卒塔婆小町

2024年02月13日 | 日記

卒塔婆小町


大病院の会計の待合所の椅子に腰掛けて
僕は 順番待ちの列に並んでいる婦人方の後ろ姿に
目をやる

娘らしき人に付き添われている車椅子の婦人
バッグの中の何かをさぐっている婦人
杖をついてうつむいている婦人
片手でスマホを覆いながら 実は声高な婦人

自分と同じように 歳老いて病んだあの人が
そして その病が重ければ
やはり 来るのはこの病院であって
僕は その偶然の邂逅を思っているのだ

自分と同じように 歳老いたあの人を思い浮かべて
目の前の待合の列の人の中に
その人の面影をさがす

少将の病院への百夜通いは
九十九夜を待つまでもない
寿命の尽きの順番の列に
せめて名残の卒塔婆小町に 
あの人の面影をさがす

 



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