都市における児童に居場所づくりの多様化と安全安心
-豊かな空間確保 両立についての考察
-こども達の放課後の居場所づくりに関する研究-
斎尾直子、長谷夏哉
日本建築学会計画系論文集 第614号,33-39,2007年4月
1. 研究背景と目的
こどもたちの居場所造りに関する研究の一環として、主に近年、都市部において模索されている「放課後の居場所づくり」の動向と実態を分析したうえで、安心安全と豊かな空間確保、両者の両立の可能性という視点から研究を進める。
研究対象は、まだ充分な保育も必要とする小学校1-3年生の低学年児童のための「放課後の居場所づくり」に絞り、その計画課題と今後の方向性を求めることを目的としている。
2. 研究方法と調査概要
A・学童保育、小学校に併設、
B・学童保育、複数の小学校を対象、商店街空き店舗を利用
C・全児童、小学校に併設
D・学童保育、複数の小学校を対象、都市農村隣接型なため広大な屋外空間を確保
の4事例を対象に保護者へのアンケート調査、児童の空間活用観察調査
3. 安心安全な空間と豊かな空間との両立の可能性
児童の自主性を重んじた活動を重視し、豊かで多様な空間の提供と安全重視の見張り・管理ではなく自然な見守り体制が理想である。
しかし現状としては、防犯・けがや事故の危険を回避、安全と安心を確保するため児童人数当たりのスタッフを増やそうとしているが、スタッフ数確保が難しい状況であり安全を重視するあまり複数空間の利用をさせずに空間に制限を掛けてしまい児童が自主的に空間選択できない状況である。
保護者のアンケートによると、安全安心の強化と、空間を最大限活用した活動展開との両立を望んでいるが、「こどもの自主性の尊重・問題解決能力向上」に関しては保護者個人差あり、「周囲地域との連携」に関しては、地域差がある。
4. まとめ
近年児童をとりまく社会背景から、放課後の居場所づくりが急務となっている。空間活用の限界がある状況下においては、地域特性と地域人材を最大限に活用した空間活用・運営の工夫が今後の重要な計画要件となる。
各地域においても、地域住民のサポートを得ながら居場所のスタッフ数を増やすなどの方法が、けがなどの危険性防止や充実した活動展開の側面からも模索されている。今後も見守り体制が手厚い居場所づくりは増えていくと考察される。
「安心安全」、特に防犯という側面からは、今後も増加傾向にある留守宅児にとっては、居場所で過ごすことは非常に有効な手段となっている。しかし学校敷地内の居場所の場合、子供たちを1日中敷地内に閉じ込め、活動範囲を制限する結果となっている。
5. 感想
子ども時の体験によって感受性が磨かれていくのだと思っているので、居場所を限定してしまうのはもったいないと思うと同時に、安心安全と豊かな空間の両立は非常に難しい問題であると思った。
(鈴木志歩)
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