言わずと知れた仕事である。
職業でもある。
果たして僕の場合、演出家はbusinessなのだろうか。
これは残念ながら、違うと思う。
高倉健さんが「鉄道員」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した時に、述べていたコメントが、今でも印象に残っている。
「生きるために、俳優になって・・・」と始められたのだ。
そう、高倉さんの場合は、本当に生活のために俳優になり、それが天職だったのだろう。
翻って私は、演出で生計を立ててはいない。
なぎさ高校には、もちろん演出家という肩書きで行っているつもりだが、講師という肩書きはある。そこでの仕事は演出家のそれではなく、CDFのナビゲーターと同じである。やる課題を指し示すだけの役割、演劇に親しむ触媒として居るのだ。
ただ、演劇で食べているという自覚はある。
誘われて、京都芸術センターの試験を受け、演出家の仕事を作ることを副次的な目的としながら、プロデュースと呼ばれる制作的な仕事で生計をまかなってきた。
たしかに、「生きるために」演劇を仕事とはしてきた。
しかし究極的に仕事にしたいものは演出なのは変わらない。
変わらない以上、逆に言えば、この現在のプロデュース業は、生計を立てられなくなれば、速やかに他の仕事に取って代わられなければならない。
オファーがこの先無ければ、演劇を仕事にして生きていく、ということは許されないのだ、と覚悟して生きてきた。
プロデュース業と演出家業は、他の人から見れば同じなのかもしれないが、
実は私にとっては大きな違いで、お金がもらえなくてもやることと、もらえなくなれば、好きでも未練が多少なりともあっても、切捨てなければならないものという違いがある。
つまり、プロデュースはビジネス=業務=生計を立てる手段だ。
ひるがえって、私にとって演出とはなんなのだろう。
演劇の世界には俳優として入ったが、紛れも無く今一番したいのは演出だ。
答えはいまだ出ないので、考え続けている。
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