集団規模からみた学童保育の実態と課題―京都市を事例として―
塚田由佳里、小伊藤亜希子
平成18年度 日本建築学会近畿支部研究報告集
1.背景と目的
学童保育所の入所児童数は増加の一途をたどっているが、施設の量的不足のなかで待機児童を解消するべく定員を超えた受け入れをすることで過密化が問題となっている。利用実態から子どもへの影響を分析することで、大規模化・過密化による問題点を整理し、施設設備における問題点を探ることを目的とする。
2.調査方法
学童保育事業117件にアンケート調査(有効回答数34)、ヒアリング調査(5施設)、登録児童数が異なる2施設を観察調査
3.まとめ
京都市の学童保育クラブ事業では、半数近く定員を超えて児童を受け入れている。
大規模化による影響は、
子どもの生活と活動 |
遊びが制限される、子どもたちに落ち着きがない、活動を開始するのに時間がかかる |
子ども同士の関係 |
遊び仲間が固定化され希薄になりやすい |
職員指導の業務・役割 |
管理的場面が多くなる、集積確認・子どもの出入りの把握が難しい、全員参加の遊びが企画しにくい、子ども一人ひとりに寄り添う事が難しい |
親同士の関係 |
父母会活動が役員任せになる、父母同士の関わりが持ちにくい |
過密化による影響は、
子どもの生活と活動 |
遊びが制限される、子どもたちに落ち着きがない、ほっと休む時間が無い |
子ども同士の関係 |
ささいなことでトラブルが起こりやすい |
また、定員を超える児童の受け入れ保育をしようとする場合は、規模により傾向がみられ、
60人規模では保育体制による工夫、80人超える規模では改修や分室・新たな拠点の確保しようという動きがみられた。
4.感想
大規模化・過密化による子どもへの影響は大きく、活動を制限されてしまったり管理的になってしまい、家庭の代わりの生活の場として自由に過ごせる環境として機能していないことが分かった。この結果からみて、待機児童を解消するために定員を超えた受けても、親が安心して仕事のできるための子どもの施設という役割が果たせなくなってしまっていることは本末転倒だと感じ、学童保育の計画には十分なスペースの確保が必要なのだと感じた。
(鈴木志歩)
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