暑くて何もする気になれない時は、
「終活……」と呟き、ちょっとそのあたりを
整理して、なにかしら捨てる。
今日はアクセサリーを処分した。
小さな書類入れみたいな引き出しに、
ネックレスやブローチが放り込んである。
宝石と呼べるようなものはないから
惜しげもなく捨てられる。
その中に真珠のネックレスがあった。
母からそれを貰った時のことを思い出し
しげしげと眺めた。
母が認知症になる前だから、もう十年くらい前だ。
実家に行った時、母の宝石箱にふと目がいった。
宝石箱といっても形がそれらしい箱だというだけで
たいした物があるわけではないことくらい予想がついた。
アクセサリーが必要なおしゃれをする機会など
母にはほとんどなかったのだから。
なにげなくそれを開けてみて、胸を衝かれた。
ネックレス、ブローチ、指輪……あわせて数個。
どれもこれも、見るからに安物だった。
夜店のワゴンにあるようなものばかり。
「もう何にもつけないから、欲しい物があったら
どれでも持っていっていいわよ」
と、そばで見ていた母が言った。
正直言って、どれも欲しくはなかった。
安物しか持っていない私でさえ、これは
つけられないでしょ、という代物ばかり。
でもそれを言うのは失礼な気がして、
真珠のネックレスを貰って帰った。
誰が見てもわかる偽真珠の一連ネックレス。
貰ったものの、一度もつけたことはない。
母はこんなにも、つましい生活をしてきたのだ。
そうして老後のための貯金をし、それでいま
施設に入っている。
我が子も他人も区別がつかない認知症になり
日がな一日、車椅子に腰かけ、うつろな視線を
空に放ち、すべてペースト状に加工された食事を
食べる。
がつがつと食べる。
そんな状態で、もう何年も生きている。
生きる喜びを感じる瞬間は、あるのだろうか。
絶対、つけることはないとわかっているのに
結局、そのネックレスは捨てられなかった。
相変わらず暑苦しい。
少し雨が降ってくれたらいいのに……。
「終活……」と呟き、ちょっとそのあたりを
整理して、なにかしら捨てる。
今日はアクセサリーを処分した。
小さな書類入れみたいな引き出しに、
ネックレスやブローチが放り込んである。
宝石と呼べるようなものはないから
惜しげもなく捨てられる。
その中に真珠のネックレスがあった。
母からそれを貰った時のことを思い出し
しげしげと眺めた。
母が認知症になる前だから、もう十年くらい前だ。
実家に行った時、母の宝石箱にふと目がいった。
宝石箱といっても形がそれらしい箱だというだけで
たいした物があるわけではないことくらい予想がついた。
アクセサリーが必要なおしゃれをする機会など
母にはほとんどなかったのだから。
なにげなくそれを開けてみて、胸を衝かれた。
ネックレス、ブローチ、指輪……あわせて数個。
どれもこれも、見るからに安物だった。
夜店のワゴンにあるようなものばかり。
「もう何にもつけないから、欲しい物があったら
どれでも持っていっていいわよ」
と、そばで見ていた母が言った。
正直言って、どれも欲しくはなかった。
安物しか持っていない私でさえ、これは
つけられないでしょ、という代物ばかり。
でもそれを言うのは失礼な気がして、
真珠のネックレスを貰って帰った。
誰が見てもわかる偽真珠の一連ネックレス。
貰ったものの、一度もつけたことはない。
母はこんなにも、つましい生活をしてきたのだ。
そうして老後のための貯金をし、それでいま
施設に入っている。
我が子も他人も区別がつかない認知症になり
日がな一日、車椅子に腰かけ、うつろな視線を
空に放ち、すべてペースト状に加工された食事を
食べる。
がつがつと食べる。
そんな状態で、もう何年も生きている。
生きる喜びを感じる瞬間は、あるのだろうか。
絶対、つけることはないとわかっているのに
結局、そのネックレスは捨てられなかった。
相変わらず暑苦しい。
少し雨が降ってくれたらいいのに……。
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