橋の下 列車が流れる
この信号を渡って 君はやってきた
白い手を 振りながら
十九の歳のあの頃と 今も変わることなく
橋の下を 列車が流れる
あの時 君を待ちながら
僕は 思い出していた
幼い頃 母と一緒に ここに立って
列車が 煙を吐きながら流れてゆくのを
眺めていたことを
あれから何度も この場所に来た
違う人とも この橋の上で 待ち合わせをした
その人には この橋の思い出を話さなかったし
すぐに 会わなくなった
僕は今 君の若さを思い出す
君の初々しさを思い出す
なのに 君も僕も もうとっくに
死んだ母の歳より 老いてしまってる
ここの信号はなくなった
おばちゃんたちが 回数券をばら売りしていた
バスの停留所も もうとっくの昔に なくなった
橋の上から見る夕焼けは
十九の頃のあの頃と 少しも変わらず紅い
橋の下を流れる列車は
煙は吐かぬが あの頃と 少しも変わらない
この信号を渡って 君はやってきた
老人の僕は そこに顔を向ける
白い手を振りながら 君はやってきた
橋の下を 列車が流れる