毎年春から夏への変わり目にいろいろ起きているような気がします。
つい先日、伊藤博文公にならぶ歴代三位の首相在籍日数をかぞえた安倍首相は、「令和は梅の時代」とつぶやいたそうですが。新元号はじまって、法令でも裁けず、和しても崩れる世の中の虚しさに気づかされる事件が多発しました。自分のことでもないのだけれど、なんだか胃のあたりが酸っぱくなってしまった感じです。
今回は殺伐さを離れての、日常与太話をします。
梅がうつくしいのは初春ですが、梅がおいしいのは初夏であります。以前の日記記事でも書きましたが、我が家の裏庭にはユスラウメの木があります。数年前まで一本でしたが、接ぎ木をして三本、鉢植えの挿し木をいれて四本。梅雨雲が近づいたこの時期、紅い実がもりだくさんでそろそろ収穫どきと思ったその矢先。
昨日のことですが、すっかり実がなくなっていました!
理由はわかっています。私の家族は誰かが盗んだのだと言い張っていましたが、おそらくは小鳥のしわざです。人間の指先でちぎったのではない、かなり乱暴に小枝が折られていました。この裏庭は毎日出歩かない場所で、しかも人の目が届きにくい。野生動物が畑の作物を荒らす被害は多く報告されています。じつは、二年前もキンカンを奪われたので、網をかけたばかり。肥料をやって土を耕して丹念に世話していたわけではなく、私自身はあまりがっかりしていないのですが、家族は期待していたので怒りが収まらないのでした。
たしかに、昨夏に近所の畑の水たまりに尋常でない数の渡り鳥らしき群がいたのです。
鳥の鳴声を最近は多く聴くことがありますし、庭仕事をしていたら、鳥がかなり近距離まで近づいていたりします。鳥の警戒心がなくなってきたのかも。鳥が庭を飛び回ってくれたら、蛇の出番も減ってくれるのかもしれませんが。庭木に何本も網をかけると見栄えが悪くなるので、来年は早めに収穫するしかなさそうですね。
梅といえば飲んでもおいしい季節です。
知り合いのある農家のご婦人いわく、古い梅酒をいただいたのだけど気持ち悪くて捨ててしまったという。その一家はあまり酒に嗜まないので惜しげもなかったのでしょう。しかし、実はもったいないお話です。
スーパーなどで梅酒づくりの瓶や、梅、氷砂糖、焼酎のセットが売り出されています。
大瓶だと青梅が1キログラムほどですが、焼酎は1リットルでも1000円以上はしますので、ひと瓶頂いたとしても3000円ぐらいの贈答品をもらったと同じになります。そして、問題はおそらくその梅酒の年数ですね。酒屋で売られているような、透明感のある梅酒を見なれていればびっくりするぐらい、かなり漬けられていたのかもしれません。
じつは、我が家も昨年の実家の片づけ作業中にかなりのヴィンテージもの梅酒瓶を発見しました。大瓶にして4本。あまりに色が黒すぎるので、割って捨てようと思いました。ところが、台所から使用したと思われる、高級な焼酎の瓶も見つかったので惜しくなった。腹痛覚悟で飲んでみたら、ふつうに酔えるお酒でした。ワインだと思えば悪くはないし、下に沈んでいた梅の実も黒ずんではいたが、柔らかくなっていたので奈良漬けみたいに食べられました。パスタ料理とかなり合います。
この梅酒、何年ものだったと思われますか?
瓶のふたに「S57」の日付が…。なんと36年ぶりに開封されたものだったわけです。蔵の日あたりの良くない場所に置かれていたので、まあなんとか腐敗はまぬがれていたのでしょう。しかし、見つけたときは最初外側が埃だらけでして、醤油みたいな液のなかに固形物がごろごろあって、かなり気持ち悪かったです(笑)。じつはもともと私の父方の伯母からもらった梅の実を実父が漬けて贈ったものであったようです。贈られたけれど、忘れてそのまま放置されていたのでしょうか。ワインも何百年ものの銘柄はあるらしいですが、実際問題としてどれぐらい保存がきくのでしょうね。
その梅酒の瓶も、昨年から週一ていどで飲んでいたら、とうとう最後のひと瓶になってしまいました。私自身はふだんあまりお酒を飲まないし、飲みたいときは缶チューハイでも買えばいいのではないかと考えているのですが。家族がすっかり梅酒に魅了されて、新しく梅酒セットを購入してつくりたいと言い出しています。地震で倒れたとき困るし、保存食として置くものは軽いものがいいと考えている私は難色を示しています。ユスラウメも来年、鳥との争奪戦に勝てば、おいしい果実酒になってくれそうですが…。
それにしても、この梅酒ではないですが。
一見するとかなりむごい事象にみえても、その内情を探れば意外にも充実した理由が隠されていることってあるのかもしれませんね。梅酒の底は泥のようにみえましたが、その上澄みはかなり美しく甘酸っぱく、それは美味なのでした。