陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

猫に癒されたい方におすすめのこの一冊

2018-02-22 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

皆さんはご自分を動物に喩えたことがありますか?
私はあります。ブログアイコンでは、落ちれば踏みにじられ、枯れれば散るのみの哀しい葉っぱ野郎ですが、これだと思う動物はいます。ハイ。数年前に、あるビジネスクールの自己啓発セミナーなるものに参加したとき、自分を動物に喩える質問が回ってきたんですね、その理由も添えて。「私は鳥です。高みの見物が好きで、物事を多面的に捉えるのが得意です」と答えたら、教室にいるすべてのひとがこちらを凝視していました。あのいささか冷ややかな視線は、何だったのでしょう。いまでも疑問です。

さて、2月22日は猫の日。
作家と猫とは相性がいいそうです。かつて、こんな記事(文学と猫とのふしぎな関係)を書いたことがあります。小説などを読んでいると、ま、たしかに猫の出現率の方が高いかも。

そんなわけで、今回のテーマは猫。
せめて幻想の中だけでも、もふもふしてみたい。ペットに死に別れて早十年ぐらいの私が愛猫家に受けるかわからないが、猫に癒される本などをセレクトしてみました。

吾輩は猫である (宝島社文庫)
吾輩は猫である (宝島社文庫)夏目 漱石 宝島社 2016-06-24売り上げランキング : 141256Amazonで詳しく見る by G-Tools


『吾輩は猫である』(夏目漱石著)
猫の本といえば、誰もが思い浮かべるのが、国民作家・夏目漱石のユーモア小説。自身や寺田寅彦などがモデルとされる美学者の苦沙弥先生など、知識人の俗っぽさが、飼い猫の視線を通して、実に滑稽に描かれています。文庫版でもけっこう分厚いので、最近になってやっと読了できました。それにしても、弟子と思われる人物が夜中に盗みに入った後半部は驚きます。明治時代の知識階級の風習を知る資料としてもおもしろい。

What’s Michael?9巻め (イブニングコミックス)
What’s Michael?9巻め (イブニングコミックス)小林まこと 講談社 2003-05-23売り上げランキング : 46741Amazonで詳しく見る by G-Tools


『What's Michael?』(小林まこと著)
わりと古い漫画なんですが、知ってる方います? 青年誌連載だったので、大人受けもよかったはず。三毛猫のマイケル(マイケル・ジャクソンから名付けたので、特技は踊ること)とその周囲の人間や猫仲間たちを愉快に描いた快作です。猫の生態がリアルなので、猫好きが読んだら辛抱たまらないでしょう。アニメ化もされましたが、コミックスがなかなか刊行されなかったんですよね。2001年に連載が再開されていたようです。

ぼくの地球を守って (第1巻) (白泉社文庫)
ぼくの地球を守って (第1巻) (白泉社文庫)日渡 早紀 白泉社 1998-03-01売り上げランキング : 103263Amazonで詳しく見る by G-Tools


『ぼくの地球をまもって』(日渡早紀著・白泉社)
言わずと知れたSF転生ラブストーリーの名作漫画。前世、月、というキーワードがくれば、絶対に思い出すこの作品。現在、続編も出ていますので、手堅い人気があるのでしょう。『みかん絵日記』みたいに、猫が主要な役割を果たす漫画ではないです。紫苑というやさぐれた男が、巨大猫を飼っている老人と暮らすエピソードがかなり泣けました。

三毛猫ホームズの推理 (角川文庫)
三毛猫ホームズの推理 (角川文庫)赤川 次郎 KADOKAWA 1984-04売り上げランキング : 139908Amazonで詳しく見る by G-Tools


『三毛猫ホームズシリーズ』(赤川次郎著)
かつては印税長者に名を連ねていた赤川センセイのミステリー。へっぽこ刑事の兄貴としっかり者の妹というコンビが事件解決。その手立てに飼いネコのホームズが暗躍するという筋立てです。ドラマ化もされた有名作ですが、原作小説ですと、妹が不倫していたり、けっこうダーク面があって、子どもの頃読んだときはショックでした。人が死ぬミステリーですから、当たり前なんですけどね…。ちなみに、この猫はしゃべりません。最近、読み返したことがないので内容ほとんど忘れましたが。

受験の国のアリス (講談社X文庫―ティーンズハート)
受験の国のアリス (講談社X文庫―ティーンズハート)中原 涼 松本 洋子 講談社 1987-06売り上げランキング : 591726Amazonで詳しく見る by G-Tools


『アリスシリーズ』(中原涼著)
講談社X文庫のこのライトノベル、ご存知の方いらっしゃったら、ぜひともお友達になりましょう。ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を下敷きにしたファンタジーは多いですが、その代表格。受験生の少年が、異次元にさらわれた美少女アリスを救うための冒険譚。1987年の『受験の国のアリス』からはじまり、『〇〇の国のアリス』というタイトルがついた一連作。著者が国立大学理学部天文学科という経歴だったせいか、数学を説く問題が多くて知的刺激が多かった気が。この作家さん、2013年にお亡くなりになっていたんですね、残念。なめくじ猫というナビゲーターが毎度出てきますが、お調子者でいい性格してやがるんですわ。挿絵描いていた松本洋子さんは、『なかよし』誌面で「呪いの黒十字」とかいうホラー漫画連載してて、今でもトラウマですわ(怖)。

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)
100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)佐野 洋子 講談社 1977-10-19売り上げランキング : 561Amazonで詳しく見る by G-Tools


『100万回生きたねこ』(佐野洋子著・講談社創作絵本)
子どもの頃、絵本をほとんど読まなかった私は、いまでも絵柄が気に入らないものが多いので、絵本が好きではありません。でも絵本は絵柄の好き嫌いではないと気づかされたのは、図書館で働いていた時に出会ったエリック・カールの絵本からでした。この本は初版が1977年と古いものの、数年前にブームが起きた話題作です。猫の話ですが、ひとを愛するとはどういうことか、を考えさせてくれます。

超スピード合格!日商簿記2級テキスト&問題集
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『超スピード合格!日商簿記2級テキスト&問題集 』(南伸一著・成美堂出版)
一瞬、このセレクトに目を疑った方も多いのでは。まぎれもなく、まじめな資格本です。物語ではありません。でも、猫のキャラクターがでてきます。ちょっとどんくさい熊も出てきます。可愛いので、勉強の合間に息抜きができます。初学者・独学者の皆さんには、ぜひともオススメ。数字に弱い文系脳の私でも、3級からスタートして日商簿記2級を三か月半ぐらいで一発合格できましたが、それもこの成美堂出版のテキストと過去問のおかげです。ただし、言い回しが読みづらい部分もあるので要注意。それにしても、最近の資格本は脱力するぐらいのゆるキャラ満載ですね。

京四郎と永遠の空―前奏曲 (富士見ファンタジア文庫)
京四郎と永遠の空―前奏曲 (富士見ファンタジア文庫)植竹 須美男 介錯 富士見書房 2007-02売り上げランキング : 790427Amazonで詳しく見る by G-Tools


『京四郎と永遠の空──前奏曲』(原作イラスト:介錯、文:植竹須美男、富士見ファンタジア文庫)
自信を持って言えます。猫が出てくる小説と聞いて、これを挙げるのは世界広しと言えども私しかあるまい(笑)。このブログでとりあげているマニアックなアニメ「神無月の巫女」のスターシステム続編とされている、アニメ作品のノベライズ版。世界を破壊する力を持つ絶対天使たちと使役者である少年少女たちを描いた前日譚のオムニバス。猫型の天使である、仕組まれた遊星のたるろってが主人公の章が必見です。余談ですが、この原作漫画の過去作は猫が出てくる漫画が多く、このアニメ監督も愛猫家のようですね。

【関連記事】
小説『京四郎と永遠の空─前奏曲─』
天使は人に魅せられ、人は天使に惹かれていく。学園都市アカデミアでの抗争のきっかけと出逢いを描いた珠玉の番外編。


猫が出てくる小説はネット検索したら、かなりヒットしますよね。
やはり愛くるしいからか、題材にしやすいのか。ファンタジー系が多いのは、私の読書歴があまり小説を読まないからかも。漫画ならば大島弓子の『絹の国星』が鉄板ですが、残念ながら読んだことがありません。

自分を鳥に喩えた私ですが、鳥を飼いたいほど好きではありません。
だって、あれは恐竜の子孫だと思うわけですよ。足の爪やくちばしなんか見ますと、あきらかに獰猛ですし。

ちなみに私は他人からは、主人の帰りを待っているポチタイプだと揶揄されます。
たしかに、権力者の参謀ならぬ秘書タイプです。実態は、咬みつきやすい一匹狼タイプなんですが。

この動物本シリーズはおもしろいので、いずれまた企画するかもしれないですね。

読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。

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