Re-Set by yoshioka ko

■サケと佐久鯉

 新聞の地方版を眺めていたら、へぇ、こんなところでも、とちょっと驚いた。そして佐久鯉を思った。その前にまず記事から。

《以下引用》
 「(千葉)県東部各地の川で、サケの遡上が最盛期を迎えている。横芝町と光町の境を流れる栗山川では、サケの放流を手がけている栗山川漁協組合員がこのほど、魚道に入り込んだサケを大きな網を使って捕獲した。11月下旬から12月上旬までがピークといい、年末までに前年並みの約800匹が川に揚がると見られる」(12月10日『朝日新聞』千葉県版)《引用ここまで》

 遡上した雌のサケが産む卵は人工授精されたあと、来春には岩手県から仕入れたものと合わせて、およそ25万匹の稚魚を放流するのだ、という。そして4~5年後には、再びサケは母川である栗山川に戻ってくる。
 
 ちょっと驚いたというのは、サケの遡上現象が見られるのはせいぜい東北ぐらいまでだろう、と思っていたからだ。千葉県でも見られるということになれば、いつか千葉県産サケが期待できることになる。年間、3.5キロほどの重さのあるサケ一尾を消費するほどサケ好きの日本人からすれば、なんとも嬉しいニュースではないか。

 サケの遡上が大きな話題となったニュースが今年はもうひとつある。それは7月に〈サケのふるさと〉として長年親しまれてきた北海道・知床が、世界自然遺産に認められたときだ。認定を行うIUCN(国際自然保護連合)で最後まで議論となったのは、自然遺産地として認定される地域内に設置されたダムの存在だった。知床の現地調査をしたIUCNは、日本政府に対してダム撤去を勧告する一方、「サケ科魚類へのダムによる影響とその対策に関する戦略を明らかにした、サケ科魚類管理計画を策定すべき」との異例の注文をつけた。

 知床の河川に設置されたダムは堰のようなものを含めて50を数える。それにこれら堰やダムの所有権や管理は町、道、国、それに民間までもが入り乱れ、縦割り行政という日本独特の弊害も加わる。

 サケの孵化場を抱えてきた羅臼町では、認定を前に町が管理する河川中流の堰3箇所を改修し注文に応えた。だがこれだけでは焼け石に水。問題は上流や下流に国や道が設置した大量のダムだ。そこで羅臼町や斜里町では、世界自然遺産として認められた以上、この知床をサケが遡上する川に戻そうと、林野庁や道に対してダム撤去要請に動き始めたのだ。

 サケにとっては、ダムひとつひとつの撤去という障壁を乗り越えて初めて安全な産卵場所を確保できる。世界自然遺産に認定されたことで、ようやく知床でも〈サーモン・ネーション〉復活への一歩が始まった。

 さて、佐久鯉のことである。養殖モノではないオリジナル佐久鯉が途絶えようとする中で、桜井では鯉復活が軌道に乗り始めた、という。もともと桜井は中込や高柳と並んで鯉で名を馳せてきた。食生活の変化やときには鯉ヘルペスウィルスの発生で、鯉を飼育する農家も少なくなってきてはいたが、去年あたりから復活の動きが始まった。

 そもそもサケや鯉は、民族や地域の伝統や文化に大いに貢献をしてきた魚でもある。そのサケがいまでは絶滅危機種に指定され、そして鯉もまた、本来の佐久の気候や水の冷たさとはほど遠い養殖鯉に取って代わって久しい。
 思い起こしてみれば、かつてわが家でも生け簀があった。そこにはいつも鯉が泳ぎ回っていたことを思い出す。山村地帯のタンパク源だったのだろうが、風情もあった。いまも年末になれば、農協の軒先では正月用の特別料理として供される元気のいい鯉が、まな板の上ではね回っている。

 桜井の試みを『信毎』はこんな記事にしている。

《以下引用》
 「佐久鯉(ごい)発祥の地とされる佐久市桜井に、地元住民らが中心となって運営する鯉料理店「丹右衛門(たんにもん)」が十三日夜、プレオープンし、うま煮やあらいなど伝統の味に磨きをかけた郷土料理が招待客に振る舞われた。店を運営する住民出資の有限会社「佐久鯉の郷」代表取締役の臼田元則さん(70)は「商売は未経験だが、これからもご支援をお願いします」とあいさつし、開店に至る経過などを説明した」(9月15日『信濃毎日新聞』)《引用ここまで》

 鯉の復活は、佐久に新しい文化を生み出すきっかけになるかも知れない。この場合、文化とは鯉の生態系のみならず、鯉を中心とした食文化、鯉を中心とした川のあり方、地域起こしなど広範囲にわたる。
 その意味でも桜井の試みは是非成功して欲しいし、私も応援したい。

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