おざわようこの後遺症と伴走する日々のつぶやき-多剤併用大量処方された向精神薬の山から再生しつつあるひとの視座から-

大学時代の難治性うつ病診断から這い上がり、減薬に取り組み、元気になろうとしつつあるひと(硝子の??30代)のつぶやきです

オピオイド中毒の蔓延を招いた「どんな痛みや苦痛も消える」という幻想-私たちが直面していることについて考える⑦-

2024-02-04 06:26:51 | 日記
飢えたコカイン中毒のネズミは、食糧ではなくコカインを選び、
コカインが与え続けられるようにするためだけに、1時間に何千回とレバーを押すことを数日間続けたあげく、疲れ切って死んでしまう。

また、ネズミはコカインをもらうためなら、痛みを伴う電気網の上すら歩くのである。

人間は自然界に在る薬物をもとに、創意工夫を凝らして、ますます強い薬物を作り出した。

人間のシナプスは、100以上の神経伝達物質の効果のバランスを取るように進化し、各物質は、調和の取れた平衡状態を維持するチームの一員として働く。

ところが現代の薬物は、いわばオーケストラピットを占領し、オーケストラの他のメンバーを完全に圧倒している状態であるのだ。

コカインとアンフェタミンはシナプスから放出されたドーパミンの回収を阻害し、報酬系をこれまで意図していなかったレベルにまで急激に活性化させる。

→その後、ドーパミン濃度の急上昇がなくなると、避けがたい禁断症状に襲われ無性に薬物が欲しくなる。

→体内から侵入した薬物が、快感を司る報酬系を完全に支配し、奴隷にしてしまうのである。

大雑把だが、これが、先の飢えたコカイン中毒のネズミの例に似て、飢えた人間のコカイン中毒者が、魔法のクスリをもらうためにとんでもない行動をとる理由である。

ヘロインと処方薬のオピオイド系麻薬は、コカインやアンフェタミンといった物質と似ているが、
快感を脳内で司るエンドルフィンの働きをさらに危険な形で圧倒し、命に関わる可能性も在るのである。

オピオイド受容体部位が飽和状態となることによって、普段は制御されて有効に働く報酬系が著しく活性化され、薬物に対する抑えきれないほどの強い欲求が生まれる。

大脳皮質が薬物の使用を止めたいと思っても、貪欲なオピオイド受容体との戦いに負けてしまうのである。

ところで、アメリカからはじまり、今や全世界に広がっているオピオイド中毒の蔓延に私たちは直面している。

毎年3万人以上が亡くなり、何百万という人々が医療行為を原因とする中毒にかかっている。

確かに、ケシは医薬として、精神を高揚させるものとして、また気晴らしとして、ずっと用いられてきた。

ケシの利用は常に何らかの害をもたらしているが、今ほど惨憺たる状況はかつて無かった。

このような状況になったのは、
医薬品業界が薬物を強力に売り込んだことに加え、
ますます強い効果を持つオピオイド誘導体(例えば、カンフェンタニルの作用の強さは、モルヒネの1万倍)を合成したことも大きな原因である。

しかし、鎮痛剤の不用意な処方の根本的な原因は、
医師と患者の間で、
「どんな問題にも対処できる薬物が在り、どんな痛みや苦痛もすぐに抑えられる対処法が在る」
という期待が広まっていることにある。

私は、個人であれ、社会であれ、複雑な問題に対して簡単な解決策を求めると、事態をさらに悪化させることが多いように思う。

世界の歴史上、街角で薬物を買うことがこれほど危険をはらんでいたことなどかつてなかった。

なぜなら、今は、きわめて多くの薬物に、非常に強力で死に至らしめるような合成物がひそかに混ぜられているからである。

しかし、それでも、薬物の取り引きは終わらない。

それは、合法であれ、違法であれ、薬物の取り引きには莫大な利益が生まれて、物質的な中毒者でなくとも、利益絡みで薬物の虜になっている輩が大勢いるからである。

ちなみに、独自のさまざまな危険性のあるもののマリファナですら、オピオイドが持つ破壊的効果に匹敵する危険性はないと言われており、
このブログで登場するDSM-5作成に携わった私の尊敬するアメリカ人の精神科医は、
「まともな世界であれば、マリファナが合法、処方箋のオピオイドが違法であって、その逆ではないだろう」
とまで、言っている。

しかし、この発言をした医師もやはり嘆いているのが、
「製薬会社は麻薬組織よりも、政治的なロビー活動にずっと長けている」
ということであるのだが......。

製薬会社のくだりで寄り道をしたくなったので、いきなりだが、セロトニンは脳内で重要な働きをしている。

遠い昔、セロトニンはミミズの体内でつつましく誕生したが、今や、精神医療で最も広く用いられる薬物がセロトニンをターゲットにしたり、セロトニンが(吐き気や偏頭痛などを抑える)医薬品に使われていたりしている。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、本当にそれを必要とする比較的少数の人には有効だが、
製薬会社のマーケティングに踊らされた多くの人々が過剰に使用すると効果がなく、かえって害をもたらす。
SSRIには、副作用も禁断症状もあることを認識し、使い方を誤れば、メリットがなく、大きなリスクを伴うきわめて高価な偽薬になることを認識したい。

......寄り道にしては、長く暑苦しい寄り道になってしまった......。

私たちは、病んだ社会に対して、問題点や疑問点の多い政治がすぐに問題を解決してくれると、あまり期待はしない。

しかし、何故か、病んだ心身に対して、問題点や疑問点の多い化学物質が即座に問題を解決してくれることには期待してしまう。

差こそあれ、政治は社会に、化学物質は心身に構造的に働きかけるのに、である。

ただ、どちらも使い方を誤れば、多くの人々にとって、非常に破壊的な影響があり、一部の人には死をもたらすことさえあるのだ。

アメリカでは、1日を乗り切るために、市民の約3分の1が薬物や飲酒を必要としているというデータがある。

アメリカほどではないが、全世界でも似たような蔓延の傾向はある。

そんな中で、成熟し、苦境にめげず、責任感のある市民層を形成することなど、理想論であるし、難しいことだ、と、私も感じている。

しかし、多くの過剰な処方箋とのそれらからの離脱症状に苦しんだ私が思うことは、
人間個人と同じで、
過剰な薬物にまみれた社会は、社会の不合理で非生産的で虚しい幻想を助長し、社会に対して不合理で非生産的で虚しい幻想を持つ人を助けてしまう、ということである。

私個人でもひどく苦しかったのだ。
社会という大きなスケールでは難しいことは解っている。

しかし、社会の成熟を否認することをやめ、ありのままの現実に向き合える熟成した社会を実現したいと思うのであれば、
これまでで最悪のオピオイド中毒の蔓延に直面した私たちは、かつてない薬物依存から少しずつ抜け出さなくてはならない局面に来ていると、私は、思うのである。

ここまで、読んで下さり、ありがとうございます。

長文を読んで下さりありがとうございます。

実は、数日前、寝る前にテレビを見ていたら、オピオイドについての怖ーい番組がやっていました(T-T)

私は、たいして考えられないくせにいろいろと考えてしまい、寝つきが異様に悪かったことを覚えています^_^;

しかし、その後、時間が出来ると、なんとなくオピオイド問題が頭をよぎるので、思い切って、今日は、描いてみました。

いつも通り、暑苦しく、しかもこれまた暗い文章ですが、良かったら、読んでやってくださいね( ^_^)

偉そうな描き方ですが、皆さま、これからもよろしくお願いいたします(*^^*)

今日も頑張りすぎず、頑張りたいですね。

では、また、次回。




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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ようこさんへ (amocla91)
2024-02-04 07:02:02
おはようございます!
いつもありがとうございます。感謝感激です。
今日のテーマは薬物ですね。
実は僕はとある精神科のクリニックに通って処方箋薬を服用しています。
僕の場合はようこさんのような重症ではないので、薬で危険な状態になるわけではないのですが、かれこれもう10年近く投薬治療をしているので、先生に投薬治療ではなく、もっと違った治療法を望んでいるのですがやってくれません。
薬物依存症は危険ですね。オーバードーズになってしまったら軽い薬でも命の危険性もあるでしょうし。
うまくまとめられませんが、とにかく頑張って、病気と闘ってください。僕にはこんな他人事のようなことしか言ってあげられません。
ごめんなさい。
今日もお互い頑張って前向きに生活しましょう。
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Unknown (yoko-2-1)
2024-02-04 07:09:11
@amocla91さん
おはようございます。
読んで下さりありがとうございます。
コメントもありがとうございます。
amocla91さんが、ちゃんと節分に豆を食べたことを拝読して、
スゴいなあ、私は結構前から年の数は食べてないなあ、と思いました^_^;
病気も薬も付き合い方が難しいときがありますよね。
私も上手に言えないのですが、お互い、頑張りすぎず、頑張っていきたいものですね( ^_^)
寒いですが、amocla91さんもお身体に気をつけて下さいね(*^^*)
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Unknown (Tristan)
2024-02-04 10:14:50
かつて、製薬メーカーで薬の開発に携わっていた者としては、ちょっと耳の痛いことが書かれていましたが、そういう見方があるのも十分に理解できます。
製薬会社が人類の健康と幸福を担っているのは間違いがないことだと思います。
とは言え、結局は一民間企業ですし、利益を追求しなければいけないことも確かです。

もちろん、オピオイドもそうですし、SSRIのような向精神薬もそうですし、あらゆる薬はもろ刃の剣です。
例えば、オピオイドは正しい使い方をしている限りは依存性がつくことはまずないはずです。

薬って、まさに“毒にも薬にも”なりますし、最も“匙加減”が必要なものの一つだと思います。
要はそれの使い方、それが一番重要だと思います。
つまりは使う人間の問題なのかと。
私は、薬のことだけではなく、最近はなんでもかんでもが、右か左かイチかゼロかというように極端に走ることが多すぎるように感じています。
これは絶対に正しくない、真理は中間にある、これが私の考えです。
特に医薬の場合は“極端”は絶対にダメだと思います。
と言うより、医療に極端はあり得ないと私は思っています。
ただ、極端の方がなにかにつけて簡単なんですよね。
どちらかに寄ってしまえばいいだけですから。
中間とかちょうどいい塩梅を見つけるのは時間やコストもかかってとても難しい。
少し話がずれたかもしれませんが、どんなに難しくても、常に適切な中間を求めて行くようにしないといけないのかなと思っています。
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Unknown (yoko-2-1)
2024-02-04 11:07:23
Tristanさん
こんにちは。
読んで下さりありがとうございます。
また、コメントもありがとうございます( ^_^)
Tristanさんがおっしゃる「どんなに難しくても、常に適切な中間を求めて行くようにしないといけないのかな」ということ、とても大事なことだなあ、と思いました。
やはり、医療もそのほかのことも「中庸」が大事なことなのかもしれませんね(*^^*)
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Unknown (ジェロニモ)
2024-02-13 14:29:01
製薬会社の利益追求と中間の話題が出ていたので、つい立ち寄りコメントさせて頂きます。

正しく依存症とは、中間=適度な状態の維持が不可能となっている状態を指します。中間へのコントロールが可能な状態はむしろ依存症とは言えません。

ラットに電流を流しても飢死にするまで摂取の優先順位が変わる事は無い様に、

資本主義が地球環境を破壊しても利益追求の優先順位が変わる事が無い様に、報酬予測に支配された摂取行動は止むことがありません。

私は、 
何でも商品化してしまう資本主義も、
何でも国有化してしまう社会主義も
極端なので、
中間は無いのか?と思います。

今やSDGsも大衆のアヘンとまで言われる様になりましたが、社会自体が依存症になって幻想から覚める事は難しい様です。

ブログに書かれていた、
社会という大きなスケールでは難しい事と、成熟した社会という言葉と、
最後の結びにの言葉に惹かれました。

オピオイドも成熟した社会の未来も少し考えてみたいと思います。

ありがとうございました。
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