陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

宗教に溺れるひとが見失ってしまうもの

2022-07-23 | 政治・経済・産業・社会・法務

安部晋三元首相を暗殺した容疑者40代男性の背景が明らかになるにつれ、宗教団体への批判が高まっている。
この男性の母は三人の子を抱えながら実家に戻り、その後、実父から相続した土地を含め、1億円近くもの巨額の寄付をしたという。非常に申し訳ないが、この母親は、資産を受け継ぐ才能がなかったのである。犯人の育て方というよりは、この母親がどういう育ちをしたのか、よほどお嬢さま育ちで苦労知らずか、あるいはお金を稼ぐ労力を知らなかったのか。こういう手合いは、宗教でなくとも、モノを買いこんで不良資産にしたり、お金をばら撒いて近づく人間を集めて孤独を紛らわしたりする。つまり、精神的にかなりもろいし、自立できていない。犯人の所業は許せないが、同情したくもなってくる。

この宗教団体は旧名をナントカ教会といい、この名はその昔、ワイドショーを賑わせたものだった。
韓国系の教祖で、芸能人ふくめた男女を強制的に合同結婚させるというもので。正直気持ち悪い団体だなと思ったものである。

日本の新興宗教の弊害については、地下鉄サリン事件を俟たず、多くの事件沙汰になってきている。
霊媒師が悪徳商法で高額なものを売りつけただの、引きこもりの子を虐待して死なせただの、芸能人を洗脳しただの。

ここで瑣末な私の事例を話しておく。
私は県下有数の高校に進学したものの数箇月で不登校になり、二年のちに復学して卒業。その後、大学、大学院時代での留年もあって、遅まきの社会人生活でもてんやわんやがあり、40代になってやっとこさ生活がなんとか安定した人間である。現在はきちんと納税できている身の上だが、これまでの人生を平均すれば標準以下だろう。

その私の不登校時代、実親が同じ不登校の子を持つ親の紹介で、あちこちの霊媒師だの占い師だのに連れまわされたことがあった。
酷くなると、県外の、大阪くんだりまで出かけたことがあった。私にすれば家族旅行気分だったのだが、当時の両親にすれば期待をかけた優等生の我が子が人生のレールを外れることに怯えていたに違いない。

家に山伏っぽい服装をした人物がお祓いにきたこともあったが、私からすれば、わあわあ喚いているだけのアホなおっさんだな、としか思えなかった。
この人物には、のちに私が正社員就職したときに毎日塩をまいてお払いしろだの、お墓にご飯とお茶をお供えしろだの、言われたのだ。素直に実行したが、貴重な休日が潰されるだけで何の効果もなく、ブラック職場で私は過労で退職せざるを得なかった。

私が不登校から立ち直ったのは、これまた親が誰かの紹介で知りえた、遠くのお地蔵さん信仰と、それの守り手であるおじいさんに出会ったことである。
このおじいさんはすでに故人だが、私がまだ高校生の自分から、あなたは30代になったら人生が変わることが起きる、と告げられた。実際、これはそのとおりになった。なので、私はいまでも迷いがあると、このお地蔵さん参りをすることにしている。

社会人になってからも非正規と正規社員就業をくりかえし、仕事が落ち着かなく、引きこもり気味にもなった私は、近所にすこし年上の無頼の身の男性がいることを知った。
この人物は国立大学の医学部を出ているのだが、にもかかわらず、日々ぶらついている。いちど医療業界で就業したが折り合いが悪く、親の商売も手伝ったがうまく行かず、自分を持て余しているらしい。けっして気が触れているわけではないと私には思われる。原因をつくったのは、彼の両親だろう。

この男性の母親が、どこかのうさんくさい霊媒師にハマってしまったらしく、妖しい石灯篭を買わされたり、あちこちの占い師を掛け持ちして回っては、どこそこの占い師がいいと、私の親にふきこんできたらしい。

うちの親もすっかりだまされて、その石を買う羽目になった。
それが玄関に置かれたときに、私はこれはヤバいと目覚めてしまった。親に代わって、その墓石業者に抗議の電話をし3割だけは返金してもらった。ところがその後、直々に当の霊媒師から電話がかかってきて、お前を呪い殺してやるぞとおぞましい声で告げたのである。私が幸いだったのは、詐欺師の言葉よりも娘の私の意見を尊重し、処理を任せてくるぐらい親が私を信頼してくれたことである。そして私は呪いで死んではいない。

私が法律に強くなろうと行政書士資格取得を目指した原点も、ここにある。
とにかく間違った言葉で、他人の人生を危め、ゆがめ、資産をやすやすと奪おうとする人間は絶対に許せないのである。

私はなんとかアドバイザーです、クリエイターですなどと名乗る人間は真っ先にその素性を疑う。
あなたの人生を堕落させる詐欺師ですよ、と言ってるも同然と見なす。

縁戚にも、高野山で修行したから俺は霊感があるとうそぶく事業主がある。
その人の奥さんは知人の借金の連帯保証人になってしまい、会社の経営が傾き、奥さんをうつ病患者にして障害年金をもらっている。あなたが霊感があるなら、なぜ奥方を救わないのかと私が生意気に言い返すと、二度と近づかなくなった。その事業主じたいもカード破産し、腎臓をわずらい夫婦で通院を繰り返している。不幸の権化みたいな人物で絶対に関わりたくはない。

以前、派遣先で占い師を名乗る女性に出会ったこともある。
派遣先でスマホ盗電し、雑談ばかりし、自分がいかに優秀な救世主であるかを語り、そしてあげくあちこち引越しをしているので住民税を払っていないという。当日欠勤して電話代がもったいなから、私に連絡させたり、私の友人まで巻き込んで面倒な仕事をおしつけてきたのだが、なぜか彼女たちのミスが私のいない間に私の責任になっていて、私はその仕事を失う羽目になった。周囲を自分の味方にして、私を孤立させたのである。ところが、私の無実は認められて休業手当をもらいながら再就職活動ができ、私はなんと長年来の夢だった職種での正社員に戻れたのである。うっとおしい友人関係もリセットできて万歳三唱だった。

私はちょくちょく個人事業上の判断に迷い、相談料を包んで某寺の和尚さんに相談することがある。
信頼しているのは、まがりなりにも僧職だからである。彼の言うには、お前は会社員で向いていない、望まなければ楽をして暮らせるので無理に働くなと諭されたが、しかし、私は会社員に戻ることができた。この和尚さんは過去の相談でも適確な教示があったし、モノを買わせたりはしないので信頼しているが。いつまでも、こうした占いに頼らないと判断ができない自分をもどかしく思い、利用を控えるようになった。

ネット上の副業として占い師をしたがる人間は多い。
だが、よく聞いてみれば、どこかの本か、ネットで調べたらすぐわかるような風水だとかそこらの知識を語っている。知識の底が浅く、教養がなく、品性の欠片もなく、しかもお金に汚い。そして自分に刃向かうものは徹底的にたたき、潰そうとする。そのすがたは、宗教者にあるまじき所業である。

皆さん、よく覚えておいてほしい。
これがひとを救うとうそぶいている者の正体である。実際はまともに会社で就業できず、組織に合わせられず、求道者を名乗り乞食でございとへりくだればよいものを、なぜか自分が哲学者然として全能者としてふるまう傲慢な者の素性である。勝手に神をつくりだし、自分はその使徒であると伝え、他人の時間とお金、感情を奪い続ける。

普通のお寺のお坊さんでも欲はいけない、お金がたまりすぎると禍を呼ぶ、と説教する。だがお金はひとのために使えば活きるし感謝もされる。無心になれと言いながら信者から財産をまきあげる宗教は泥棒であって罪深い。清らかならばなぜ質素倹約に暮らさず、宗教家が肥え太るのか。


これは宗教家のみならず、芸術家だろうと、文化人だろうと、学者だろうと同じである。
世間に理解されないことをやって、自分は正しいと思い込むばかり、自分の周辺に信奉者ばかりを集めたがる。裸の王様だから、間違っていても、誰も指摘せず、これが組織化すると、たちまちテロ集団か、危険思想者かになりさがる。だからこうした思想者は思想に殉じて世の前面に出ない方が望ましいのである。神がかった人物が政情を支配するようになれば、それはイスラム国家のような無法国家になるだろう。

日本は八百万の神の国。まれにみる多宗教の共存が許されている。
外国人の移住が進み、今後、多くの信仰や思想の異なる人間どうしが暮らすことになるだろう。そして、社会からはみ出た者を集めてその鶏頭となり、よからぬ肥やしを得たり、その富で権力を欲したり、ついには政治にまで口を挟む事態になりかねない。

うさんくさい信仰宗教のみならず、既存の宗教でも同じことだ。
以前、高野山の不正金があきらかになったが、私の同居人が檀家となっている真言宗のお寺はお布施について厚かましい。私が檀家の臨済宗ではまだ檀家が多いためゆったりしているのだが。人口減少で廃寺になる寺社仏閣はありうる。お金がないのなら、信者からたからず、自分が働いて稼いでこいとしか思わない。さらに危惧することは。こうした有名ブランドの宗教組織を身元の分からない人物が買い取ったり、あるいは外貨資本が参入してきたりすることが絶対におこりうるのである。

自称求道者たちが救わねばならないのは自分ひとりの人生で。
それをかってに組織化して、信者をかき集めて教祖になり、自分の居場所をつくっている者は危険である。宗教法人に対する免税措置とやらもあるようだが、そろそろ、我が国は宗教のありかたについて論議すべきではなかろうか。

ちなみに、私はナントカ学会がバックについている某与党が大の嫌いで、近所にそれの熱烈な信者がいつも公●党に一票を入れてとお願いしてくるが無視している(もちろん表面上は応じたふりをするが)。それをお願いする家も年中シャッターを閉めて、何の仕事をしているのかわからない。宗教にかかわった家は自分が思考停止していることにすら気づかない。

宗教なんぞというものは、キリストなり、ブッダなり、孔子なりの、大もとの創始者の本でも読めばよろしくて、その韜晦者みたいな者のもの言いは話半分に聞くに限るのである。
他人の起こした宗教なんぞを信じるぐらいなら、先祖のお墓参りか、身近なお寺か神社で手を合わせるか程度でよくて、身を持ち崩すほどの寄進を無心するのはあきらかに詐欺師である。それが見抜けないということは、よほどこころが参っているので、その実、宗教などにすがらずに、自分を休養していればいいだけの話。

くれぐれも、気が滅入ったときに儲け話や気休めの言葉をくれるような人間の甘言にうかうかと乗ってはいけない。
詐欺師の宗教家や芸術文化人は、信者が元気になり、まともに社会で活躍し、日陰者の自分を顧みなくなることを恐れているのである。だからこそ、この世の中は憎らしいとか、悲しみばかりだとか、胸が塞ぐことばかり、俺の作品で楽しませてやるよ、などなど延々と吹き込んでくるが、それをはねつけて、自分の人生は自分で切り開いていく覚悟が必要なのである。

もちろん、世の中にほんとうに霊感が強かったり、その能力を誰かの人生に役立てたいからと願い、そのためにまともに会社員としての就業は困難なので本業にする方もいるだろう。
だが、相談者が少なくなると業腹な面が前面になってきて、いつも嫌気がさしてしまうのである。相手も私が疑い深い目で探っているので、ぞんざいな対応をしてくる。要するに金づるになりそうな、くみしやすげな人物をターゲットにしているだけなのである。

本来の宗教や哲学は、後世の人間が生きやすいための至言を与えるためのものであったがはずが、いつのまにかゆがんでしまったのだろうか。
人生に暇ができたら、図書館でゆっくり古典の本でも読んですごすほうが、よほどスマートではないだろうか。

(2022/07/17)




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