卒塔婆小町
大病院の会計の待合所の椅子に腰掛けて
僕は 順番待ちの列に並んでいる婦人方の後ろ姿に
目をやる
娘らしき人に付き添われている車椅子の婦人
バッグの中の何かをさぐっている婦人
杖をついてうつむいている婦人
片手でスマホを覆いながら 実は声高な婦人
自分と同じように 歳老いて病んだあの人が
そして その病が重ければ
やはり 来るのはこの病院であって
僕は その偶然の邂逅を思っているのだ
自分と同じように 歳老いたあの人を思い浮かべて
目の前の待合の列の人の中に
その人の面影をさがす
少将の病院への百夜通いは
九十九夜を待つまでもない
寿命の尽きの順番の列に
せめて名残の卒塔婆小町に
あの人の面影をさがす