陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

オンナに生まれたからには、これをお読みあそばせ(前)

2018-03-03 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

最近、ある雑誌を手に取ってみたんです。
ほら、あのルネサンスの巨匠の名がついたあの雑誌。私はオトナ向けのダンディな読み物だと思っていたんですが、これ、サブカルチャー雑誌だったんですね。アニメとか漫画とかの特集まであったりする。読んだのは今年の3月号で、気になった記事は、ロスジェネ世代こと就職氷河期世代のライフスタイルを扱ったインタヴュー記事。読んだけど腑に落ちませんでした。自分の生き方の模範をどこかに求めても仕方がないんですね。ちなみに、その号は「オンナ×オンナが尊い」と銘打って百合アニメなどの特集もあったりしました。なぜ、ロスジェネ世代と合わせ技にしたのか…。現実に失望した世代だから、サブカルへ逃げやすかったのか。なんとなく納得…。

3月3日はひな祭り。女の子の日ですね。
ひなあられや菱餅よりも柏餅やちまきが好きで、お内裏様とお雛様ののっぺり顔より武者人形のほうがムーブメントがあって好きな私からすりゃ、正直、どうでもいい日でした。だいたい、なんで、米粒に顔書いたみたいな冬彦さんフェイスの旦那と、浮かない顔していつもカップルでセットなのよ? 三人官女とか、陽気な爺の楽人とか、牛車とかのミニチュアのほうがおもしろいでしょ。というか、年度末だし、受験シーズンだし、確定申告時期だし、子どもの日に比べたら祝日にもならないし、嬉しくないですよね?!(逆ギレ)

とはいいつつ、ちゃっかり企画にしてみました、ハイ。
女の子の日らしいので、女の子(自称含め)に読んでほしいような、ほしくないような本を取り揃えてみました。少女漫画とか、イケてる女子エッセイとか読んで、人生の曲がり角に陥るのはそろそろやめましょう──というのが、この記事の主旨です(余計なお世話です)。

マリア様がみてる プレミアムブック (コバルト文庫)
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『マリア様がみてる』シリーズ(今野緒雪著・集英社コバルト文庫)
オンナに生まれたからには、これをお読みあそばせ!と絶対に言いたい青春小説。ライトノベルだからと侮るなかれ、なんと十代の少女のみならず、当時、三十代淑女やはてはご年輩の諸兄まで魅了したという大ヒット作品。1998年に初刊が刊行されたので、今年でなんと20周年になります。あさのあつこさんとか一般文芸の有名女性作家も、百合っぽいお話書かれていますが、やはり、何をおいても『マリみて』でしょう。初期作には川端康成や吉屋信子のような情緒が感じられるのですが、アニメ化で認知度が高まったせいか、次第にコミカル路線に染まっていくのがおかしい。ちなみに私の押しは、志摩子×乃梨子と祐巳×瞳子です(誰も聞いていない)


蔵〈上〉 (角川文庫)
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『蔵』(宮尾登美子著)
宮尾登美子作品は名作が多すぎて、選ぶのに迷いますね。あえて挙げるなら、この一作。大正時代、越後の名門蔵元に生まれた一粒種の女の子。目を患い、実家は経営難に陥り、実母が亡くなり、後妻迎えたのちの夫婦の危機や家族の愛憎、それでも若き蔵人たちとともに伝統の味を守り抜く半生を描いた傑作。四国の霊山にある神社の巫女として育てられた女性を描いた『天涯の花』、日本画家の上村松園をモデルにした女絵師の凄絶な人生を描き切った『序の舞』などもオススメ。

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『大正ガールズエクスプレス』(日下直子著)
自分の好きなアニメのレビューを手掛けていた百合系ブロガーさんの記事から知った漫画。大正時代の姉妹愛や友愛を描いた、儚くもほほ笑ましい高貴な少女たちの物語…というのを想定していると期待を裏切られます。経済的自立を図ろうとして文筆で身を立てんとする高慢ちきなお嬢さまと、絵の才能を買われてコンビを組んだ貧困少女。ちょっと頭のねじが緩んだ坊ちゃまの婚約者に、食わせ者の男たちなどなど。美形揃いなんだけど、むさくるしいおっさんも出てきたりする、少女漫画の絵なのに青年誌のようなふしぎな漫画です。大正時代の風俗をよく研究して反映されているし、実は日本で漫画が成立したのもこの頃。基本はコメディーなのですが、しんみりするお話もあります。カバーを外してもお楽しみが。ちなみにこの漫画を読んだら、夜中に丸いものを見るのが怖くなります。睫毛が生えていそうで…(爆)。


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『話を聞かない男、地図が読めない女』(アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ著・藤井留美訳)
最近、セクシャルマイノリティーがどうの、心と体の性が不一致で、という区分けがさかんに叫ばれています。私は心というよりは、脳の問題じゃないかと思うわけで。Lだから男性っぽい女性で、Gだから女性っぽい男性とは限らない。この本は当時ベストセラーになりましたが、いまだにこの手の性別心理学本みたいなのの類書は出回っていますよね。男は競い、女は支えあい。男は仕事大事で、女は関係が大切などなど、違いを解説。納得するもしないもアナタ次第。男脳か女脳かテストもあります。現代だと、異性だろうが同性だろうが、もしくはパートナーがいない人生を送ろうが、男だから女だからこれをしなくてもいいという選択肢がなくなっているわけで、あまりジェンダーにこだわるのも無意味に感じます。


花冠のマドンナ (1) (小学館文庫)
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『花冠のマドンナ』(さいとうちほ著)
「少女革命ウテナ」の原作者集団の一人でもあるさいとう先生ですが、そのアニメ以前からその実力は折り紙付き。運命を自らぐいぐい切り開き、そうかといって『ベルばら』のオスカルみたいに男になりきってもいない勇気と色気のあるヒロインが魅力的ですよね。ルネサンス時代のイタリアを舞台に、伝説の秘宝のカギを握る少女と、追われ者の王子との剣戟ロマンス。チェーザレ・ボルジアやレオナルド・ダ・ヴィンチなど歴史上の人物も登場し、歴史好きにはたまらない一作です。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
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『西の魔女が死んだ』(梨木香歩著)
私が紹介しなくても、本好き少女の皆さんは絶対お読みなっているであろう名作ですね。不登校になった女子中学生が「魔女修業」と称して、祖母宅に預けられる。言うなれば、「思い出のマーニー」みたく、厨二病入ってる思春期少年少女のひと夏の疎開みたいな王道ストーリー。人生に自己決定権を持ち、偏見や憎しみに負けない心を育てる少女の成長。それにしても、親と喧嘩すると家出先は、田舎のおじいちゃん・おばあちゃん宅でしたよね? その祖父母も親にとっちゃあ毒親だったりするんです。

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)
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『獣の奏者』シリーズ(上橋菜穂子著)
女性向けというわけでもなく、老若男女、日本人でなくとも楽しめる世界の上橋ファンタジーの代表作。『精霊の守り人』のバルサはあまりに精悍すぎるので、こちらをセレクトしてみました。生みの母を失った少女が、祖国から落ちのび、養い親のおじさんから労働することと学びの大切さを教わって、やがて国を揺るがす陰謀に巻き込まれつつ、不思議な能力を開花させていく。戦闘シーンが結構えぐかったり、出産シーンまであったりして、児童文学の枠を越えているのですが、主人公のひたむきさに感動間違いなし。

女の子向けの本っていったら、安野モヨコや羽海野チカの漫画とか、林真理子や吉本ばななのエッセイとか、あのあたりだと思うのですが、読んだことあるけれど、あまり心に残ってないのは、なぜなんでしょうね…。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。





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