12月15日はなんと美しい満月、しかも今年最後の。
2024年の今年は月にまつわる物語にご縁があった一年。「神無月の巫女でも光る君への愛」でも書きましたが、大河ドラマ「光る君へ」がこの日、めでたく最終回を迎えました。全48話、全話視聴!
世界に読み継がれる王朝ラブストーリー「源氏物語」の作者・紫式部の生涯を大胆な脚色をまじえて映像化した本作。
脚本は朝ドラの「ふたりっ子」で知られる大石静氏。初回から主人公まひろが、三郎君(藤原道長の幼名)との淡い初恋の出逢いがあったあとで、おぞましい悲劇に。
同じ藤原家といえども、摂関家とは身分の格差があり、道長の正妻にはなれないまひろ。道長もゴッドファーザーというべき権力者の父に振り回されつつも、やがて、時の運で、氏の長者の道を歩みはじめ、しだいに政治力を発揮しはじめます。
まひろこと藤式部の作家としての才能は、道長によって引き出されたもの。
亡き定子に思慕の念を寄せる一条帝をわが娘の彰子へふりむかせんがために、まひろの書く物語を呼び水にした、と。光源氏はじめ「源氏物語」のモデルとなった人物や見せ場は、ここではないかしら、と思わせる展開があって、古典好きにはなかなかたまらない面白さ。事前に大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』で予習しといてよかった!
最終回では、道長の本妻・源倫子に、数十年来のふたりの関係を感づかれてしまう。しかし、倫子さまは肝の座った奥方。泥仕合を演じることもなく、危篤に陥った道長の看病をまひろに託してしまう。
千夜一夜物語よろしく、毎晩、すこしづつ語り聞かせさせることで、道長の命をつなぎとめるまひろ。
また、「源氏物語」で光る君の最期が描かれなかった謎もここで明かされており、膝を打つような落としどころ。そう物語の本質って、作者の満足じゃなくて、読者の満足なんですよね。「源氏物語が男たちに読まれなかったら後世に残っていない」という視点も鋭い。文化が残るのは政治の安定があるからなんです。
最終話では老いた清少納言や、出世レースから下りた隆家卿と茶飲み友達になったり、源氏物語マニアのティーン読者(菅原孝標の娘でのちの『更級日記』の作者、同人女の始祖である)に押しかけ感想をもらったり。まひろ家の父も、主従も安泰でほっこりホームドラマ。しめくくりは乱世が訪れることを示唆するカットで終わり、「ターミネーター」まがいかとウェブで話題になったそうで。
藤原道長といえば三兄弟の肝試しエピソードが削られていたけども、史実ではかなり豪胆な人物のはず。
しかし、本作ではこころ優しく、民を思う、純朴な青年貴族としてまひろと巡り合い、そして地位を得て変節していくことで、潔癖なまひろと距離ができてしまう。この幼馴染の初々しいシーン、たまにとんでもないBGM(大河ドラマなのに、エレキギターでダァーン!て(爆笑))のときがあって、ふたりのイライラなすれ違いにウェブ界隈で物議を醸していましたけども、私はほほえましかったですね。昔の少女漫画っぽくて。
名シーンは数えきれないほどありましたが、胸に深く刻まれたのは。
11月3日放映の第42回「川辺の誓い」。三条帝との政争に疲れて宇治の別荘にこもった道長を訪ねるまひろ。あなたが生きていることが、自分の生きがい。これこそがまさに究極の愛の告白ではないでしょうか。夫婦でも恋人でもないけれども魂で結びついた戦友。うわべの好きだけではなくて共通の友人を葬ったという、誰にも言えない秘密と世をただすという理念を共にしたふたりの数十年を濃縮した言葉ですね。しびれるほど尊い名場面です。
私はがんらい、創作者を題材にしたものだとか、女性作家の手のものがあまり好きではなくて。大河ドラマだと江姫ドラマみたいに、姉妹や母子とか女性同志の交わりは熱を入れてるけれども、男子の浮き上がりっぷりがひどくなりがちなのですが。本作は、男性陣も個性豊かにのびのびと演技をされているふしが見えて、なかなかに見ごたえがありました。ロバート秋山の実資卿とかですね、どういうキャスティングなんだ、しかもハマってるし(笑)。脇役なのにけっこう目立った存在感の方もいて、役者の活かし方がうまいと思ってみたり。
毎週、放送後に楽しみだったのは、SNS上での感想絵。
#光る君絵 で検索すると、うるわしく、楽しい、ネタ絵がたくさん発掘されます。番組関係者、こちらをチェックしているようで、公任や行成の道長への推し愛ぶりは絶対に同人界隈の養分を吸収しているに相違ありません、公式おそろしい子!
この二次創作絵師さん、プロ級のとんでもない有名人もいたりで。
大河ドラマのファンアートの層の厚さに驚くのです。
#光る君へ 神回と呼ぶ回はあれど、常に最新回がいちばん面白かった。まひろと道長だけでなく数々の瑞々しい恋愛にときめき、平安時代の政治や文化に驚き、古典文学の魅力を再認識させられ、随所にちりばめられた源氏物語のエッセンスを見つけるのも楽しかった。1年間、本当にありがとうございました! pic.twitter.com/iUT8DAS6Mw
— KEI-CO (@keico) December 15, 2024
#光る君へ 最終回。最期の刻が近づく道長へ、まひろが語る二人だけの新しい物語。二人の明日がいつかまた訪れて、まひろが続きを語ってあげられますように。清少納言とまひろが自身の偉業を讃えあう姿は爽快、ウソみたいなホントの行成、誰よりもお仕えしたいと思った倫子様。乙丸、姫様をよろしくね。 pic.twitter.com/aonK4ZVqRi
— KEI-CO (@keico) December 15, 2024
#光る君へ 一年間楽しませていただきました!関係者の皆さん、ありがとうございました。遠い遠いと思っていた平安時代を「たった千年前」と感じるほどになりました。悠久にまばゆい月の上では、いまでも美しい平安の都が続いるのではないか、という気さえしています。今宵も望月ですね。#光る君絵 pic.twitter.com/zRlxLjsHO4
— にらたま13(韮山 環) (@niratama0896) December 15, 2024
この方のネタイラスト、いつも笑わせていただきました。
そうそう、創作女子向けの物語なんですよね。だから共感しやすいのかも。
こうして並べると、おとなしいようで一番過激派なのがまひろ…#光る君へ #光る君絵 pic.twitter.com/W9AjXZVoyn
— にらたま13(韮山 環) (@niratama0896) August 18, 2024
一年間、胸高鳴るストーリーを有難う御座いました。#光る君へ #光る君絵 pic.twitter.com/v5N8JLLk8S
— 雪 (@yuki_mi2yubi) December 15, 2024
乙丸役の矢部太郎さんのイラスト。
なんと本で出版されたそうです。おめでとうございます。演者の目線でないとわからない視座からのイラストもあって、けっこうじわじわきます。
#光る君へ 最終回 #光る君絵まひろさまの後について、たくさんの方にお会いして、とても遠くまで行けました。皆さまありがとうございました。 pic.twitter.com/AGdIFIsX20
— 矢部太郎 (@tarouyabe) December 15, 2024
「光る君へ」の視聴率はあまりふるわなかったようですが、男性視聴者にやや敬遠される要素があったからなのでしょう。
中流貴族とはいえ、町娘みたいに、あちこち歩きまわる姫君だとかどうよ?!というツッコミは承知のうえで、けれども史実も歴史考証もふまえて、うまくドラマに仕立てたといえます。舞台セットも豪華でしたし。大河ドラマでは平安時代そのものが珍しいので貴重ですものね。今後はもっと古代の、天平時代とか飛鳥時代とかやってくれないかしらね。戦国モノや織豊時代、江戸時代は食傷気味なので。
NHKの朝ドラ「虎に翼」ともども楽しめた一年。
再放送だった川本喜八郎の「人形劇平家物語」や「坂の上の雲」もあって、2024年はテレビドラマが楽しめた一年となりました。昔あった奈良の大仏開眼とか、聖徳太子とかのスペシャル歴史ドラマも総合かEテレで再放送してほしいんですよね。アニメの「精霊の守り人」や「ふしぎの海のナディア」なんかも。
好評だったという「鎌倉殿の13人」は見逃したので、いつか機会があったらレンタルで観てみたいと思っています。
「太平記」や「平清盛」も好きだったし、あの当時はネットの黎明期で、おもしろいレヴューを書かれる個人サイトさんが多かったんですよね。懐かしい。
ちなみに、「光る君へ」総集編は12月29日正午過ぎから放映です、要チェック!
憂鬱な日曜の夜を明るく輝かせてくださって、とても感謝しています。制作陣、演者の方も、レヴュアーの皆さまもお疲れさまでした。
(2024.12.22)