2021年12月30日の幕張コミックマーケットで販売されたのが、姫神の巫女の公式同人誌「HIMEGAMI AFTER」。その少し前に全三巻で完結したばかりの、ウェブノベル姫神の巫女の漫画版を補う後日譚なのです。通販のめろんブックスで買ったのはじめてだったので、勝手がよくわからずでしたが。(植竹先生の小説冊子とか原画集とかは著者に現金書留か何かで直接申し込みでゲットだった気がする…)
神無月の巫女のスピンオフ「姫神の巫女」の同人誌を12月30日のコミックマーケットの東1ホール「A-22a介錯」で販売します。最終回を描いたらもう少し2人のイチャイチャを描きたくなっちゃったので…以前イベントで販売した姫子×千歌音のアクリルスタンドも販売しますのでよろしくおねがいします pic.twitter.com/blOvUFFvWT
— 介錯(セブン) (@Kai_Seven_) November 28, 2021
では、遅まきながらのレビュー。
仔細なネタバレにならない程度に中身を紹介。
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表紙は皇月千華音に後ろから百合タックル(この表現正しいのか?)かましている日之宮媛子。
そうそう、やっぱり、巫女服じゃなきゃね。コミックスの表紙絵は物々しい感じがあったのですが、こちらのふたりはホントに楽しそう。あと、この構図はたぶん、神無月の巫女の何かのパロディではなさそうですね。躍動感があってよろしいのですが、この裏表紙のほう、なんと地球をバックにロボットの横顔が――?! その謎は巻末であきらかに。
一頁目は、「今までのあらすじ」
コミックス全三巻の概要を各名場面のカットつきでざっくり。コミケ当日に本編を知らない人向けにもわかりやすくという配慮なのでしょうね。アフタストーリーであることが明記されています。ちょっぴり大人顔で社会人百合テイストなひめちかが公式で楽しめるってもう最高じゃないですか!!
「18-Birthday」
18thのほうがいいんじゃないかしらと思うのですが、タイトルから分かる通り、御霊鎮めの儀からすでに二年後のハッピーバースデー。なんと、このふたり、コミックス最終話にあった1DKのマンションではなくて、結構広めのマンションに引っ越しているみたい。ソファもあったりして、生活も落ち着いているみたいですね。何の仕事をしているかまではわかりませんが、私服を見る限り、暮らし向きはいい様子。
時計の針が12時を回った夜、誕生の祝福を投げ合うふたり。媛子は熱い夜を期待してしまいますが、千華音によってお預け状態。意気消沈してしまうものの、連れ出されたのはなんとブライダルショップ。そう、いわゆるフォト婚ってやつですね。挙式はできないけれど、花嫁衣裳で記念撮影。しかも、ディズニーランドの百合婚イベント並に、ふたりともしっかり麗しきドレス姿。本編だと、媛子の白無垢すがたが拝めましたが、これはこれでウフフ。媛子が用意しておいたサプライズプレゼントに、思わず千華音もほろり。
このショップの店員に意外なあの人が客演しているのも、まあ、なんとも。SNSアカウントっぽいメモを渡していたのは、ここの伏線だったわけですね、センセイさすが! ポイントはふたりともドレスだったことですね。少し前の百合婚だと、少女革命ウテナよろしく、ぜったいに片方が男装だったんですが、時代は変わりましたよねえ。女の子が女の子のままで自分を失わずに好きな人を愛していいと。これは神無月の巫女時代からの介錯氏のこだわりポイントらしいです。
「コメント―介錯―」
同人誌によくあるあとがき、著者表明、制作の動機。コミックス最終巻ではあとがきがなくて、おそらく柳沢テツヤ監督や植竹須美男先生の寄稿に頁を譲ったものと思われます。原作者の介錯先生によれば、最終回はコミックス版でもさらに加筆があって割増だったものの、それでも描き足りないものがあって、いきおい同人誌刊行に至ったとのこと。原案ウェブノベルのほうの出版も希望はされているようですが、カドカワでは難しいのかな。
積年の神無月の巫女シリーズの本編の特性ゆえか「両想いで結ばれた2人の愛の物語」を描けずじまい。で、作者の妄想ほとばしるままに描いたのがこちらと。ちなみに「姫子」は夜は攻めなんだそうです。将来的な大正編の発表もほのめかされているので、そのうち新作が出そうですね。
「一方通行」
本編に出てきたコロナ・レーコ似のあのコンビ。どうみても都会の飲み屋なんですが、島のお勤めどうなったんだろう? ソウマ子のその後も見てみたい気がしますが。そういや、過去の公式同人誌で、レーコロの初対面を描いたサイドストーリーがあったみたいですが、気になります。
「ヒメコの歴史 チカネの歴史コーナー」
拙ブログの過去記事(「姫子と千歌音の人生いろいろ、愛はもろもろ(前)」)に姫子と千歌音のこれまでをおこしましたが、公式側からのわかりやすい年表がこちら。2021年夏のコミケで、ひめちかのアクリル板とセットで配布されたペーパーの再録のようです。読みたかったので、実に嬉しい!! 「姫神の巫女」からさかのぼって、「絶対少女聖域アムネシアン」「京四郎と永遠の空」「円盤皇女ワるきゅ~レ」、番外編の同人誌と植竹さん描き下ろしの乙羽さん主人公小説「卒業雪」、さらにはツイッターでもリファイン版が掲載された前世編の大正時代、2004年のアニメ・漫画原作の「神無月の巫女」本編。前進作の「十字架とライングル」。そして、「超絶対美少女天使エンゼルハート」と「ゲームストライカーあきら」という、かなりの過去作まで。初登場の「エンゼルハート」は1993年作なので、四半世紀どころか、すでに30年は経過しているということに!
初作では「姫子」と「千歌音」のキャラは現在とは違っていたようですが、その後の作者の出世作ともなる「鋼鉄天使くるみ」への前座となる設定もあったようです。まさに、介錯先生の画業の歴史はひめちかと共にあったといえるのかもしれませんね。この歴史に今後、新しい頁が加わっていくのか、十年来のファンとしては楽しみなところです。
「BEGNING」
今回の問題作はまさにここでしょう! もちろんいい意味で。
ある夏の白昼夢から目覚めた千歌音に、媛子が抱き枕状態。お前は猫か!! で、自然とイチャイチャタイムに流れてしまうふたり。艶っぽい描写控えめなんですが、作者いわく、ほっといたらエンドレスらしいです。で、すっかり事後にふたりのからだにはある異変が――! そして、フェリーに乗りこんで向かった先は生まれ故郷のあの島? 剣神降臨って、これネタなの? マジな前振りなの? 続編絡みで? われわれは一体何を読まされてるのぉッ?! 気になりすぎるので、責任とってぜひぜひこの続きを描いていただきたい!! お願いします。
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同人誌ですからソフトカバーなのですが、A4判で画集みたいに大きく、しかも表紙めくってしっかり間にカラー一枚挟んでいますので、つくりはしっかりしています。これでお値段が660円(税込)!この作者さんのほかの二次創作同人誌よりも信頼価格なのは、ファンへの配慮なのでしょう。
同人誌って二次創作ならばカップルのアレやソレやがメインで、背景も設定もあったもんじゃないストーリーが多いわけですが。さすがに公式が出したものか、カドカワの単行本並みにしっかり描かれていますし、かなりクオリティ高い満足の一冊です。附録のコーナーも含めて、神無月ファンならば満喫できること間違いなし!!
この一冊、手軽に半時間以内に読めるので、ときどき休日のあいまに開いては眺めています。
正式な出版社のものももちろん望むけれども、こういう公式版のサイドストーリーってファン向けに同人誌で出してもいいのではないでしょうか。出版社との契約にもよるのでしょうけれどね。
しかし、惜しむらくは脚本家の植竹氏が今年の二月に急逝されたので、今後は番外編の小説が読めないことですね。アニメになるなら六話だけ担当された花田十輝氏(百合アニメの「やがて君になる」で有名)とかワルQのシナリオ担当だった作家の月村了衛氏とか、人脈ありそうですけども、AI植竹須美男の復活であの美しいよろめくような文面の話が読めないかしらとも思ってしまいます。大正編だったら、声優陣そのままで、柳沢演出と藤井まき氏の美麗絵で観てみたいけれども、ワンクールには足りないので、いっそ前世編を含めた神無月の巫女アニメのリメイクをという声も聞かれますね。
ただ、漫画版の姫神の巫女も、ウェブノベルを下敷きにしてかなり脚色して面白くはなったので、まずは漫画で掲載されないかなとも期待してしまいます。「姫神の巫女」の雑誌連載時は毎回やきもきして心臓に悪かったわけですが(近所の本屋に雑誌がなかったりする)、最近だとウェブ連載後に紙本出版の流れもありますね。出版社の初版発行部数がなかなか厳しくて、ファンが望むわりには実現しない続編もありますし気長に待つことにしましょうか。
では、また次回も神無月の巫女関連の記事でお会いしましょう。
この同人誌の感想、やっとこさ書き終えてほっとしています。幸せいっぱいのひめちか尽くしは何度読んでもおいしいのですね。一生涯の宝ものにします。
(2023/06/11)
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