《以下引用》
「全国で初めて「市町村合併をしない宣言」をした福島県矢祭町は19日までに、「法令をもって命令されない限り合併をせず、自主独立の道を歩む」と明記した自治基本条例案をまとめた。20日からの町議会に提案し、可決される見通し。矢祭町幹部は「自立のために町が進めていることを後戻りさせないための条例化で、全国でも例のない条例では」としている」(12月20日『共同通信』)《引用ここまで》
福島県の矢祭町は、これまで「市町村合併をしない宣言」で知られてきた。その矢祭町がまとめた条例案は、まず前文で、「法令をもって命令されない限り合併をせず、自主独立の道を歩む」と規定し、この条例を町の最高法規として位置づける。
条例案の第1条では、人口の減少に歯止めをかける、として少子化対策を最重要課題として掲げ、そのために、これまで第3子以上が生まれた家庭に100万円を支給していたものを、第4子には150万円、第5子以上には200万円を支給すると改正して提案する。さらに第6条では、人件費削減の観点から、団塊の世代が退職したあとにも新規職員の採用・補充はしないことを謳う。そして目標として、現在約7000人の人口を2010年度までに7500人にするというのだ。
少子化問題は日本のどこの自治体でも大きな課題だ。言葉だけが踊って対策や政策がついていかない自治体もあれば、対処療法的な、つまり付け焼き刃的な思いつきでお茶を濁す自治体もある。それに比べれば、矢祭町は腰が据わっている。
「小さくても輝く町になるには人口が増えることがカギ」とは町長の言葉ではあるが、しかし条例案からは「悲愴さ」さえ感じ取れる。
いったい財源はどこから? 新規採用を止めて業務に支障はないのか? どうして人口を増やす?
「平成の大合併」が行われた背景には、ますます深まる国の財政不足があった。地方は地方で食っていって欲しい、という大きな流れの中で、三位一体だ、合併特例債だと(いずれは負債として残るにもかかわらず)アメも準備された。そして財源不足を抱えた多くの町村は、不安心理にかられどっと合併に走った、というのが実態に近い。
このような中で、矢祭町の試みは、合併の有り様をもふっと考えさせられる。財源は新規採用を控えた分で補う。行政コストを下げるためには、退職した職員OBが運営する「第2役場」に業務委託する・・・。
だが、5年後の500人増を始め、将来的にも人口増を図っていくには、お祝い金の拡充だけでは不十分に違いない。子供の医療や教育をどうするか、あるいは共稼ぎ家庭の子供のケアや子育て環境、それに町には働く場所や集客可能な魅力がなければならないだろう。まさにこれは矢祭町がどんな町を造ろうとしているのかの壮大な絵作りである。町の幹部や議員だけではなく、町民ひとりひとりの理解と智恵と協力が不可欠になる。
合併しない、という発想は想定していない、とは合併を進める総務省の立場だが、大きくなることも小さいままでいることも、要は行政や議会ばかりかその地に暮らす人々が、自分たちのまちをどうしたいのか、どう生かしていきたいのか、に行き着く。
このような議論なしに、合併するもしないもない。その意味では矢祭町は一歩先んじた、と思う。
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