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B:be

今日はBということでBEです。
Boys, be ambitious! 「少年よ、大志を抱け!もしくは(野望を持てby松浦訳)」とか
Be gentleman.「(常に)紳士たれ!もしくは(優しくなければ男でないby松浦誤訳)」
といったクラーク先生の名言で有名です。

いわゆるbe動詞であり、存在や状態を表すなどという言い方をされたりします。

僕はよく、「俳優の一番の仕事は、そこに居ることだ」という言い方をします。
舞台上にあるその空間、いや時空間にいて、その物語の流れの中で、その場所で起こることにその役として自然に反応していく。
これが理想だな、と。

もう少し例文を。
There is only Mike in the house.「その家にはマイクしかいなかった。」
She is the best partner to Tom. 「彼女はトムにとって最良の伴侶だ。」

はい、この is もまたbe動詞です。

I am , so to speak, Superman. 「私はいわゆるスーパーマンだ。」こんなこと言うやついないですが・・・。
You are fool. 「あなたたちはばかだ」
などのamとかareもそうです。

英語の授業めいてきましたが、昔取った杵柄というやつです。
俳優というと、Actorですから、どうしてもAct(動く・演技する)という動詞が浮かびますが、本質はこっちのbeだと思うのです。

よくbe動詞は文型の話の中で=記号に置き換えられます。
SVCという第二文型の場合です。
S(主語)V(be動詞)C(形容詞・名詞)
She is beautiful. 「彼女は美しい。」(彼女=美しい)
I am Tom. 「私はトムだ。」(私=トム)
ただ、この教え方は第三文型SVOと見分ける為のもので、
本質的には「彼女は美しい状態にあるように見える」「私はトムという人間としてここにいる」という事実を表しており、
俳優が美人の役を演じたり、トムという役を演じたりするときには、このことを踏まえたいのです。

もっと具体的に説明します。
例えばシェイクスピアのオセローに出てくるキャシオーという役柄をするとします。
まず、キプロスに居ないといけません。そして軍隊の中の副官というポジションとしていないといけません。
そして人種の違うムーア人が上官にいて、その上官に気に入られている。
さらにはキプロスを巡る歴史的な部分も頭にはあって・・・、というような知識があった上で、
舞台上で起こる出来事に対しては、自己完結や予定調和でなくその場で即対応していきたいのです。
ロダリーゴーがどんな挑発の仕方をしてくるのか、そいつに対して自分がそのときどう思うのか、というよりは、
酒を飲みすぎている状態(I am drunken.*getを使う場合の方が多いんですがわざとです)に自分を置く方がよい、ということです。

ただこれは、アクターズスタジオ出身の役者が述べたという「ピザが嫌いな役をやるなら前日に吐くほど食べればよい」という考え方とは違います。
そこに居るためのアプローチとしてそういうやり方もありですが、あくまで私生活を壊さずにやれる方法はあると思います。

その状態になることが目標なのではなくて、その状態で起こる出来事に対応できることが重要なのです。
舞台上の時空間できちんと生きること、きちんと生活することが重要です。
と、いうことは、毎日の生活をきちんと俳優として感性豊かに暮らせるか、
演出家としてちっちゃなことに感動したり、丁寧に自分の感覚を探れるか、と言うようなことが重要かと。
アプローチの話は長くなりますし、まだ僕自身まとまっていないので、別の回にゆずります。

少しだけ“起こる出来事に対応できる”という話を掘り下げます。
“受け”の演技が出来る役者が少ないという話を聞くことがあります。

積極的にその役になりきり、演じていくのは実は簡単で、実際にはその役でありながら、
舞台上で起こる出来事にきちんと翻弄されていくのが難しかったりします。
その役ならどう動くかは事前にはわからないことですから。

俳優としてのアプローチについては上に書いたので、演出家としてはどういう対応策をとるのか、というと、
基本的には師匠フィリップから学んだ具体的に物理的に俳優への負荷を変えていく、ということをやります。
負荷という言い方は、なぜか僕の周りの演出家がよく使っていたのでここでも使っています。

具体的にいうと、俳優にプレッシャーのかかる緊張感が欲しいというとき(He is nervous.)、
つま先しか載せられないぐらいの紙を俳優の下に置き、そこから出ないで芝居してくれ、ということをします。
この指示のことを負荷と言っています。他の俳優を使う場合もありますし、大きな音を鳴らすことの場合もあります。
大事なのは物理的に変える事だと思っています。
そこに役者が「居(be)て」さえしてくれたら、きっとその芝居は成功するとおもうのです。
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