前回、農林水産省のラベル登場の記事で、プラネタリーバウンダリーのことを少々書きました。
これは何か?というと、日本訳は「地球の限界」.
こちらはストックホルム・レジリエンスセンター長が考えたもの。
これは地球のことを9つの項目に分けて考えています。
当のストックホルム・レジリエンス・センターでは、2023年の評価分が出ていました。
Stockholm Resilience Centre HP
The evolution of the planetary boundaries framework
Azote for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University. Based on Richardson et al. 2023, Steffen et al. 2015, and Rockström et al. 2009 CC BY-NC-ND 3.0
どんどん進んでいます。
9つの領域のうち、もう、6つが限界を通過しています。
こうした境界は、この2023年版で9つともぜんぶ明らかにしたそうです。
9つ、私の翻訳した感じ
・新規化学物質(マイクロプラスチック、農薬、核廃棄物など)
・成層圏オゾン層
・大気中のエアロゾルの負荷
・海洋酸性化
・生物地球科学的な流れ(循環)
・淡水の変化(グリーンウォーター(農場や森林などの土壌や植物に保持されている目に見えない水)とブルーウォーター(川や湖などの目に見える水)))
・土地利用変化
・生物圏の正常性
・気候変動(CO2濃度・放射強制力)
私のメモ用に作ってみたもの↓
2023年版では、オゾン層や大気以外、すでに限界に近づいています。
このうちで、オゾンは昔から対策が取られているので限界を通過する恐れはないということですが、それ以外は、もう、限界を越えている状態です。
グリーンウォーター(農場や森林などの土壌や植物に保持されている目に見えない水)とブルーウォーター(川や湖などの目に見える水)。
これも雨の多い日本ではあんまり聞こえない考え方ですが、我々も日常使っている水のことです。それも限度があるものです。
窒素、リンの使用も限界を越え。
その他も繰り返しになりますが、越えています。
窒素とリンの限界値越えについては、こちらのHPで詳しい話が書かれていました。
国立環境研究所 地球環境研究センター HP
地球の限界 "プラネタリーバウンダリー" & 循環型社会~世界と日本の取り組みからみんなでできることを考える~ | 地球環境研究センターニュース
窒素とリンが限界を越えていると、貧酸素水塊が出来て余計に温暖化が進むこと、富栄養化、生物多様性にも影響を与えること、干潟があれば良いのに潰してリンや窒素が濃いままで流れること、そういう開発や、弱腰の弱気な対策がされ、バランスが崩れているのが日本の海であることなどが書かれておりまして、とても参考になりました。
こちらの環境省でも、書かれていました。
第1章 気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向 より 抜粋 引用
「この研究によれば、地球の変化に関する各項目について、人間が安全に活動できる範囲内にとどまれば人間社会は発展し繁栄できるが、境界を越えることがあれば、人間が依存する自然資源に対して回復不可能な変化が引き起こされるとされています。
2015年と2022年の研究結果を比べると、種の絶滅の速度と窒素・リンの循環に加え、新たに気候変動と土地利用変化、新規化学物質が不確実性の領域を超えて高リスクの領域にあるとされました」
「水、食料、ヘルスケア、住居、エネルギー、教育へのアクセスなど、人間にとって不可欠な社会的ニーズに関する最低限の基準の充足度を示した社会の境界(ソーシャル・バウンダリー)を加えた研究があり、人間の経済の「安全な活動空間」を定義しています。ドーナツ型の図(図1-1-2)」
ということで、この領域の境界内に戻ることが必要だと言われています。
なら、どうしたらいいのか?というと、この環境白書に書かれています。
長いですが、引用します。(赤字は私が勝手に入れました)
「2 持続可能な社会の姿
人間活動が「ドーナツ内での生活」に収まるような持続可能な経済社会となるためには、環境・経済・社会の統合的向上を進めることが重要です。
我が国が直面する数々の社会課題に対し、炭素中立(カーボンニュートラル)・循環経済(サーキュラーエコノミー)・自然再興(ネイチャーポジティブ)の同時達成を実現させることが必要です。」
経済、社会、政治、技術すべてにおける横断的な社会変革は、生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せる「自然再興」に必要であり、循環経済の推進によって資源循環が進めば、製品等のライフサイクル全体における温室効果ガスの低減につながり炭素中立に資するなど、相互の連携が大変有効であると言えます。
我が国全体を持続可能な社会に変革していくにあたり、各地域がその特性を生かした強みを発揮しながら、地域同士が支え合う自立・分散型の社会を形成していくことで、我が国全体を持続可能な社会に変えていく必要があります。
そして、そこで暮らす一人一人のライフスタイルが持続可能な形に変革されていくとともに豊かさを感じながら活き活きと暮らし、地域が自立し誇りを持ちながらも、他の地域と有機的につながる地域のSDGs(ローカルSDGs)を実現することにより、国土の隅々まで活性化された未来社会が作られていくことが重要です。
第五次環境基本計画には、物質的豊かさの追求に重きを置くこれまでの考え方、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式を見直し、豊かな恵みをもたらす一方で、時として荒々しい脅威となる自然と対立するのではなく、自然に対する畏敬の念を持ち、自然に順応し、自然と共生する知恵や自然観を培ってきた伝統も踏まえ、情報通信技術(ICT)等の科学技術も最大限に活用しながら、経済成長を続けつつ、環境への負荷を最小限にとどめ、健全な物質・生命の「循環」を実現するとともに、健全な生態系を維持・回復し、自然と人間との「共生」や地域間の「共生」を図り、これらの取組を含め「脱炭素」をも実現する循環共生型の社会(環境・生命文明社会)を目指すことが重要であるとしています。
さらに、現状を鑑みると、大量生産・大量消費・大量廃棄型ではなく、森林、土壌、水、大気、生物資源等、自然によって形成される資本(ストック)である自然資本をはじめとするストックの水準の向上と、地上に存在する使用済の地下資源や再生産可能な資源、つまり地上資源の活用促進を通じて、健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域にわたって保全され、将来世代にも継承できることが重要です。その上で、国民一人一人が明日に希望を持てる社会が、私たちの目指すべき持続可能な社会の姿であると言えます」
どんどんソーラーパネル置こう、と電気だけ変えたって、問題解決ではないのです。
電気から、農作物が生えるわけでもなく、魚も増えません。
電気が出来ることは、電気が流れることだけです。
セメント固めも多いですが、セメントも固めることしか仕事しません。
それを考えたら、土壌が栄養を生み出したり、水を涵養したりできる、自然の力ってすごいなと思います。比べ物にならないほどの複雑で、天与の才能を備えているものと思います。
これが自然資本です。
こういう自然の資本をストックし、増やして、将来も継続していく=持続可能にしてくこと。
環境省の言葉を借りれば、脱炭素社会、循環型経済、自然再興です。
これから、いったいどういうことをしたらいいのか?
私もまたいろいろ調べたりして見ていきながら、今後、また、こちらでもいろいろと考えたり、見ていきたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。