A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ミンガスワールドでのアダムスの演奏の始まりは・・・

2012-06-23 | PEPPER ADAMS
Debut Rarities Vol.3 / The Charles Mingus Group

1957年9月、ニューヨークに戻ったペッパーアダムスは早速昔の仲間とのギグ&レコーディングで活動を開始した。ロスに滞在中は多くのウェストコーストの有名バンドと共演し「白っぽさ」を出していたが、ニューヨークに戻ると「黒っぽさ」全開だった。
アルバムとしてはリーモーガンとの共演アルバム“The Cooker”が知られているが、その前に2枚のアルバムに参加している。
その一枚が、テナーのシャフィハディのリーダーアルバム。というよりミンガスグループ参加した演奏がこのアルバムだ。
ミンガスの有名なアルバム直立猿人は前年1956年の作品。いわゆるミンガスワールドの展開に弾みがついていた時だ。

気難しい事で有名だったミンガスとペッパーアダムスは何故か気心が合ったのかもしれない。2人は以前から一緒に演奏した仲であり、この録音の後もアダムスは機会あるごとにミンガスグループの演奏に参加している。ニューヨークに戻ったアダムスがミンガスグループの録音に参加したのも偶然ではないだろう。
ペッパーアダムスのキャリアを追ってみると、色々なミュージシャンとの付き合いが多かったアダムスであるが、このミンガスとの関係は外すわけにはいかない。

最近の政治に代表されるように、今の社会全体に拘りとか主義主張というものがまったく感じられないが、それは個人に立ち返ってみても同じである。メディアの発達と共に世の中の流行・話題に振り回されることが多くなった。また商業主義全盛時代は売れるものが良い物という価値観が蔓延した。ジャズの世界でも少なからず影響を受けていった。
しかし、このミンガスは、マイルスやクインシー、そしてエリントンなどと同様、ジャンルやスタイルは変わっても、ジャズに対して、いや音楽に対しての自らの主張は生涯揺らぎないものであった。

収められている曲はオリジナルのブルースから始まり、ステラバイスターライトやオータムインニューヨークなどのスタンダードも続くが、オリジナルであってもスタンダードであってもミンガスワールドに仕立て直されている。

一口に黒っぽい演奏といっても、ミンガスサウンドの黒っぽさはジャズのオリジンに繫がるようなサウンドだ。それは音色でありフレーズであり、プレーそのものの取り組む姿勢かもしれない。ミンガス自身のキャリアが、ディキシーに始まりフリーな演奏に至ったというキャリアから生まれたものかもしれない。実際に、ミンガスは若い頃ルイアームストロングやライオネルハンプトンのグループにも参加していた。レッドノーボとスインギーな演奏もしていた。

ミンガスワールドの特徴は、グループインプロビゼーションであり、その中で繰り広げられるインタラクティブな即興演奏だ。実はこれはジャズの起源でもあるニューオリンズジャズと同じなのだ。ミンガスの音楽を演奏するには上手いだけではだめで、このグループ演奏をこなし、そしてグループの中で他のメンバーと渡り合いながら自己主張できる個性を持っていないとだめだといわれている。

この中でアダムスのプレーも、つい数ヶ月前までウェストコーストの軽快なバンドでプレーしていたとは思えない演奏振りだ。器用というのか変わり身が早いというか・・。
しかし、よく聴くとアダムスのプレーは大きくは変わっていない。どんなスタイルでもアダムスのプレーはワンアンドオンリーのバリトンプレーである。
ミンガスとの付き合いも長く続いたということは、アダムスもミンガス好みのスタイルには拘らず、どんな場合でも仲間と呼吸を合わせて自己主張ができるプレーヤーだったのかもしれない。

1957年はハードバップの全盛期といわれるが、ウェストコーストジャズもまだまだ活況を呈していたし、ビッグバンドやディキシーも元気に復活、フリーやサードストリームに向けての実験的な作品も多くあり、ジャズ界全体が百花繚乱状態だった。
その中でペッパーアダムスはジャズ界に起こっていた多くの変化を短期間に自ら渡り歩いて身を持って体験していたように思う。

1. Untitled Orginal Blues (take 1)
2. Stella by Starlight (take 4)
3. Stella by Starlight (take 5)
4. Untitled Orginal Composition (take 3)
5. Untitled Orginal Composition (take 5)
6. Autumn in New York (take 1)
7. Autumn in New York (take 2)
8. Long Ago And Far Away (take 2)
9. Long Ago And Far Away (take 4)
10. Long Ago And Far Away (take 5)
11. Untitled Orginal Blues (take 2)
12. Joldi (take 4)
13. Joldi (take 5)

Clarence Shaw (tp)
Shafi Hadi (ts)
Pepper Adams (bs)
Wade Legge or Wynton Kelly (p)
Henry Grimes (b) 12&13
Charles Mingus (b)
Dannie Richmond (d)

Recorded in NYC, September, 1957
コメント
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