陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

オンナに生まれたからには、これをお読みあそばせ(後)

2018-03-04 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

女の子の日特集としてはじめた読書企画。
前半は夢も希望も、愛も友情もあるうるわしい乙女たちの登場する物語(コチラ)。後半は、やや癖のあるオンナどもが登場する本です。男性の営業マンに聞いたら、女性心理を把握するために、もしくは女性社員と仲良くなるためにドラマみたり、湊かなえさんの原作小説読んでます、みたいな人もいるらしく、意外と男性が読んでも面白いのかもしれませんね。男性主体の競争社会に疲れたから、キャッキャうふふのめくるめく百合ワールドに憧れる男子の皆さん、オンナの現実をちょいと覗いてみませんか? 地獄の窯の蓋を開けるようなつもりで。

女子の人間関係
女子の人間関係水島広子 サンクチュアリ出版 2014-04-10売り上げランキング : 1586Amazonで詳しく見る by G-Tools


『整理整頓女子の人間関係』(水島広子著・サンクチュアリ出版)
職場にいるうっとおしいお局、甘え上手で仕事サボる後輩、張り合ってくる同僚。ランチでお弁当自慢とか、小物や髪形チェック。意味のない噂話、群れあってネチネチ精神攻撃。子育てママの負担を押し付けられる独身もしくは子なし女性。古くは女の対立といえば渡る世間は鬼ばかりの嫁VS姑VS小姑でしたが、最近は他人どころか、姉妹や母子でも女どうしでマウンティングしてうっとうしいのが本音。精神科医が、めんどうくさい女子の人間関係の付き合い方をレクチャーしてくれます。この本を読んでから、女の子だらけのアニメとか漫画とかもう読まなくなりましたね。あれは、オンナの皮をかぶった画像データです(爆)。

女たちのサバイバル作戦 (文春新書 933)
女たちのサバイバル作戦 (文春新書 933)上野 千鶴子 文藝春秋 2013-09-20売り上げランキング : 141922Amazonで詳しく見る by G-Tools


『女たちのサバイバル作戦』(上野千鶴子著・文春新書)
うわっ、出た、出た! 上野センセの名前が出ただけで毛嫌いされる方もいらっしゃるでしょうが、私も正直、フェミニスト至上主義者の方は苦手です。でも、この本は日本における女性のライフスタイルの変遷を、正確な統計をもとに追った研究書としても読み応えあります。働く女性は決して生きやすくなってはいない。半数以上は非正規雇用、男性的なパワフルな仕事ぶりで心身を壊し、家庭も破綻し、仕事はするが趣味ばかり優先の夫には家事・育児の協力を仰ぎにくい。子どもに問題があれば、生んだお前が悪いとなじられ、介護や墓守の負担を押し付けられる。そんな女性の声をヒステリックに書いたエッセイもありますが、この本はあくまで学術的に分析。ただし、この本を読んだからと言って、日本人女性の半数以上がおばあちゃんになっていく今後の厳しい時代を生き抜けるとは限らないけれど。

負け犬の遠吠え (講談社文庫)
負け犬の遠吠え (講談社文庫)酒井 順子 講談社 2006-10-14売り上げランキング : 260931Amazonで詳しく見る by G-Tools


『負け犬の遠吠え』(酒井順子著)
アニメ「神無月の巫女」に、ある敵キャラが「負け犬のくせによぉ!」という捨て台詞を吐く(その直後にヒロインに石化される(笑))シーンがありますね。2004年当時の流行語にもなりました。この著者の『金閣寺の燃やし方』とかけしからんエッセイが多数ありますが、独特の妄想爆発的な表現力がありまして、どれもなかなかおもしろいです。私も、犬大好きです(爆)。お腹を見せて降参ポーズとった生き方したほうが楽ですよね、ハハハっ(乾いた笑い)。


細雪 (上) (新潮文庫)
細雪 (上) (新潮文庫)谷崎 潤一郎 新潮社 1955-11-01売り上げランキング : 11250Amazonで詳しく見る by G-Tools


『細雪』(谷崎潤一郎著)
言わずと知れた谷崎文学の代表作ですね。最近、中山美穂などが主演してドラマ化もされましたよね。関西を舞台に旧家の行き遅れの三女の婚活話をメインとして、四姉妹の人生模様を叙情豊かに描いた傑作。で、この末っ子の四女がまあ好き放題やらかすんですね。でも、なんだか憎めない。谷崎の描く女といえば『卍』とか『痴人の愛』とかもありますが、三島由紀夫もそうだけど、悪女を描かせても美女を書かせても天下一品の男性作家ってすごいですよね。女性作家以上に、女を描くのがうまかったりする。最近作の無駄に男勝りなのでなくて、気品のある色気がある淑女とか。でも、こういう女性は友だちにするのも嫌ですよね、神経すり減らしそうなので。

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題
貴様いつまで女子でいるつもりだ問題ジェーン・スー 幻冬舎 2014-07-24売り上げランキング : 122546Amazonで詳しく見る by G-Tools


『貴様、いつまで女子でいるつもりだ問題』(ジェーン・スー著)
タイトルだけで、頬っぺた貼り倒された気分になります。というか、女子力アップとかうるさい自称お姉さんズに読ませてやりたいわと思いませんか。著者は国籍不明ですが、たぶん日本人でしょう。女子が嫌というか、ふるさと、国家が嫌どころか、もう人間やめて宇宙に出ていきたいみたいなふわふわ女子も多いですよね。

烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ 1
烏に単は似合わない  八咫烏シリーズ 1阿部 智里 文藝春秋 2012-06-01売り上げランキング : 298279Amazonで詳しく見る by G-Tools


『烏に単は似合わない』(阿部千里著)
松本清張賞を史上最年少受賞した女子大生作家のデビュー作。王子様のお后の座を巡って名家の四人の姫君が宮廷入りする王朝ロマンスと思わせていて、何やらきなくさい事件が次々に起こる。この続編では、主人公が一転して、王子様とその従者の少年たちを取り巻く陰謀劇へと発展。『十二国記』シリーズがお好きな人なら楽しめそうな、東洋ファンタジーです。というか、ミステリーですが。最近、シリーズ完結しましたが、この第一作の生意気女どもへ打っちゃりを食らわせた「ある青年」の言動のすがすがしさは忘れられません。

女性の品格 (PHP新書)
女性の品格 (PHP新書)坂東 眞理子 PHP研究所 2006-09-16売り上げランキング : 48619Amazonで詳しく見る by G-Tools


『女性の品格』(坂東眞理子著・PHP新書)
これもベストセラー本。というかナントカの品格本って、パクリタイトルがすごく流行りましたよね。女性の社会進出が進んで優秀だけど元気すぎる女性たちに、1946年生まれ、東大卒、官僚、女子大学学長であるハイエリートの著者が説く、古き良き「女らしさ」について。目次を眺めるだけで姿勢を正したくなるような訓戒が並びますが、正直言えば、これは女性のみならず、男性にも求めてほしい人間の理想像ですね。でも、こういう男女共同参画社会の第一線を切り開いた、仕事も、結婚も、子どもも諦めなかったキャリア女性ばかりがクローズアップされて、いまの若い世代が苦しんでいることを上の世代のご婦人方は知っておいてほしいです。一部のスーパーウーマンを自分たちの代表みたいに褒めたたえて、下の世代を無能呼ばわりするの、やめてほしいと思いませんか? 一歩間違ったら、『家族という病』を書いた元女性アナウンサーみたいな人もいますから。

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女性が書いた漫画とか小説とかエッセイとかで、「白馬の王子様を待っちゃいけない」という手垢のついたフレーズがありますが、どう考えても「少女革命ウテナ」の呪いですよね。あれは凛々しい女の子バンザイ!でも、女の子×女の子尊い!の百合でもなくて、実は制作者の男性陣からの、「王子様なんてもういねえんだぞ。お前ら女子よ、もうオトコを頼るんじゃねえぞ」という暗黙のメッセージだったりもするんですよね。その延長線上に、いまの百合文化の爛熟(オトコをのけ者にした世界)があるのでしょうが、妙に、お姉さん愛とかお母さん愛とか押しつけがましげな関係性を見せられる、あるいは、子どもをもたなくていい肉体関係を描きたいだけの百合モノとか見てますと、女の歪んだ描き方って時代を反映しているのだと思わざるを得ません。

十代、二十代前半までは自立するように、変な男に引っかからないようにと育てられ、いざ就職したらしたで、今度は、結婚は? 子どもは? 介護は? お墓は? と攻め立てられる女性たち。日本の物語の祖先である日本書紀の語り部の稗田阿礼がじつは女性かもしれない説とか、竹取物語や源氏物語などの著者が女性であるとかを察するに、物語というのは現実から逃れる女性の妄想力がいかんなく形として残されてしまったものなのでしょう。女性の方が文学的に優れているといいたいわけではないのですよ。妄想しないとやってられないでしょ、っていう意味で。

いま、ファンタジーに浸っている若い娘さん、現実と衝突して立ち止まってしまう皆さん、まちがいなく、遺伝子的に「生きるのが辛い」「生まれたのがしんどい」が組み込まれています。旧世代のオンナの生きざまを見て、笑ったり、嘆いたりしながら、どうにか生存戦略していきましょう(やはり、余計なお世話です)。

最後にちょっと、読むとこころが洗われる一冊をおいておきますね。

面倒だから、しよう
面倒だから、しよう渡辺 和子 幻冬舎 2013-12-19売り上げランキング : 8990Amazonで詳しく見る by G-Tools



読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。



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