皆さんは学生時代の成果を残していますか。
成績表や各種の表彰状などは、わりあい、個人の歴史として残されることが多いものです。私は数年前に空き家の古い納屋を解体いたしましたが、そのなかには、親族の過去にまつわる様々なものが発掘されたものです。金目のものではなくとも、それはいろいろなことを後代のわれわれに語り掛けてくれます。
私の親族には学校教員となり、のちに校長で退職し、ある自治体の教育長を務めた人物がいました。その人物の師範学校時代の教科書やらノートやら文房具が大量に発見されたのです。その人物の親は勉学熱心な息子が誇らしいので、大事に保管していたのでしょう。しかし、私が見つけたときはもうボロボロでどうにも保管しがたく、廃棄せざるをえませんでした。教科書ももうすこしきれいな状態で残っていれば、博物館へ寄贈できたのかもしれませんね。
祖母の残した帳面は、着物の裁断のパターンなどが描かれていたものでした。
ほかにも、複数名の親族の成績表やら、表彰状やらが残されており。状態のよいものは煤を払ったうえで保管しています。昔の表彰状は、今のような金縁の飾りのついた感じの印刷ではなく、白い画用紙に墨で手書きだったのですね。
ところで私にも、私なりの学生時代からの思い出の品はあります。
成績表やら、模試の結果やら、研究論文やらそれが掲載された研究誌やら。現在は空き家のほうに別置きしているのですが、折を見まして探し出すことがあります。
高校時代までの勉強ノートやテスト用紙やらはすべて捨てたのですが、大学・院時代の講義ノートやらレポートやらは特に自分の専攻に関わるものは洩れなく残しています。
主として美学・美術史関連のもの。
美術史の授業は、当時まだ白い幕におおきく映写したり、教室の端にあるテレビに流したりする時代でした。数センチ大のセロハンのフィルムをカシャカシャと差し替えていくんです。教室内を暗くして作品の図版を見るので、ノートを取るのに苦労しました。ある絵がくると教官がそれについて説明する。それをこちらは必死にノートに筆記する。忘れないようにその絵の簡単なスケッチまであって、クロッキーの達人になりそうでした(笑)。
図版はコピーして配布してくれる教官もありました。
しかし、贅沢にカラーコピー機をつかうので、インク代相当かかったはず…。研究室専属になると教官の授業準備としてカラー図版を大量に人数分用意を頼まれていたことを覚えています。
そうした図版やら、海外国内も含めての文献資料類も、私はすべて科目ごとに保管していました。今とは違い、かなり几帳面な学生だったようです(笑)。
資料はかならず配布すぐに、ナンバリングをし、日付と講義名を記入。分散しても見つけやすくします。一日に何限も受講するし、似た科目もあったので、あとで分別しやすくするためです。
レポートやらも提出前にコピーをとり、返却されたものもすべてノートに添付。そして、カラーの厚紙で表紙をつくり、科目名、教官、年度、曜日何限め、講義棟をPCで印字する。講義がすべて終了したら、一冊の冊子のように貼り合わせていたのです。資料があまりの多い時は専用にファイルしたり、紙のフォルダに分類していました。資料管理としてはあたりまえのことかもしれませんが、この作業は、自分が論文を書く時にもおおいに役立ちましたね。
教官のなかには出版物の自著を買えという者もいたりました。
しかし、私の専攻分野の教官はたいがい資料をコピーしてくれたので、助かりました。なかには今だとPowerPointで作成するぐらいの図解を手書きでつくったプリントをいつも配っていて、私はいつもそれを楽しみにしていました。今でも大事にとってあります。
現在だとペーパーレス時代なので、そんなに配布されないのかもしれませんね。
リモート授業で人文科学系の講義やら購読やらするのならば、資料もデータ配信なのでしょうか。それでもプリントアウトして書き込んだりしたほうが、自分ならいいかなと思います。
授業が終わると、こうした専攻科目のノートはきちんと読み直し、予習復習をしっかりしていました。受験勉強と違って、大学の講義には課題が附されない限りはただ座って話を聞いただけで終わりになります。だからこそ、深入りしたくなった部分は本を借りて調べたり、疑問点を控えて次回の授業日あとに教官に質問したりしていました。研究室に熱心に出入りしていると、院の先輩方にも覚えめでたく、秘蔵の書庫なども利用させていただけたのです。私が熱心に入り浸っていると同調して一緒に学びたいという友人もいて、相乗効果としてよかったのかもしれません。指導教官には、今年の四回生は勉強熱心だと言われたぐらいですから。ただ、それが優秀だったのかはさだかではないですけどね。
若書きの字ですので読みづらい部分もありますが、当時はかなり勉強していたのでしょう。今みたいにスマホもなくて、PCはあったけど電話回線の従量課金だったのでネットにほとんど繋いでいませんでした。
現在のコロナ禍では自宅学習が中心ですから、キャンパス通いならではの学習体験が乏しくなっているのは、いささか残念ですよね。
ただ学内ネットワークのSNSがあるそうなので、連絡はとりやすいのかもしれませんが。でも、大学の研究室やら図書館やらで資料に囲まれてする学習はやはり、自宅で行うのとは厚みが違いました。研究室のような書斎があったらいいなと思ったものです。
いま、もう20年近くもなって学生時代の講義ノートを読み返しては感慨に耽っています。
同じような方がブロガーさんにもいらっしゃっるので、嬉しくなります。レポートや講義ノートなどの途中経過にも、自己の思考の過程が読み取れて懐かしい。私はそのあとの資格取得の学習ノートなどもテキストともども保管しておき、日々の励みにしています。
(2021/09/17)