整備が必要であり,本稿で整理した,団地や空き 家等の資源活用や福祉事業の多機能化は大まかな方向 性として共通していると考えられる。また,6類型と その事例は取り組みモデルとして全貌理解へのガイド ラインとなる。今後は活用できる資源の確保やその管 理,整備までの過程,組織づくりについてのモデルと 併せた検討が必要だと考える。 注釈 注1)この図は,まち・ひと・しごと総合戦略,地域包括ケアシ ステム,住宅セーフティネットの理念に含まれるキーワードを 包括的に整理したもので,このように異なる政策も相互に関係 して地域やその住環境の維持に寄与することが期待される。 注2)厚生労働省地域共生拠点づくりの手引き(セーフティネッ ト支援対策等事業費補助金,H24),老人保健事業推進費等補 助金(H24),地域包括ケアシステム構築へ向けた取り組み事 例,国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業,小さな拠 点づくりガイドブック(H25,27),内閣府日本版CCRC 関連 の構想・取組を整理するに当たって参考とした事例,地方創生 交付金,地方創生先行型交付金,地方創生拠点整備交付金,地 方創生推進交付金,地方創生加速化交付金(H27 〜H29),「生 涯活躍のまち」に関する取組事例集,高齢者住宅経営者連絡協 議会リビングオブザイヤー(2014 〜2016),日本医療福祉建 築協会建築賞(2017 年4 月時点まで)を参照し,取り組み事 例等への掲載や補助金事業として複数回選定されている,図1 に整理した複合的モデルに合致した取り組み内容や建築とし ての特徴があること,を条件に訪問調査が可能な50 件を選定 参考文献 1)西川英治:サービス付き高齢者向け住宅の先端事例から見え てきた課題 −「単体」から「街」へ,特集「サービス付き高 齢者向け住宅の意義と課題−豊かな高齢者居住のために何がで きるか」,都市住宅学,2016SPRING,pp.58-63 2)松田智生:日本版CCRC の可能性〜地方創生を支える組合 せ型ビジネス,特集「地方創生」,日本不動産学会 第29 巻 第2 号・2015.9,pp.80-87 3)園田眞理子:超高齢化に直面する東京圏における住まい方と 医療・介護・福祉のあり方,特集「地方創生」,日本不動産学会, 第29 巻第2 号・住宅利便施設福祉事業医療 医療施設 福祉施設 公共施設 見守り 交流 ボランティア 相談・助言 悩みの共有 情報の共有 日常生活の支援 配食サービス 就労の場づくり 遊べる環境 社会貢献 居場所づくり イベントの場 観光資源 一時滞在施設 移住 住居の提供 支援者の負担 を軽減する 多世代交流 転用交流自立した生活生きがい地域の活性化 活用する資源 施設種別活用方法立地など 活用する資源(縦軸)と支援内容(横軸)の共起 支援内容 関係をシンプルに集計したもので,分析対象とし た50施設において,活用する資源と支援内容の 組み合わせが含まれる割合を示す。ゆえにすべて の項が1/50=0.02の倍数となる。 ① ② ③ ⑤ ④ ⑥ 表5 活用資源と,それに対する支援内容の関係

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事業者アンケートを通じた高齢者介護施設における 介護ロボット・機器・ICT の活用実態に関する研究

2023-07-20 16:57:08 | 書架(高齢者関係)

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地域施設計画研究40 20227月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022

 

 

 

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まち・ひと・しごと創生総合戦略とそのモデル事業の類型化による 認識する課題と解決策パターンの分析

2023-07-20 12:00:00 | 書架(高齢者関係)

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地域施設計画研究40 20227月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

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まち・ひと・しごと創生総合戦略とそのモデル事業の類型化による 認識する課題と解決策パターンの分析 Analysis of issues and solution patterns based on the "Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities" and the typology of its model projects Keywords : Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities, Perceived Issues, Types of Solutions, Text Analysis,キーワード:まち・ひと・しごと創生総合戦略,認識する課題,解決策類型,テキスト分析 This paper analyzes the relationship between the geographical conditions of municipalities and cities, the issues they recognize, and the types of solutions (local resources and support methods) based on the texts of the "Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities" and its preceding model projects. The relationship between the geographical conditions of the municipality/city, the perceived issues, and the types of solutions (utilized local resources and support methods) is analyzed. In the formulation of the basic plan, the relationship between "geographical conditions and solutions" is more influential than "recognized problems and solutions," and the structure of the concept is easier to understand. On the other hand, it also suggests the need for guidelines in organizing perceived issues. ○山田あすか*,宮崎文夏** YAMADA Asuka and MIYAZAKI Fumika 1.研究の背景と目的  人口急減・超高齢化という大きな課題に直面する日 本では、高齢期のQOLならびに福祉の継続性の観点 から,地域内での自助・共助の仕組みなどを活用しつ つ,高齢者が適切な支援を受けながら地域で生活し続 けられる仕組みの構築が目指されている。これらは地 域包括ケアや共生型社会などのキーワードによって説 明され,それらの基本方針を踏まえて,政府は各自治 体が「まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下;総合 戦略)注1,2)1)」として、自治体の地域特性を活かした 自律的で持続的な社会の創生方針を立案することを求 めている。この総合戦略は各自治体によって検討時期・ 決定の時期が異なり,特に早い段階でその立案を行っ ていた自治体は地方創生についての必要性の認識が高 く積極的な取組を行っている自治体といえ,後進のモ デルとして参照もされている。  総合戦略とその記述内容については,その前提方針 1/10  * 東京電機大学未来科学部建築学科 教授・博士(工学) ** 東京電機大学大学院未来科学研究科建築学専攻 修士課程(当時),修士 (工学)  * Professor, Dept. of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ., Dr.Eng. ** Former Student, Master Course, Dept. of Architecture, Graduated School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ., M.Eng. と位置づけられるコンパクトシティ政策との関係がど のように盛り込まれているかの対応関係を調べて実質 的に70%ほどの自治体がコンパクトシティを明示ま たは関連計画と連携しているとした研究3)や,特に人 口減少社会における人口偏在のさらなる進行を緩和す る定住自立圏構想(ダム機能)としての地方都市の魅 力の顕在化といった価値を整理したレポートがある4)。 また,まち・ひと・しごと創生総合戦略のテキストを 分析し,その施策が大都市から市区町村単位の人口移 動,つまり人口偏在の解消に寄与しているかを分析し た研究5)では,テキストマイニングによって抽出され た単語「連携」が潜在因子として人口移動に効果があ ると示されている。  本研究では,本格的導入が検討されていた当時の「生 涯活躍のまち(旧・日本版CCRC)」を国内の先駆的モ デルとして,そのテキストや取組内容の分析によって これらの全体像を整理することを目的とする。その後 地域施設計画研究40 2022年7月 日本建築学会 建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会 Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022 − 169 − 2/10 徴的な類型から,当該類型の典型事例となる自治体や 取組の例を示して,各総合戦略の概要を把握する。 3.総合戦略テキストの分析による解決策・課題・地 理的条件等の関係 3.1 認識する課題によるクラスタ   自治体が施策設定のために記述している,認識する 地域の課題のキーワードを,類似した内容をまとめて いく方法により表3のように整理した。このうち,「老 年人口の増加・高齢化」と「年少人口の減少」,つまり 少子高齢化は,すべての自治体に該当した。このため, 以下で説明するクラスター分析の際はこのキーワード は対象から除外する。これ以外では認識する課題の キーワードは大きくは[人口減少・雇用環境・生活環境] の3つに分類できる。  このキーワード整理を元に,各自治体の記述に各 キーワードが含まれているときに「1」,含まれていな いときに「0」とおいて階層型Ward 法クラスター分 析を行うと,キーワードの組み合わせによって8つに の策定事例においては,先行事例を参照して類似の計 画を設けたケースが一定数含まれるため,各自治体の 特性や課題に応じた模索時期の計画の概要を把握する ことがまず,基盤となるモデルとしての理解に対して 妥当であると考えたためである。  本稿の構成として,第3章では,各自治体の総合戦 略の説明テキストから,国内での地域性や各市町村の 創意工夫に応じた解決策の類型化を行う。また第4章 では自治体が認識する課題とそのための解決策,地理・ 人口条件の分析によって,総合戦略の組立傾向を分析 する。5 章では,類型ごとに実例を挙げて居住者の生 活や交流の様子,地域への波及効果の想定などを整理 し,今後の整備や制度利用における「選択」や,効果 的整備のための資料としてとりまとめる。 2.研究概要(表1)  2017 年当時に各都道府県・市区町村が掲げていた 総合戦略のうち,地方創生先行型交付金など政府から 補助金を受けている42 の自治体(図1・表2)を分 析対象とする。  対象自治体の地理・人口条件(表2)と,総合戦略 の内容から「自治体が認識している課題」「解決策」を キーワードとして拾いあげ,類似した語をまとめてい く手法で分類・整理する。各自治体の総合戦略がどの キーワードを擁するかによってクラスタ分析・ロジス ティック回帰分析を用い,自治体を類型化する。  さらに,整理した類型のうち,該当数が多い等の特 凡例:CCRC構想,ひと・まち・しごと創生本部事務局取り組み事例 :ワースト5を表す 高齢化 率[%] 人口/可住 面積[人/㎢] 人口増減率 (H22~27) 可住面積/ 面積[%] 所要時間 (東京) 所要時間 (指定市)  凡例  :東京  :対象自治体  :うち,政令指定都市 表1 研究概要 図1 対象自治体と政令指定自治体,東京の位置関係 研究① 研究② 目的 対象自治体 総合戦略のモデル事業の類型化 地方創生先行型補助金など政府から補助金を受けている自治体 研究方法地理・人口条件と,総合戦略の内容から認識している課題・解決策のキーワ ードによるクラスタ分析,ロジスティック回帰分析より,類型化を行う 目的 対象自治体 今後の整備や制度利用における選択と,効果的整備のための資料づくり 研究①より類型化した事例のうち,参考となる自治体 研究方法対象自治体の取組・構想事例を挙げ,その位置付けを整理する − 170 − 3/10 人手不足 消費の減少 雇用機会 の少なさ 就業者数 の減少 生産活動 の厳しさ 子育てと就 労の両立の 困難 事業所数の減少 雇用の場が必要 安定した雇用の確保 非正規労働者の増加 職業観の連携のなさ 女性の雇用機会の不足 観光業の縮小 観光者数の減少 宿泊施設の不足 税収減 税収減の可能性 生産活動の低下の懸念 介護を理由とした離職の増加 生産年齢人口の負担増の懸念 所得向上の必要性 商工業の小規模事業者の高齢化 ・後継者不足の加速化の懸念 企業の経営継続が難しい 総生産額の縮小 第1次産業の対従業者数 の産出量の低さ 仕事・子育ての環境 が整っていない 雇用の多様 性のなさ 子どもの預け先が足りない 保育ニーズの対応が困難 仕事と子育ての両立が難しい 求人と求職のミスマッチ 多様な働き方を求められている 子育て世代の所得の低下 保育の経済面の負担が大きい 人材不足 後継者不足 人手不足の可能性 就業状況にマイナスの影響 を及ぼす可能性 人材確保の難しさ 消費の縮小 町外での消費傾向 経済規模の縮小の懸念 地域内消費の減少の懸念 経済規模の縮小 行政 地域資源 生活の 不安 地域の 環境 生活利 便性 生活での経済面の負担が大きい 移住の際の経済面の負担が大きい 犯罪・身の回り・防災力の危険性 自主防衛組織の希薄化 共助機能の低下の懸念 エネルギーの安定確保 地域防災機能の低下 都市機能の分散 不法投棄がある のいぬ・のねこ 地域医療環境が不十分 交通利便性・福祉施設入所 による転入 産科医療機関がない 医療・介護需要が縮小する可能性 医療・介護需要が増大する可能性 高齢者福祉の課題 自然環境 雪 無居住地域発生による地域 の保全が困難になる可能性 中山間部の衰退 生活利便性の低下 集落ごとの生活利便性の差 生活利便性に課題が生じる可能性 都市部との生活環境の格差が残る 公共交通の維持管理の困難 公共施設・交通の維持の困難の可能性 買い物環境が悪い 交通整備 の不足 交通の便が悪い 公共交通の整備 役員のなり手不足・高齢化 行政ニーズの対応の困難 移住者が増えた 公営住宅の不足 福祉環境 教育の格差が残っている 教育や文化継承への影響の懸念 大学がない 小学校の統廃合 高校がない 教育環境 観光者数の減少 宿泊施設の不足 認知度が低い 地域の持っている資源 を活かしきれていない 空き家 観光業の縮小 生産年齢 人口減少 就職によ る転出 進学によ る転入 消滅の可 能性 進学によ る転出 生産年齢人口の減少 若い世代の転出 第1次産業就業者数の減少 第2次産業就業者数の減少 第3次産業就業者数の減少 就業率の減少 生産年齢人口の減少の懸念 総人口の減少 大卒者が定着しない 就職による転出 転職期の転出 結婚による転出 東京圏への一極集中 転出超過 若い世代の転出 転入超過 高等教育機関への進学による転入 人口減少の加速化 過疎化の進行 地域コミュニティの維持の困難 消滅可能性都市がある 空き家 空き店舗 空き地・耕作放棄地の増加 過疎化 人口減少の加速化の懸念 平均寿命が短い 社会増減数の減少 自然増減数の減少 高齢期の転出 退職による転出 流出超過 地域の持続性の低下の懸念 老年人口の増 加・高齢化 総人口の減少 地域別高齢化率が高い地域がある 年齢構成バランスの悪化 単身高齢者・要介護者の増加 老年人口の増加 少子高齢化 2020年をピークに老年人口の減少 2025年をピークに老年人口の減少 50歳以上の転入 第1次産業の高齢化 第2次産業の高齢化 要介護認定者率の増加 超高齢化の進行 女性の後期高齢者の増加 年少人口 の減少 総人口の減少 子どもを産む世代の女性の減少 未婚率の増加 初婚年齢の上昇 年少人口の増加 少子高齢化 合計特殊出生率の低下 出会いの機会が不足 若い世代の転出 保育所の過剰状態の懸念 年少人口の大幅減少の見込み 若年層の離別の増加 出生数の減少 初めて出産を迎える年齢の上昇 高校進学による転出 大学進学による転出 東京圏への一極集中 高校がない 大学の選択肢が少ない 1世帯当 たりの人 口減少 核家族化 世帯数の増加 1世帯当たりの人口減少 高齢者の孤立 大学がない 若い世代の転出 転出超過 人口減少雇用環境生活環境 :クラスタ分析をする際に用いる  整理されたキーワード 凡例 クラスタ分析対象外のキーワード(すべての自治体が該当) 表3 認識する課題のキーワードの整理 分類された(表4)。これらの各クラスター(CL)に 共通する項目(60%以上が該当)をグレーに塗り,そ の内容の組み合わせによって3つのグループにまとめ た。グループの内訳を表5に示す。 1)課題が複合的である[少子高齢化複合]:CL8 に一致。 [人口減少・雇用環境・生活環境]のすべてに一致し, さらに[生活環境]のうち,福祉環境についての記 述がある自治体が該当する。 2)雇用機会を重視する[雇用機会]:雇用機会を軸に, 人口減少・生活環境に言及するCL 4,5,7と,人 口減少に言及するCL 6が該当する。 3)人口減少に特化した[人口減少]:人口減少のみ記 述するCL 2と,人口減少・生活環境に言及するCL 1,3が該当する。  総じて,人口減少にはいずれも言及されておりそれ に関連する,人口減少との相互関係的な原因となるこ とがらまでの認識をどの程度整理されているか,すな わち地域の課題を深刻なものとして詳細に整理してい るかの差異と理解することができる。雇用機会に該当 する自治体が最も多く,該当数は合計22 である。地 − 171 − 4/10 域での生業を成り立たせることが人口減少への対策に もなるという関係での課題認識を推察できる。6自治 体が該当する,課題が複合的であるグループは最も認 識する課題を詳細に整理している自治体と言える。 3.2 解決策- 活用地域資源と支援方法によるクラス タとその組み合わせ  記述された解決策を,まず[活用地域資源]と[支 援方法]に分けてから,類似した内容をまとめていく 方法により分類する。 ■[活用地域資源]は,住宅/民間/公共施設の跡地, 福祉施設,教育・公共施設,公共・民間(公共交通や 生活利便施設),産業に分類される(表6)。  このキーワードが各自治体のテキストに含まれてい るかの状況に基づきWard 法クラスター分析を行い, 3つのクラスターを得た(表7,8)。それぞれに,以 下の特徴を持つグループとして整理する。 1)施設および住宅跡地活用:福祉,教育,公共・民 間施設と住宅跡地を活用する。第一次産業と第三次 産業についての記述がある。 2)施設活用:公共・民間施設,第一次産業,第三次 産業についての記述がある。第二次産業についての 記述はない。民間施設/産業寄りの地域資源活用に ついての記述に特徴のあるグループと言える。 行政 administraction 生活の不安 anxiety life 消費の減少 reducation in consumption 結婚・出産による転出 moving out of marriage and birth   生産年齢人口の減少 reducation in working ages population 進学による転出 moving out of admission 老年人口の増加・高齢化  increase in aging population クラスタ Cluster 対象自治体のNO. グループ Group 人口減少雇用機会課題が複合 年少人口の減少 reducation in youth population 消滅の可能性 possibility of annihilation 教育環境 educational environment 1世帯当たりの人口減少 depopulation per household 医療福祉施設 medical and welfare facilities 空き家 vacant house 地域資源 community resouces 地域の環境 environmental of community 生産活動の厳しさ difficult to production activities 雇用の多様性のなさ diversity of employment required 進学による転入 transferred to addmission 人手不足 shortages of man-power 子育てと就労の両立の困難 difficulty of combine work and child-rearing   生活利便性 convenience of life 雇用機会の少なさ less opportunities for employment 就業者数の減少 reducation in number of employed people 交通整備の不足 insufficiency of traffic improvement 人口減少 Depopulation 雇用環境 Employment environment 生活環境 Life environment 認識する課題 recognize problems − 172 − 施設 Facility 跡地 Subsequent land 産業 Industry 施設,住宅跡地活用グループGroup 施設活用少ない

表8 解決策-活用地域資源のクラスタ分析結果 表7 解決策-活用地域資源の該当項目 第1次 Primary 第2次 Secondary 第3次 Tertiary 住宅 House 民間 Private 公共 Public 福祉 Welfare クラスタ Cluster NO. 公共・民間 Public・ private 教育 Educational 活用地域資源 Conjugate local resources 2, 3, 17, 20, 27, 34, 35, 36, 37, 40 22, 41, 42 該当する自治体のナンバー 29 10 3 凡 例 住:住宅跡地活用  施:施設活用  少:少ない 活用地域資源 住+施施少0 3)活用資源が少ない:活用資源についての記述が見 られない,または他の自治体に比較して少ない自治 体。産業に関する記述はない。  総じて,活用地域資源として事業等の核となる「施 設」をどの程度巻き込んで想定しているかにおいて差 異のあるグループと言える。最も該当が多いのは施設 および住宅跡地活用のグループで,29 自治体が該当す る。これらは,活用できる地域資源についてそれぞれ の自治体の実態に即して記述がなされた群である。 ■[支援方法]は,該当が最も多い定住・移住のほか, 雇用・就労や子育て支援などに分類される(表9)。該 当内容の種類が多いのは生活支援と子育て支援で,そ れぞれの自治体の考え方やケアニーズ等により,選択 的に記述されていると推察される。  このキーワードを元にクラスター分析を行い,3つ のクラスターを得た(表10,11)。それぞれに,以下 の特徴を持つグループとして整理する。 1)移住・福祉・住宅・生活支援:各支援方法が包括 的に記述された群。雇用・就労と多世代交流,住宅 の全てに記述がある。多世代をターゲットにした包 括的支援策が打ち出されている。地域包括ケアシス テムについては記述がある場合とない場合がある。 跡地 生活施設 住宅跡地 民間跡地 文字:クラスタ分析に用いたキーワード 公共跡地 福祉施設 教育・公共 公共・民間 産業 活用地域資源 空き家 空き店舗 公共施設跡地 廃校 住宅跡地 第1次産業(農・林・水産) 第2次産業(建設・製造) 第3次産業(小売り・運送・教育・医療・観光業) 医療・福祉施設 サービス付き高齢者住宅 学校施設(大学・専門学校・高校) 生活利便施設(商店等) 交流施設 公共交通・施設 活用しようと構想している地域資源 表6 解決策-活用地域資源のキーワード整理 住宅 雇用・就労 防災 移住・定住 子育て支援 医療施設 地域包括ケアシステム 支援 企業誘致 高:入所介護 障:入所介護 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 賃貸住宅 共同生活援助(グループホーム) サービス付き高齢者住宅 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム) 店舗(ショップ・売店) 飲食(食堂・カフェ・酒場) ギャラリー 温浴施設 運動場・スポーツセンター 地域包括支援センター 多目的ホール 町内会館 地域交流施設・センター 生活利便 施設 地域交流 施設 保育所 幼稚園 小規模保育事業 事業所内保育事業 認定こども園 放課後児童クラブ 届出保育施設 病児・病後児保育 一時預かり 障碍児通所施設 子育て支援 母子家庭等家庭 協力員派遣事業 障碍児相談支援 子:支援 子:通所 施設入所支援 就労移行支援 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ 短期入所生活介護(ショートステイ) 小規模多機能型居宅介護 障:支援 高:通所 訪問介護 訪問看護 高:訪問 居宅介護支援 サービス付き高齢者住宅 配食 診療所 小児初期急病診療所 薬局 高:居宅支援 障:訪問 居宅介護(ホームヘルプ) 障:通所 短期入所(ショートステイ) 障:生活介護 行動援護 多世代 交流 生活 支援 支援方法 表9 解決策-支援方法のキーワードの整理 文字:クラスタ分析に 用いたキーワード − 173 − 6/10 移住・福祉・住宅・生活支援移住・福祉・住宅移住・福祉移住グループ地域包括ケア システム community based integrated caresystems 住宅 house 生活支援 livelihood support 多世代交流 interaction of many generations 医療福祉施設 medical/ welfare facilities 防災 disaster prevention 移住・定住 local migration/ settle クラスタ Cluster NO. 子育て支援 to support rasing a child 雇用・就労 employment/ work 支援方法 support method 凡例 1:該当  0:該当しない   :60% 以上が該当   :50% 以上が該当 表10 解決策-支援方法の該当項目 該当する自治体のナンバー 移:移住   福:福祉  住:住宅  生:生活支援 支援方法,40 移・福・住・生 移・福・住 移・福 移 凡例 表11 解決策-支援方法のクラスタ分析結果 2)移住・福祉・住宅:地域包括ケアシステム,生活 支援に関する記述がなく,子育て支援について記述 がある点が特徴。子育て世代〜生産年齢層に特化し た支援方法が記述された群と言える。 3)移住・福祉:住宅と生活支援についての記述がなく, 子育て支援,雇用・就労,地域包括ケアシステムに 記述がある。子育て世代〜要介護年齢層に至る前の リタイヤメント前後の世代に対応した支援方法が記 述された群と言える。 4)移住:移住・定住と雇用・就労が多くの場合で当 てはまる(5/7 自治体,71.4%)が,他の支援方法 についての該当が他の自治体に比べて少ない。  総じて,移住と雇用・就労を軸として,ターゲット とする年齢層によって支援方法の組み合わせに特徴が あるクラスタ,グループが導かれている。該当自治体 が多いのは移住・福祉・住宅・生活支援(14 自治体) と移住・福祉・住宅(15 自治体)である。 ■解決策における[活用地域資源]と[支援方法]の クロス集計を,表12 に整理した。両者の組み合わせ をA 〜G の7 分類とし,その内容に照らして表13 お よび以下のように解決策の分類を4 分類に整理した。 ①多機能ネットワーク型:A「既存の住宅( 空き家)と 福祉・文教施設(事業終了後,事業継続のいずれも 含む)を複数活用して,移住・福祉・住宅・生活の 包括的支援を行う」が該当する。既往文献5)におけ るテキストマイニングによる抽出単語「連携」は, この類型において最も関連深いと想定される。 ②ネットワーク型:B「既存の住宅と施設を複数活用 して,移住・福祉・住宅の支援を行う」とC「既存 の住宅と施設を複数活用して,移住・福祉の支援を 行う。特に地域包括ケアシステムに言及」が該当す る。生活支援を伴わないことから,子育て世代〜リ タイヤメント前後の世代が対象だと想定される。 ③拠点型:D「特に民間施設を利用して,移住・福祉・ 住宅・生活の包括的支援を行う」とE「特に民間施 設を利用して,移住・福祉・住宅の支援を行う」が 該当する。利用される既存施設の組み合わせが多様 であり,既存住宅の活用によらず,住宅支援を行う ことが特徴的である。 ④拡充期型:F「既存住宅と施設を活用して移住促進」 とG「移住と福祉を支援方法とするが活用地域資源 についての記述が少ない」が該当する。他の自治体 に比べて具体的な解決策の記述が少ない自治体であ り,解決策自体が拡充時期にあると言える。 活用地域資源 多機能ネットワーク型5,8,10,12,13,14,16,23,24,25,28,30 多機能集中型3,17 施設型2,20,27,34,36,40 住宅+施設1,4,9,11,18,19,29,31,32 地域包括ケア推進型6,7,15,21,26 移住型目的先行型22,41,42 ③拠点型 ②ネットワーク型 解決策(4分類) 解決策(7分類) 内訳 ④拡充期型 ①多機能ネットワーク型 住宅+施設施設少ない 移・福・住 移・福 移 凡例 3,17 表12 活用地域資源と支援方法による解決策の分類 表13 解決策の分類 支援方法 ① ③ ② ④ − 174 − 7/10 4.地理・人口条件と認識する課題,解決策の関係 4.1 地理・人口によるクラスタ   各自治体の状況の客観的数値である,表2の人口, 高齢化率,人口/可住面積,可住面積/面積,人口増 減率,指定市からの時間の数値データをもとに各自治 体の地理・人口の状況について,4までと同様のクラ スタ分析を行った。この結果,各自治体はⅠ高齢化・ 過疎化が進行している地域,Ⅱ平均的な地域,Ⅲ人口 密度が高い地域,の3つに分類された。 4.2 地理・人口条件と認識している課題の関係  自治体の地理・人口条件は,自治体が認識している 課題と対応する関係があることが想定される。表14 に,両者の関係を整理した。また,両者の組み合わせ による該当事例の偏りを確認するため,実測値/期待 値を示した。地理・人口Ⅰ(高齢化・過疎)と認識す る課題が複合的である組み合わせでは期待値よりも実 測値が多く(実測値/期待値の比は1.94),同様にⅢ(人 口密度が高い)では認識する課題が人口減少のみであ る組み合わせでも実測値は期待値を上回る(同1.33)。  また,図2に,地理・人口条件のうち人口増減率, 人口密度)人口/可住地面積),高齢化率と認識して いる課題の3類型(少子高齢化,雇用機会,人口減少) との関係をロジスティック回帰分析により示した。な お,これらは地理・人口条件との関係のうち,相関が 見られた組み合わせを抜粋して示したものである。図 から,人口減少率が高く,人口密度が低く,高齢化率 が高い場合に[少子高齢化複合]の割合が高いことが 読み取れる。課題が複合的に認識されるかどうかにつ いて,これらの地理・人口条件との対応関係が明らか である。また[人口減少]の該当割合は人口増減率と, 人口密度による影響が大きく現れるが高齢化率との関 係は明らかには見られない。つまり高齢化率そのもの は人口減少との相関は弱い。これに対して,[雇用機会] の該当割合は,人口増減率と高齢化率による影響を受 けるが,人口密度による影響はそれに比較すると不明 瞭である。雇用機会を課題として認識するかは,生産 年齢人口の減少との関係が影響すると理解できる。 4.3 地理・人口クラスタと解決策の関係  分類の結果と,解決策の分類①〜④の関係をクロス 集計して表15 に示す。  表15 より,Ⅰ高齢化・過疎地域(18 自治体)のうち, ①多機能ネットワーク型が7事例(38.8%)と最も多 く次に②ネットワーク型が5事例(27.7%)である。 また,Ⅱ平均的な地域(15 自治体)のうち②ネットワー ク型が6事例(40.0%),③拠点型が5 事例(33.3%) を占める。Ⅲ人口密度が高い地域(9自治体)では④ 拡充期型が5事例(55.6%)である。その偏り(実測 値/期待値)はⅠ - ①,Ⅱ - ③,Ⅲ - ④において顕著に 見られる。総じて,地理・人口クラスタにおいて高齢化・ 過疎化が進む地域と多くの活用地域資源と支援方法を 記述するネットワーク型の割合が高く,人口密度が高 い自治体では多くの支援策には触れられていない。  地理・人口の数値と解決策①〜④の分類によるロジ スティック回帰分析を行った(図3)。人口減少率が大 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複 実測値 …1.25以上の組み合わせ 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ Ⅰ:高齢化,過疎地域 Ⅱ:平均的な地域 Ⅲ:人口密度が高い,地方都市 解決策 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 5,12,13,14, 24,25,30 1,4,6,7,19 33,36,37,39 :参考事例 18,/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み 0.50 0.75 1.00 15 20 25 30 35 40 45 高齢化率[%] 凡例 認識している課題の3類型 R²:0.0505 p値(Prob>ChiSq):0.1276 R²:0.0799 p値(Prob>ChiSq):0.0385 R²:0.0355 p値(Prob>ChiSq):0.2349 認識している 課題の3類型 :課題が複合 :雇用機会 :人口減少 図2 地理・人口条件と認識している課題のロジスティック回帰分析 − 175 − 8/10 きく,人口密度が低く,高齢化率が高い場合に,①多 機能ネットワーク型の該当割合が高い。これと④拡充 期型の該当割合の傾向は真逆で,人口減少率が小さく, 人口密度が高く,高齢化率が低い場合に④拡充期型の 割合が高い。比較的課題が深刻でなく,予防的な措置 に留まる段階であると理解できる。②ネットワーク型 と③拠点型は①と④の間にあって,その合計の割合が 一定である特徴を読み取れる。②ネットワーク型は人 口減少率が大きく,高齢化率が高い場合に該当割合が 高い。子育て世代〜リタイヤメント前後の世代を対象 に呼び込みや引き留めを図り,人口バランスのさらな る偏倚を防ごうとする意図を推察できる。そのとき, 人口密度は決定要因とはならない。③拠点型は,人口 減少率が小さく,人口密度が低く,高齢化率が低い場 合に該当割合が高い。人口減少は緩やかだが人口密度 が低く高齢化率が高い地域において,公共交通や商店 等の生活利便性を担う民間施設の活用を主に多様な施 設を拠点とした支援策を展開し,既存住宅の利用によ らない居住支援を行う自治体の取組と説明できる。 4.4 認識する課題と解決策の関係  認識する課題と解決策の類型(表16)には,線形相 関に類する関連性はみられない。[雇用機会]と②ネッ トワーク型,[人口減少]と④拡充期型には期待値より も実測値が多く,後者は上述の傾向とも一致する。つ まり,人口減少が主たる課題である地域では,分析対 象時点では支援策の記述は比較的少なく,いわば予防 的段階と捉えられる。一方,課題が複合的である[少 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 4,5,19,33,36  地理ク型 地理・人口 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ 図3 地理・人口条件と解決策のロジスティック回帰分析 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 人口増減率(H22~27 人口/可住面積[100人/k㎡] 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 15 20 25 30 35 40 45 ① ① :課題が複合 :雇用 :人口減少 ② ② ③ ④ ③ ④ ② ④ 高齢化率[%] 凡例 課題の分類 ① ② ③ ④ ① 解決策による分類 R²:0.0930 p値(Prob>ChiSq):0.0143 R²:0.0628 p値(Prob>ChiSq):0.0678 R²:0.0831 p値(Prob>ChiSq):0.0239 解決策に よる分類 :多機能ネット ワーク型 :ネットワーク 型 :拠点型 :拡充期型 ③ 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複合 地理・人口 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 表16 認識している課題と解決策の関係 ①:多機能ネットワーク型 ②ネットワーク型 ③拠点型 ④拡充期型 実測値 51 計 18 15 895 5 6 22 14 42 54 9 計 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 期待値 0.85 1.15 1.06 0.83 1.00 1.33 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 期待値 実測値 期待値 期待値雇用機会 人口減少 課題 実測値 複合 2202  解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 741 計 計 ② ③ ④ 解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 5.14 4.29 2.57 9 計 ② ③ ④ 解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口9 解 決 策 ① ③ ② ④ 計 雇用機会 人口減少 課題 複合 解 決 策 ① ③ ② ④ 1.17 1.11 1.64 0.43 0.95 0.75 1.07 0.42 1.67 1.17 0 1.56 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ Ⅰ:高齢化,過疎地域 Ⅱ:平均的な地域 Ⅲ:人口密度が高い,地方都市 解決策 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 5,12,13,14, 24,25,30 1,4,6,7,19 33,36,37,39 :参考事例 18,21,31 22,35,38,41, 42 9,11,15,26, 29,32 8,16,23,28 10 表15 地理・人口クラスタと解決策の関係 ②ネットワーク型 2,27 3,17,20,34, 40 ①多機能 ③拠点型 ④拡充期型 ネットワーク型 地理・人口 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ  認識している課題 課題が複合雇用機会人口減少 地理・人口条件 ③拠点型④拡充期型 ①多機能ネッ トワーク型 ②ネットワ ーク型 Ⅰ高齢化・過疎地域 Ⅱ平均的な地域 Ⅲ人口密度が高い, 地方都市 認識している課題 課題が複合雇用機会人口減少 地理・人口条件 ③拠点型④拡充期型 ①多機能ネッ トワーク型 ②ネットワ ーク型 Ⅰ高齢化・過疎地域 Ⅱ平均的な地域 Ⅲ人口密度が高い, 地方都市 ■実数で表記 ■地理・人口条件と認識している課題の組み合わせに対する解決策類型の該当割合 20.0% 50.0% 12.5% 40.0% 25.0% 12.5% 20.0% 22.2% 33.3% 20.0% 44.4% 20.0% 20.0% 20.0% 40.0% 100.0% 100.0% 60.0% 40.0% 40.0% 60.0% 図4 地理・人口条件と認識している課題,解決策の関係 − 176 − 9/10 子高齢化複合]の自治体は①,②,④に該当し,課題 が整理されていても解決策が必ずしも多機能で相互連 携に意欲的とは限らない実態は,解決策の具体化や実 践における課題が現れたものと理解できる。  これら地理・人口条件と認識している課題の組み合 わせに対して,解決策が対応しているかを図4で確認 すると,同様にⅠ高齢化・過疎地域で認識している課 題の類型が分散しており(複合,雇用機会,人口減少 に広く分布する),客観的指標では課題が多いと推察さ れる地域でも,認識している課題やその解決策の複合 化において差異があることが読み取れる。 5.類型ごとの参考事例   表15 で組み合わせが多く,地理・人口条件と解決 策の典型的事例の概要を図5と以下に説明する。 ①多機能ネットワーク型:南魚沼市(A,雇用機会)「グ ローバル・コミュニティ」の形成:市内にある国際大 学を核とし,グローバルな異文化交流と,地域資源の 活用・福祉の整備・移住促進による多世代交流の場づ くりを行う。また,福祉・住宅を整備し,若者に対す る雇用の創出を目指している。 ②ネットワーク型:南伊豆町(A,少子高齢化)「アク ティブシニアお試し移住プロジェクト」:杉並区と連携 し都市部と地方の互いの強みや魅力を活かし課題を補 完しあい,地域の持続性を図る。お試し移住では移住 コンシェルジュによる住まい・仕事・子育て支援の紹 介を行い,短期だけではなく本格移住の促進を図る。 ③拠点型の事例:姶良市(B,雇用機会)「医療・福祉・ 都市機能誘導地域 居住誘導地域 市街化区域等 歩いて暮らせるまちづくりとして,公共交通 を軸に都市機能を誘導しまとめることで,コ ンパクトシティの形成を図る。厚生年金福祉 施設サンピアあいらの跡地を利用し,病院の 建て替えを行う。それに伴い,介護,予防, 教育,住まい,交流スペースなど機能を一体 的に整備したJOYタウン構想では,住み慣 れた地域で多職種・多世代,住民同士が互い に支え合いながらその人らしく暮らせる環境 「ヒューマンライフライン」の構築を目指す。 「社会保険」「民間事業」「ボランティア」といっ た制度の垣根を超え,「ひとがひとを支える 仕組み」を「ひとつ」につなぐワンストップ 窓口をつくり,わかりやすく親しみやすい生 活サポートを実現。 「世代を超えたつながり」「多様な人・団体の つながり」「地域や産業を超えたつながり」 に着目し垣根を超えた取り組みを進め,「自 分らしいライフスタイルを選択し,自己実現 できるまち」を目指す。 千葉県 新潟県 静岡県 鹿児島県 「福祉の街」として子育て支援から高齢者福 祉まで「未来の見える街づくり」を目指す。 学童とグループホームの幼老複合施設や,ダ イバーショナルセラピーといった多世代交流 の場も設置している。 NO.13 南魚沼市NO.19 南伊豆町 NO.40 姶良市 姶良市のコンパクトシティ化ヒューマンライフラインの構築新たな交流や価値を生み出す取組福祉の街 グローバル・コミュニティ アクティブシニアお試し移住プロジェクト NO.41 佐倉市 地理・人口:B平均的な地域 解決策:③拠点型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会 推進主体:医療法人玉昌会 基本理念:病院の建て替えと併せた一体的な整備によるC CRCの実現可能性の検討と,地域包括ケアシ ステムを基盤とした「コンパクトシティ姶良」 の構築をし,災害時の対応も想定した拠点づく りを目指す。 地理・人口:A高齢化,過疎地域 解決策:①多機能ネットワーク型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会 推進主体:南魚沼市,国際大学,知多座と大学保健衛生専 門学院,市内外企業,金融機関,市内関係者等 基本理念:国際大学との連携を核とした国際文化あふれる 「グローバル・コミュニティ」の形成を目指す。 また,移住希望の高齢者への住み替え支援によ り,地方移住の促進を目指す。 地理・人口:C地方都市 解決策:④拡充期型 認識する課題:人口減少 推進主体:山万株式会社 基本理念:ユーカリが丘の開発を手掛けている山万株式会社 が主体となり,文化の発信,安心・安全の街づく り,少子高齢化対策,環境共生への取組,高度通 信技術の導入という5つのコンセプトに沿って街 づくりを推進する。 地理・人口:A高齢化,過疎地域 解決策:②ネットワーク型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会,福祉環境 推進主体:南伊豆町,杉並区 基本理念:自治体連携により,アクティブシニアお試し移 住プロジェクトの実施とともに,都市部と地方 が互いに強みや魅力を活かし課題を補完しあう ことで,地域の持続性を高め,将来的に安定な 人口構造の維持を目指す。 基本情報基本情報 基本情報基本情報 ヒューマン ライフライン 家事 保育 若者 高齢者 子ども 子育て 世代 市民 ゆかりの 来訪者 著名人 転出者農業 商業・サー 工業 ビス業 観光 業等 医療 JOY タウン 教育 介護学び 観光 予防 教育 介護 医療 住まい 災害時 対応 見守り習い事 ボラン ティア ランニング フィット ネス こども お年 寄り 公共 交通 サー クル 温浴 岩盤浴 子育て 仲間ができる      様々な過ごし方      時間ができる        様々な支え合い 多世代 →新たな発想 多様な人・団体 →新たな交流 多様な産業 →新たな価値や循環 旧来から佐倉に根付く 歴史・自然・文化 新たなモノ・イベント ライフスタイルの創造 首都圏・都市部 移住交流総合窓口 ふるさと回帰 センター 移住・交流情 報センター 生涯活躍のまち移 住促進センター 杉並区役所 移住コンシェルジュが住 まいや仕事,子育て環境 等について支援・紹介 東京での窓口として移 住・お試し移住を紹介 ・空き家バンク事業 ・リフォーム等助成事業 ・不用品,リユース事業 ・移住促進住宅の検討 住まいの紹介 仕事の 支援 子育て環境 の紹介 シーズンステイ (1 週間から数か月) 物産展,アンテナショップ による魅力の発信 ワープステイ (最長5 年) 本格移住 高齢者向けの仕事や活躍の場を設け,生涯健康で元気に暮らせる地域社会を創出することで, 後期高齢者の転出を抑える。同時に,若者世代の雇用機会の創出につながる。 国際大学を核とし,グローバルコミュニティの形成を目指す。地域資源である自然や文化, また多国籍の文化の交流を通じて多世代,異文化交流の場づくりを行う。また,住宅と福祉 の整備を行うことで移住促進につなげ,若者の魅力ある雇用の創出を目指す。 ・雪を楽しむ ・登山,トレッキング ・まつり ・地酒,山菜,漬物など ・留学生家族寮 ・英語サロン ・公開講座 ・英語保育園 ・多国籍レストラン・移住者向け住宅 ・シニア向け住宅 ・お試し居住 地域資源の活用グローバルコミュニティ ・特別養護老人ホーム ・ケアハウス ・グループホーム ・介護老人保健施設 ナーシングケア ・子育て支援センター ・認可保育所 ・駅前保育所 子育て環境 ・リタイアメント ハウス ・有料老人ホーム リタイアメント ・ゴルフコース ・テニスコート ・ショッピング マーケット ・アスレチック コース アクティブ ・在宅支援センター ・デイサービス ・高齢者福祉生活センター ・図書館 ・園芸セラピー インキュベーションセンター 若者の魅力ある雇用の創出 移住促進 ・介護施設,診療所の整備 ・健康,活動マイレージの導入 ケア 図5 参考取り組み・構想事例 +障碍者福祉  学童 − 177 − 10/10 教育・住まい・災害時の対応を想定した拠点づくり」: 拠点をつくり,公共交通を核としたコンパクトシティ の形成を目指す。また制度の垣根を超えてひととひと が支えあうヒューマンライフラインを構築し,住み慣 れた地域でその人らしく暮らせる環境をつくる。 ④拡充期型ー佐倉市(C,人口減少):ニュータウンと 福祉の街の形成による,自分らしいライフスタイルを 選択し,自己実現できるまちを目指している。 6.まとめ   総合戦略を最初期に掲げ先行的なモデルとなった都 市・自治体の計画を対象にテキスト分析によって認識 している課題と解決策(活用地域資源,支援方法)と 自治体の地理・人口条件を整理した。  いずれの自治体も人口減少を課題と認識し,かつ雇 用機会を課題と認識する群に該当する自治体が最も多 く,地域での生業が人口減少への対策にもなるという 関係での課題認識を推察できた。解決策における[活 用地域資源]と[支援方法]の組み合わせ整理では, 最も包括的な策が言及された①多機能ネットワーク型 から,現役世代までにフォーカスする②ネットワーク 型,民間生活利便施設を活用する③拠点型,具体的な 支援策の記述が比較的少ない④拡充期型に分類した。  各自治体の地理的条件と認識している課題と解決策 の関係では,地理・人口Ⅰ高齢化・過疎化と課題が複 合的である[少子高齢化],Ⅲ人口密度が高いと[人口 減少]には対応関係がある。人口減少率が高く,人口 密度が低く,高齢化率が高い場合に課題認識が最も複 層的で具体的な[少子高齢化複合]の割合が高い。地理・ 人口条件による課題と解決策には関連性があり,高齢 化・過疎化が進行した自治体では①多機能ネットワー ク型,人口密度が高い自治体では④拡充期型,③拠点 型は人口密度の低い地域で該当割合が高い。人口減少 が主たる課題である地域では予防的段階の計画と言え る。一方[少子高齢化複合]には,解決策にバラツキ があり,課題が整理されていても必ずしも解決策が複 合的に立案されていない。地理・人口条件と認識して いる課題の組み合わせに対して,解決策が対応してい るかを確認すると,Ⅰ高齢化・過疎地域で認識してい る課題および解決策の類型が分散しており,客観的指 標では課題が多いと推察される地域でも認識している 課題やその解決策の複合化に差異がある。  解決策のパッケージがどの地理的条件の自治体でも 適応される関係にはなく,また自治体が置かれた状況 が類似していると思われる場合でも,各自治体におい て選択的に計画が組み立てられている。言い換えれば, どこにでも応用可能な解決策パッケージのような構想 とはなっていない。モデル化においては,「認識してい る課題と解決策」ではなく,「地理的条件と解決策」の 関係に基づくとより構想しやすいと想定できる。逆に, 課題認識の整理ガイドラインの必要性も示唆される。 謝辞  本稿は,第二著者・宮崎文夏氏の修士論文としてまと められた研究成果に,第一著者が大幅な加筆修正を 行って発表するものです。なお本研究は,科学研究費 補助金(基盤B)「「利用縁」がつなぐ福祉起点型共生 コミュニティの拠点のあり方に関する包括的研究(研 究代表者:山田あすか)」の一環として行われました。 注釈 注1)「まち・ひと・しごと総合戦略」は,平成26(2014)年7月18 日閣僚懇談会 での総理による「まち・ひと・しごと創生本部」設置指示を受けて平成26 年9月 3日に本部が設置(閣議決定)され,審議を経て,平成27(2015) 年度中に、地 方自治体において、中長期を見通した「地方人口ビジョン」と5か年の「地方版総 合戦略」を策定することとなったもの。第一期として,成果指標を2020 年とする 総合戦略(2015 〜2019 年度の5か年)が立案された。 注2)まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」では,以下 の理念を掲げている。 人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となっ て取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生 することを目指す。人口減少を克服し、将来にわたって成長力を確保し、「活力 ある日本社会」を維持するための政策として,以下6つの目標を置く。 [基本目標]  *【】は筆者による要約キーワード  1)【就労/経済】稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする  2)【関係人口・交流人口】地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流 れをつくる」  3)【少子化】結婚・出産・子育ての希望をかなえる  4)【地域継続居住】ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域を つくる」  [横断的な目標]  5)【人材活用(生産年齢人口減への対応)】多様な人材の活躍を推進する  6)【社会の変化への対応】新しい時代の流れを力にする

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押尾萌加,他:既存施設の介護医療院への転換期における高齢期の住まい整備の地域差に関する研究

2020-12-15 13:35:23 | 書架(高齢者関係)

押尾萌加,山田あすか: 既存施設の介護医療院への転換期における高齢期の住まい整備の地域差に関する研究 日本建築学会 地域施設計画研究, Vol.37, 2019.07 

の論文に,少し手を入れて別体裁にしたものです。

 

そもそも地域によって高齢者の生活の場となる施設(特養,老健,有料,サ付き,GH,療養病床,有床診療所・一般病院)の人口あたりベッド数が異なる。

そのなかで,介護医療院への既存施設の転換が進んでいるが,どの施設種別からの(もともとの整備基準が異なる)転換か,という実態も異なる。

「介護医療院」という一つの事業形態への転換であるが,転換の方法や転換元の施設,および介護医療院の施設内部の生活の場としての実態も地域による差異が大きい状態で整備されていっている。つまり将来的に,一言で介護医療院が全国的に増加したと言っても,その実態は地域によって大きく異なる状況が固定化していると予期できる。

・・というような内容です。

 

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看護小規模多機能型居宅介護事業所利用者の訪問看護利用実態と住まい方についての研究

2020-07-16 17:07:27 | 書架(高齢者関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究38 20207月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.38, Jul., 2020

 

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移住による高齢期の住まい施設における立地特性と空間構成に関する研究

2020-07-16 16:37:42 | 書架(高齢者関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究38 20207月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.38, Jul., 2020

 

 

 

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(記事紹介)日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代

2019-08-28 09:52:37 | 書架(高齢者関係)

『日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代』

Yahoo!ニュース『日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代』〈https://news.yahoo.co.jp/feature/565?utm_source=news.yahoo.co.jp&utm_medium=yahoo&utm_campaign=163260〉(参照 2019.8.27)

 

 団塊世代が75歳以上の後期高齢者に達する2025年に、認知症の人が最大730万人にのぼると厚生労働省が発表している。軽度認知障害と合わせると総数は1300万人に達する。

 

・「認知症社会」で顕在化する問題

 認知症社会となることで顕在化する問題として、例えば、高齢ドライバーの問題がある。認知症の人が被害者ではなく、加害者になる側面が大きくなる。免許証の自主返納制度を推し進めているが、地方では鉄道やバスの路線廃止によって、高齢ドライバーが運転を止められない背景も浮かんでくる。

 さらに、「認知症社会」は、救急医療の現場にも影響を及ぼす。2025年、救急搬送の3~4人に1人が認知症の疑いがある人になると予測されている。現状でもすでに救急医療は逼迫しているが、それがさらに悪化し救急医療を崩壊させてしまうのではという懸念も強まっている。加えて、認知症の人を受け入れる施設の不足も深刻になり、特別養護老人ホームへ入所を望みながらも叶わない人は62万人に達するとみられる。また、介護人材も38万人足りなくなると推測されている。

 

・「認知症社会」への各所での対策

 対策として注目されているのが、軽度認知障害の人にアプローチすることである。最新の研究では具体的な手立ても明らかになり、愛知県大府市で取り入れられている。その結果、注意力や処理能力などの認知機能が回復するなどエビデンスも数多く出ており、早期対応の効果が認められている。

 しかし、早期対応の必要性はわかっていても、認知症の疑いがあることを認めたがらない傾向があり、検査に踏み切れない人がいる。それを解消するため、埼玉県幸手市では、認知機能の検査を受けるよう呼びかけるのではなく、普段から高齢者が集まる公共施設などを探し、医師や看護師が出向き会話することをきっかけに健康相談を行うことで、早期対応へと結びつけるという取り組みを行っている。さらに同市ではお年寄り同士が集まることができ、会話の糸口から自然に相談できる場を作るプロジェクトも行っており、的を絞らずみんな丸ごと面倒を見るという方法が対策の参考になると評価されている。

 企業でも、「認知症社会」を見据え、商品やサービスのあり方を「認知症社会」を前提としたものに転換すべきという考え方が出てきている。ヘルスケアや介護といった従来のジャンルにとらわれない企業の対応が「認知症社会」を支える上で重要な役割を持つといえる。

 

 

・要約元記事

Yahoo!ニュース『日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代』https://news.yahoo.co.jp/feature/565?utm_source=news.yahoo.co.jp&utm_medium=yahoo&utm_campaign=163260〉(参照 2019.8.27)

(本記事はゼミで行った要約練習です。)

 

(押尾萌加)

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古川亮,山田あすか:エンド・オブ・ライフケアを含む日常生活介護の場のしつらえに関する研究 ─ 有料老人ホーム A におけるケーススタディー ,地域施設計画研究2018

2018-08-25 15:45:10 | 書架(高齢者関係)

 

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八角隆介,山田あすか,古賀誉章,横手義洋:団地改修・分散型サービス付き高齢者向け住宅の運営と利用者の生活実態についての事例的研究

2017-08-01 13:33:03 | 書架(高齢者関係)

日本建築学会「地域施設計画研究 34」,2016.05 掲載

 

 

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コミュニティ・カフェにおける「開かれ」に関する考察

2016-04-21 13:21:03 | 書架(高齢者関係)

コミュニティ・カフェにおける「開かれ」に関する考察

                                                               主(あるじ)の発言の分析をして    

日本建築学会計画系論文集 第614号,113-120,

2007年4月

田中康裕 鈴木毅 松原茂樹 奥俊信 木田道宏

1調査の背景と目的

  近年、高齢者のケアや子供の居場所づくり、商店街の活性化などがきっかけとなり、「コミュニティカフェ」(以下CCafeと表記)と呼ばれる場所が各地に開設されている。CCafeでは誰もが訪れる事ができる場所、気軽に立ち寄れる場所を実現し、他者との社会的接触の機会を提供する目的がある。CCafeがあらかじめ親しい関係にある人同士で過ごすだけの場所ではなく、その「外部」の人に対しても「開かれ」ているのは、CCafeがどのような特徴をもつからなのか。CCafeの「開かれ」を考察し、明らかにする。

 

2調査概要

  CCafeの運営には中心的な役割を担っている人物がいる。このような人物を主(あるじ)とする。主には自身が運営するCCafeについてなるべく自由に語ってもらうため、オープンエンドなインタビューを中心とする調査を行った。インタビュー実施期間は2005年1月から2006年10月である。

 

3調査結果

  CCafeには運営に継続的に携わっている主が存在し、その主がCCafe内外で築いている関係とそのつながりが、その場所の「開かれ」の要因になっていることが明らかになった。しかしこれは主との関係を拒絶する人にとってはそのCCafeは十分に「開かれ」ていないことになる。つまり1つのCCafeが実質的にあらゆる人々に対して「開かれ」ることはないと言える。今回は主に対するインタビューを研究方法の中心としたので、ボランティアや来訪者など主以外の観点からCCafeを考察することが今後の課題となる。

 

4まとめ

  CCafeでは主がおり、その主を中心に関係が広がっている。すでに築かれている関係に新たに外部の人間が馴染むことは時間がかかり難しいのではないかと考えた。また人間関係には相手との相性があり、それが合わないと関係が良くなるのは困難である。主との相性が合わないことでCCafeを利用しない人がいるのではないかと考えられる。利用者が通いたいCCafeを選択できるように、CCafeを展開していくべきである。

 

(齋藤)

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(論文レビュー)高齢者と地域を結び付ける「縁側サービス」の効果

2016-04-14 13:38:35 | 書架(高齢者関係)

高齢者と地域を結び付ける「縁側サービス」の効果

―福祉系NPO法人によるコミュニティ・レストランを事例としてー

                              日本建築学会計画系論文集 第77巻,第680号,2399-2406, 2012年10月

 片山めぐみ 隼田尚彦 福田菜々

1調査の背景と目的

 昨今では、高齢化の進んだ町内会の空洞化や老人クラブの疲弊などによって、独居老人の孤立化や無縁化、ひいては行方不明が大きな問題となっている。本研究では高齢者の孤立化防止を目的とする非営利交流拠点の運営主体の傾向を北海道を例に把握する。また福祉系NPO法人が運営するコミュニティ・レストランを事例とし、高齢者の利用及び地域住民との交流の実態に注目して「縁側サービス」の効果を明らかにする。

 

2調査概要

 北海道における高齢者の孤立化防止を目的とする地域の交流拠点の現状について把握するため、道内の市町村および札幌市の区189団体へアンケート調査を行った。(有効回答数127、回収率68%) 次に福祉法人による「縁側サービス」の事例調査として、釧路市のNPO法人「わたぼうしの家」による「地域食堂」(グループホームの一部を利用し週1回で開催)の高齢利用者およびボランティアスタッフを対象にヒアリング調査を行った。(66名)

 

3調査結果

 北海道内で運営されている高齢者の孤立化防止を目的とする地域の交流拠点の総数は749件あった。 交流拠点の運営および地域におけるケアシステム、高齢者ボランティアを組織する運営主体で最も多かったのが福祉法人であった。ヒアリング調査では次のことが分かった。地域食堂でかかる費用は利用者負担(食事代300円)とグループホームの収益還元でまかなわれていた。地域食堂では交流の楽しさを他の人に伝えたいという思いから、参加者からボランティアになった人もいる。その高齢者ボランティアの影響力は大きく、運営に欠かせない存在となっている。また地元新聞やテレビで取り上げられることで徐々に存在が認知され、今では子供連れの若い女性や、サラリーマン、OLなども訪れるようになり、利用者の属性が多様になってきた。

 

4まとめ

 在宅高齢者は「縁側サービス」を利用することで元気なうちから福祉施設のスタッフや地域住民と関係を築くができる。また「縁側サービス」にボランティアとしてかかわるうちに体が弱くなり、グループリビングに移り住んだ人もいる。「縁側サービス」には法人の中核サービスである高齢者施設へ移り住む際にスムーズな環境移行が可能になるメリットがある。高齢者と福祉施設をつなげる役割として「縁側サービス」は重要であると感じた。

 

(齋藤)

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井上由起子:地域包括ケアシステムにおける高齢者の住まいの考え方

2014-04-24 15:59:36 | 書架(高齢者関係)

 

地域包括ケアシステムにおける高齢者の住まいの考え方

保健医療科学 2012 Vol.61 No.2 p.119-124

井上由起子

 

 

1.はじめに

我が国の高齢者ケアは地域包括ケアシステムの構築に向けて歩みを進めている。包括ケアシステムとは住まいになりうる住環境とサービスを保障することが基本であり,具体的にはニーズにあった住居の選択,必要なサービスが過不足なくあること,そして住居への愛着を高めるような仕掛けを用意すること,である。

 

2.高齢者の住まいの全体像

高齢者の住まいは自宅,住宅系サービス,施設系サービスにわかれる。住宅系サービスは軽中度者,施設系サービスは中重度者を対象とする。

 

3.住まいと介護・看護・医療・生活支援サービス

今日では外付けサービスと内付けサービスとを組み合わせサービス提供がなされている。結果的にはこれらが地域包括ケアにつながっていくわけだがそれに関する主題課題としては,一つは医療と介護のintegrated careに関するものである。また医療と介護といったフォーマルケアと生活支援サービスに代表されるインフォーマルケアの関係整理があげられる。

 

4.サービス付き高齢者向け住宅における課題

サービス付き高齢者住宅における課題としては,第一にサービス付帯に関するものである。サ付きの入居者のような軽度者に対しての24時間職員配置の生活支援サービスや特定施設のようなケアとハードがふさわしいのかということである。

第二に費用負担に関するものである。厚生年金層であってもフローのみで対応することは難しい。またそれ以上に支払い能力に乏しい層についても対応を考える必要がある。

第三には,行政コントロールに関するものがあげられる。

 

5.ステイモデルと地域包括ケアシステム

サービス拠点と住宅系サービスの配置計画をどのように解くか,そこにフォーマルケアで担えない機能をどう組み合わせるのか,等の課題はあるが住居とケアの固定的関係は解消され,転居モデルから継続モデルへの転換が生じる。サービスを個人に付けることによって,幅広い利用者に対応し,転居回数を抑えようとするのが継続移住モデルである。そしてケアシステムとして目指されているのは,自宅での継続居住ではなく,地域での継続居住である。

 

小林千紗奈

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黒木宏一:「家具配置による簡易なグループホーム環境改善に向けた研究」

2014-04-09 14:50:49 | 書架(高齢者関係)

「家具配置による簡易なグループホーム環境改善に向けた研究」
黒木宏一(新潟工科大)
日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道) 2013年 8月 p,531~532


1、研究の背景と目的
これまで建設されてきた新築型GH の多くは、一体的な共用空間と個室群で構成される単調な空間構成によるものが一般的であり、豊かな施設環境を有しているとは言いがたい。 本研究は、このような特徴を有する新築型に対して、家具配置といった簡易な方法でGH の環境を改善するための指針を得ることを目的とする。

2、調査概要と研究方法
48件の施設より平面図の収集、GH の運営体制や入居者属性を把握するアンケート調査を実施。また4事例より9:00 ~17:00 間の観察調査を実施した。家具配置のパターンはLD分節型とD単独型に分類される。まず、L、D が分節化されることと、リビングを複数設け、さらに分散させることで入居者の居場所が多様化している。一方、少人数でしか過ごすことのできないダイニング構成の場合は、利用がされにくく居場所が限定されてしまう。次に、座席が固定されやすいダイニングとは別に、活動に応じて居合わせ方が変化するリビングを適切に設けることで、会話や笑顔の増加に繋がる。

3、まとめ
一般的な新築型のような単調な空間構成であっても、家具配置によって入居者の過ごし方は大きく異なる。L.Dを明確に分節化すること、多様なリビングを分散配置することや、主体的な行動を誘発させる家具配置によって、より豊かな環境へと改善することができる。

 

(中山)

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石井敏:ユニット型特別養護老人ホームの夜勤介護における行為と空間滞在の分析

2014-04-09 11:28:13 | 書架(高齢者関係)

ユニット型特別養護老人ホームの夜勤介護における行為と空間滞在の分析

日本建築学会計画系論文集 第75巻 第656号,2315-2324,2010年10月

著者:石井敏

 

1.研究の背景

1.1ユニット型施設における夜勤介護

夜間帯はおおよそ20名に対して一人のスタッフで対応することのなり,各スタッフは自らが日中所属・担当するユニット以外も含めて担当することになる。

1.2夜勤時の介護拠点

ユニット型の場合全体でのスタッフステーション設置は義務付けられていない。その背景には,スタッフは各ユニットで利用者とともに時間と空間を共用することが重要であると

考えられるに至ったためである。

1.3夜勤時の介護業務

日勤帯の介護スタッフの業務内容用については既住研究によって明らかになっているが夜間介護の実態については建築系においてもまた介護系の領域においてもその実態はほとんど明らかになっていない。

 

2.研究の目的

本研究ではユニット型の介護施設における夜間時の介護や空間移動や空間滞在の実態を明らかにすることで,夜間帯の介護を想定した適切なユニットの配置,空間計画を行うための基礎的知見を得ることを目的とする。

 

3.調査対象施設と調査の方法

本研究では4つの施設を対象に行った。

・ユニット型の特別養護老人ホーム3施設

・空間はユニット型だが,居室は多床室であり,運営は従来型と同様の形態で行われている1施設

 

4.まとめ

おおよそ2~3割を占める排せつ介助,2~3割を占める記録などの直接事務など,夜勤時の業務の実態が起きらかになった。空間滞在については,居室での滞在が3~5割を占める実態,ケアの拠点となるステーションがない施設ではユニット内のリビングが夜勤時の拠点となる実態が明らかとなった。複数ユニットを1名で担当する夜勤時のスタッフ配置および業務の特性からはユニットリビング滞在型の施設では,片方のユニットに大きく滞在が偏る傾向があること,スタッフステーションを持つ施設では,そこを拠点としてユニット間で差異なくスタッフが滞在・訪問している実態も明らかになった。

(小林千紗奈)

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橘 弘志:小規模生活単位型高齢者移住施設における滞在場所の多様性に関する考察

2014-04-03 16:27:03 | 書架(高齢者関係)

小規模生活単位型高齢者移住施設における滞在場所の多様性に関する考察

日本建築学会計画系論文集 第78巻 第687号p.979-987.2013年5月

橘 弘志

 

  1. はじめに

今日ではユニット型施設を対象とした研究は多く行われさまざまな知見が得られている。しかし今後入居者の重度化がますます進行することが予測され,生活が単調になりやすいなどの問題がありそのような状況にユニット型施設がどう対応していくのかが重要な課題となっている。そのことをふまえ,本研究では生活ユニットのつくりと入居者の生活との関わりを分析することにより,今後ますます重度化する入居者の生活の質を高めるための空間の在り方について知見を得ようとするものである。

 

  2.調査概要

調査対象

A施設:平屋建てのユニット型特養(既住の建築的知見を活かして設計された比較的新しい事例)

B施設:ユニットケアにモデル施設となった特養(ユニット型特養の制度化以前からいち早く取り組んできた先駆的事例)

C施設:2ユニットからなるGH(小規模ながら多様な空間構成を有するGH)

調査は,平日の7時~19時の間,15分おきに各入居者およびスタッフの滞在場所をプロットし,それぞれの行為の様子を記入した。

 

  3.調査結果・まとめ

(1)3施設における空間の滞在様態の違い

 A施設

共用空間における滞在場所の数が最も少なく,軽度入居者では複数の場所で多様な行為が見られたが,重度入居者にとってはリビングに滞在場所が限定されるなど,質的にも選択肢が乏しい状況なっている。

B施設

軽度・重度ともにユニット内外に複数の滞在場所が形成されていた。

C施設

最も共用空間での滞在が長く,滞在場所の量・質ともに充実していた。

 

(2)滞在様態が入級者の生活へ及ぼす影響

A施設

重度化ととみ生活が画一化・単調化する傾向がみられた。

B施設

重度化するにつれ単調になる傾向はあるが,共用空間を中心とした生活となっており,滞在場所において他の入居者との接点は維持されていた。

C施設

軽度から重度にいたるまで在室率や移動回数などにばらつきが大きく,生活の個別性が認められた。

 

(3)多様な居方を促す場所

各施設の居方の場面を抽質した結果,ユニット内のメインの共同生活室だけに生活が集中するのではなく,メイン以外の場所や周辺的参加を促す場所,メインの場所の分節化,多様なコントロール可能な仕組み,ユニット外への生活の広がりなどによって,より多様な居方の場面をもたらしうることを指摘した。

 

(4)滞在場所の選択性と環境の許容性

選択性のある環境は,軽度から重度まで幅広い人を受け入れることのできる許容性の高い環境と言える。それは属性の異なる多様な人同士の共存を可能にし,特定の人同士に限られないより幅広い社会的関わりをもたらしうると考えられる。

 

 

(小林千紗奈)

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