年の瀬のメランコリー

　外出から帰って、郵便物を見たり
ちょっと掃除をしたりしていて、ふと、
自分の手が異様に匂うことに気づいた。
　安物の香水をぶっかけたような、
甘ったるい匂い。
　
　なにこれ。なにを触った？
　家の中を見回したが、どうにも覚えがない。
　ともかく石鹸でよく洗い落とした。
　
　それから1時間半ほどたって、今度は
家中が匂うことに気づいた。
　気色の悪い匂いだ。
　どこから匂うのかもわからない。
　だんだん頭痛がしてきた。
　こうなると、匂いではなく臭いだ。

　部屋を見て周り、家具の間を覗き込み、
冷蔵庫もトイレもベランダまでも調べた。
　そしてようやく、突き止めた。

　ブラーバだ。
　最近、友達が「これ、いいよ！」とフェイスブック
に載せていたのにつられ、アマゾンで衝動買いした
拭き掃除ロボット。
　腰痛持ちの私は、床の雑巾掛けが辛くてたまらなかったのだ。

　すべての家電は私と相性が悪い。
　ブラーバも、すぐに届いたものの動かない。
　「英文の説明書？　それ並行輸入品でしょ。
　あたしはさあ、ちゃんとＦＢに書いといたよ。
　ちょっと安いからって並行輸入品は買うなって！」
　と、友達に怒られた。

　いや、安いからじゃなくて、そのコメントを
すっとばしちゃっただけなんだけど。

　文句を言いながらも彼女は我が家に来て、
調べてくれた。
　なんのことはない。充電してなかっただけだった。
　よくあることだ、私には。

　マキタの掃除機とブラーバ


　怪しい臭いの元はそのブラーバだ。
　いや、ブラーバが悪いのではなく、
先日、買ってきたクイックルワイパー用の
ウェットシート。
　私は帰宅してからこれをブラーバにセットし
スイッチを入れた。
　ブラーバは家中を動き回って、けなげに床を拭いていた。

　だけどセッティングするときもブラーバが
動き出してからも、シートにこんな凄まじい香が
ついていたことには気がつかなかった。
　あわてて袋を見ると「クラシックジャスミンの香り」だと。

　一夜明けた今日も、「クラシックジャスミン」は
しつこく家中に満ちている。
　なんか、ジャスミンティーまで飲めなくなりそう……。