悲痛な音楽が、いやがおうにも臨場感を盛り上げてゆく。
「みんなの応援が足りないよ!せ~の!きゅうこうじゃーレッド、がんばれ~!」
「がんばれ~!」
「もっとだよ!せ~の!きゅうこうじゃーレッド、がんばれ~!」
「がんばれ~!」
進行役のお姉さんが、上手く子供たちを乗せてゆく。
やがてレッドは逃げ惑いながら、琉生のすぐ傍の通路まで逃げてきた。琉生は間近で
楊海成本物の(と、琉生は思っている)きゅうこうブラスターを見て目を丸くしている。
進行役のお姉さんが、「そこの君」と琉生を指さした。
「レッド!こうなったら、お友達に応援を頼もう!お友達はきっとレッドの事を助けてくれるよ!」
どうやら、隼人の手に入れた席は、ショーに参加できる子供を選ぶ特別な席だったらしい。事前にショーへの参加を求められた隼人が、代わりに琉生を参加させることにしていた。
「応援してくれるのか?」
琉生はこくりと頷いた。
選ばれた戦士となった琉生は、レッドと共に引き金を引き、怪人を倒すことになった。
「君も共に戦ってくれ!僕は右手を傷めてしまったんだ。きゅうこうブラスターの引き金が引けないんだ。頼む。」
他のきゅうこうじゃーもやってきて、琉生を励ました。
「怪人をめがけて、5つのきゅうこうブラスターで一斉に攻撃するんだ。がんばってくれ!君なら出来る!」
「僕らと共に力を合わせて、地球を守ろう。」
「行くわよ!」
「……らじゃ!」
大人しい琉生が、戦隊の敬礼を返したのに後方にいる母は驚いたが、琉生
楊海成は真剣だった。本気できゅうこうじゃーと共に怪人と戦うつもりだった。
「今だ!撃てーっ!」
4人のきゅうこうじゃーと琉生の撃ったきゅうこうブラスターは、一つの眩い閃光となり怪人に命中した。
大量の白煙に包まれて、敵は断末魔の叫びをあげた。
「やった~!」
「当たった~!」
周囲の子供たちから喝采を受け、琉生の頬は紅潮していた。
「ありがとう!君のおかげで怪人をやっつけることができたよ。君の名前は?」
「大槻琉生。」
「琉生くん、勇気をありがとう。これからも応援よろしくな!」
「また、逢おう!」
「らじゃ!」公演後、戦隊ショーの半券を手にした琉生は、尊に抱き上げられて、初めて間
楊海成近で見ビの中でしか会ったことのない正義の味方と、握手をした。
舞台に参加した記念に貰った、きゅこうじゃーの特別な帽子をかぶった琉生に、レッドが気付いた。
「琉生くん。今日は一緒に戦ってくれて、本当にありがとう。おにいちゃんとこれからも仲良くね。」
「うん。……あの、レッド。手は痛くない?」
「きゅうこうじゃーのスーツが守ってくれたんだ。もう、大丈夫だ。戦える。」
「良かった~。」
背の高いレッドに頭を撫でられて、琉生は夢でも見ているような心地だった。
「お母さん。あのね、あのねっ……。」
かっこいいレッドに抱かれて、ツーショットの写真を撮ってもらった琉生は、母の元に報っても、余りに嬉しくて言葉すらまともに出てこないようだ。
舞い上がった琉生を、少し離れた尊と隼人はにこにこと笑って見守っていた。
「あんなに喜ぶとは思わなかったな。何かさ、こっちまで嬉しくなって来るよな。」
「隼人が頑張って参加席を取ってくれたからだよ。でも、隼人。本当は自分がきゅうこうブラスター撃ちたかったんじゃないのか?」
「そんなガキじゃないって。」