Re-Set by yoshioka ko

■「良心的兵役拒否」

 12月29日朝、出発間際の成田空港ラウンジで新聞を見ていたら、気になる記事が目にとまった。

《以下引用》
 「韓国の国家人権委員会(大統領の直属機関)が26日、宗教上の理由などから兵役を拒否する「良心的兵役拒否」の権利を認めるべきだと勧告。保守派の野党・ハンナラ党や退役軍人から激しい反発の声が上がるなど波紋が広がっている」(12月29日『読売新聞』)《引用ここまで》

 韓国は徴兵制の国である。満19歳以上で健康な男は2年ほどの兵役が義務づけられている。南北分断国家の宿命、とずっと考えられてきたが、去年の8月に「良心的兵役拒否」を争った訴訟で、憲法裁判所はこれを退ける判断を下した。
 人権委員会の勧告はこの憲法裁判所の判断を真っ向から否定するものだ。

 南北分断という冷戦の遺物が厳然として生きている韓国で、宗教上のこととはいえ、「良心的兵役拒否」を認めるということは、今一歩、北朝鮮との融和策(太陽政策)を進めるということだ。拉致問題など北朝鮮アレルギーを持ち続ける日本とすれば、韓国という国はだんだんわが陣営から離れつつある、の感を強めざるを得ないが、韓国は韓国で生き延びる方策というものを、北とのデタント(緊張緩和)という軸を据えて考えている証でもある。

 もう一歩踏み込んでいえば、徴兵制度を取り入れている国ならではの判断でもある。満19歳以上になれば誰もが兵役に就かなければならない。国家の安全という大義がそうさせるとはいえ、個人の思想・信条、それに国家の政策そのものが必ずしも絶対正しい、という保証もないなかでは、この人権委員会の判断は正しい。

 アメリカは、徴兵制から志願制に変わった。ベトナム戦争当時には「良心的兵役拒否」も可能だったが、志願制のいまは、「そんなこというなら軍隊にくるべきではなかった」のひと言でかたづけられかねない。
 しかし、耳を澄ませて聞き入れば、国民のひとりとして国家の安全に寄与することは当然だが、その国家の安全保障政策が間違っている、となれば拒否するのもまた当然である、という理屈も成り立つ。
 
 私はいま、そういう前線で戦っている人々に会うためにアメリカに来ている。

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