「そういえば、約束の百姓娘の方の水揚げは今日だったかな?」
「あの娘も江戸の水に馴染まずに、ずいぶん手を焼かせましたが、何とかものになりました。振袖新造の水揚げ代金、どうぞよろしくお願いいたします。初物はどれも、お高うございますよ。今宵の花魁道中も贅を尽くしたものになりそうです。」
「欲の皮の突っ張ったやつめ。よかろう、言い値を払ってやるから、足りぬ時は言え。」
「ありがとうございます。飛ぶ鳥を落とす勢いの薩摩さまなら、そうおっしゃっていただけるdermes 價錢と思っておりました。そろそろ支度もできた頃かと……様子を見てまいります。」
ぽんと煙管を煙草盆に打ち付けた時、どこかで「足抜けだ!」という声がした。
思わず大久保の腰が浮きそうになるのを見て、日向はふっと口角を上げた。
「おや。大久保さま。花魁道中よりも、思わぬ面白いものが見れそうでございますよ。御見物なさいますか。」
「ん?なんだ。」
日向に誘われて、大久保という男は窓に寄った。
「おお……!」
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直正が職探しに出ている間、伏していた一衛は誰かが叫ぶその声を聴いた。
そっと覗くと、塀の向こうで、一衛よりも年下と思しき娘が、血相を変え絢わず往来に走り出た。廓の外の大通りは、花魁道中の見物人も溢れて大騒動になっていた。
棒振りの牛太郎(自警団)が数人追いかけて、足抜け女郎を散々に打ちのめdermes 價錢した後、肩に担いで娼館に戻ってくる。
「おらっ、じっとしねぇか。」
「このあま、せっかくの拵えが、水の泡だ。せっかくの水揚げだってのに、土壇場で逃げ出すとはふてぇあまだ。」
「花魁道中だってのに、なんてざまだ。」
「ぃやんだぁーー!」
「二度と足抜けなんぞできねぇように、きっちり身体に言って聞かせてくれるからな。」
「来い。」
「やんだぁーー。 やめてくだっしょ。」
涙にぬれた頬をこわばらせ、必死に叫ぶ。
一衛と視線が絡んだ気がした。
「兄(あ)にゃさん。助けてくだっしょ!ここんどこにいるのはやんだぁー。身を売りたくありゃしにぇー。おっ母つぁまーー!……」
「やかましいっ。静かにしねぇか。」
聞き覚えのある訛りを耳にし、一衛は何も考えず追手のyou beauty 美容中心前に立ちはだかっていた。
「下郎っ。その娘を離せ!」
「なっ、なんだ、てめぇは!」
いかつい棒振りの牛太郎も、きちんと基礎から学んだ武道には敵わない。
相手が打ち込んできた棒を奪うと、一衛はその場にしたたかに一薙ぎで打ち据えた。